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評価されたのは、世界初の研究成果への“過程”。 開発者に求められるのは、考え抜き、行動すること。

 

田中 太知さん

大学院物質理学研究科博士前期課程 2021年3月修了。金属や半導体など物質の性質について研究を行った。水戸研究室に所属し、世界初の観測に成功。就職活動はメーカーの開発職に絞り、2021年度より大手デバイスメーカーに開発設計職として勤務。趣味はサッカーで、社会人サッカーチームに所属。

 

研究への向き合い方を変え、世界初の観測に成功

 

中高生の頃から数学や物理が好きで、数式を扱う学問に興味があったので、理学部に進学しました。数式の明確な答えがあるところや、誰もが納得する答えがあるところが好きなんです。物事の真理や原因を探っていく研究をもっと突き詰めようと思い、大学院に進学しました。

 

大学院では、金属や半導体など物質の性質、すなわち「物性」について研究しました。私の研究内容は、温度や磁場が低い中で特異な物性を示す2つの物質をさまざまな環境下で観測すること。この2つの物質は長年研究されてきたにもかかわらず未だ解明されていない点が多いため、世界初の観測ができる可能性がありました。「成功したら大きなやりがいが感じられそうだ!」と思って研究を進めました。

 

 

研究では「わからないことに対してどう本質を探っていくか」「課題にどうアプローチしてどう解決していくか」という力が問われ、データの解釈方法など自分の力量の及ばないところは先生や先輩に相談しながら研究を進めていく日々でした。考え抜いたアプローチで観測しても、なかなか上手くいかないこともありましたが、博士前期課程1年生の時についに世界で初めて、ゼロ磁場下である信号の観測に成功しました。

 

その道のりを振り返ると、研究生活の中で自分自身が大きく変われたことが成功の要因です。どちらかというと研究に対して受け身だった姿勢が、「世界初の観測を達成する」という目標に突き動かされるように、自発的に向き合い、周りの協力を取り付けながら課題を解決する、主体的な姿勢に変わっていったと実感しています。

「何がわかったか」、よりも「どう研究したか」が大事

 

博士前期課程1年生の6月頃から、メーカーを中心に5社ほどインターンに行きました。社員の方々の話を聞いていると、自分の作った製品が社会で使われていることに大きなやりがいを感じている印象を受けたんです。その影響で「自分も商品の設計や開発に携わりたい」と思うようになり、メーカーに絞って就活をしました。

 

就活が本格的に始まったのは博士前期課程1年生の終わり頃。説明会や工場見学は実地での開催でしたが、3月から始まった面接は全てオンラインでした。実際に面接が始まる頃には「十分な準備ができているのか?」と不安になることもありましたが、研究での経験を活かし、目の前のことを整理してやるべきことを一つずつ処理していくようにしました。普段からよくやる方法で、紙に書き出して自分の不安を明確化するんです。そうしたら今やるべきことや解決策が見え、具体的に不安を解消してから面接に臨めました。

 

 

面接では自分の研究について発表する必要があったので、大学の就職相談室の方に練習相手になっていただきました。「『研究内容を会社でどう活かせるのか?』という質問に対する用意をしておいた方がよい」とアドバイスを受けたのですが、直結する研究テーマではないので、苦労してなんとか答えを捻り出しました(笑)実際に面接で聞かれたので、対策しておいて良かったです。

 

「世界初」という研究成果はもちろんアピール材料になりましたが、面接で評価されたのはその過程でした。事業に直結する研究テーマでなくても、求める結果に辿り着くために課題を洗い出し、一つひとつの解決策を練ってアプローチするプロセスはどの分野の開発職にも生かせる経験です。そこを評価してもらえて内定をいただけたと思っています。目の前の研究への向き合い方が、開発者になるための最短距離だと言えます。

 

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