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「気候変動と国連 -SDGsがもたらす未来-」兵庫県立大学大学院環境人間学研究科開設20周年記念式典を開催しました

12月17日(土)、アクリエひめじで本学の環境人間学研究科の開設20周年を記念して、「兵庫県立大学大学院環境人間学研究科開設20周年記念式典 気候変動と国連 -SDGsがもたらす未来-」を開催しました。

 

環境人間学部は、兵庫県立姫路短期大学の四年制大学への改組及びそれに伴う兵庫県立姫路工業大学との統合により、姫路工業大学環境人間学部として、1998年4月に開設されました。日本では、初めて学部名に「環境」と「人間」を冠した学部として設置され、文系と理系の枠を取り払い、新たなる学問分野に挑戦する学部として発足しました。環境人間学研究科は、2002年に博士前期課程(修士)、2004年に博士後期課程(博士)がスタートし、2022年の昨年、開設20周年を迎えました。

また、本学は、2022年1月から世界の大学と国際連合をつなぐ「国連アカデミック・インパクト」に参画しています。環境人間学部及び環境人間学研究科の教育理念等を達成するために、国連及び国内外の大学と協力し、国連アカデミック・インパクトにおける様々なプログラムや研究活動を推進していくこととしています。2022年3月には「兵庫県立大学SDGs宣言」を発し、全学的に人間の尊厳と地球環境の保全等の実現に向けて取り組んでいます。本イベントは、地球規模の課題の解決に向けた知識等を本学の教職員をはじめ、将来を担う子どもたちや地域の方々と共有する機会として開催し、約430名の方が参加されました。

開催にあたっては、兵庫県、姫路市はもとより、文部科学省、環境省近畿地方環境事務所、日本経済新聞社大阪本社、公益財団法人地球環境戦略研究機関など、公民、産官関係の合計10団体から後援をいただきました。

 

第1部

はじめに、環境人間学部長兼環境人間学研究科長の内田勇人教授から開会の挨拶がありました。

 

続いて、太田勲学長、五百旗頭真理事長による祝辞がありました。祝辞の中で太田学長は、「私たち人間は、人間・人類に対する愛情を持ち、教育というものを大事にしていかないといけない。また、そういう気持ちをしっかり持つ学生を育てていくことが非常に重要だろうと思う」と話し、「『支配は分断する』と言われるように、世界はなかなか1つにならない。そのキーは、民族や宗教、独裁者であったりといろいろあるが、それらを打ち破っていくのが、やはり教育である。人間愛あふれた気持ちを全世界の人類が持つ。そういうふうになっていけば、『one world』『one earth』世界は1つになっていくのだろうと思う。環境人間学部及び環境人間学研究科は、今後もこれまでの路線を引き継ぎ、人間の在り方、人間学を基軸として、大きなグローバルな視点を持ち、これからの10年、20年、この世界が少しでも我々が理想とする方向に向くように、教育・研究を通して努力をしていただきたい」と述べました。

 

また、五百旗頭理事長は、20世紀に起こった2つの大戦にわたり、科学技術の発展によって破壊力が増大したことを祝辞の中で取り上げ、「自らの科学技術によって獲得した核兵器、自分が築いた凄すぎるもの、自分が持て余すほどの能力を間違って使うことによって破滅する危険がある」と話し、「科学技術や産業革命以来の地球上の人類の活動能力が、地球環境に大きな変化をもたらしていることになかなか気づかない。グリーンランドやアルプスの氷河の崩落などの大きな環境変化が、地球に小惑星が衝突したあと、霧に囲まれ、太陽が遮断されて恐竜が絶滅に至ったというふうなことを起こしかねない。『もう待ったなしだ』というところにきている。今日は、国際連合広報センターの根本かおる所長から国連での活動や国際経験を基に、地球環境を支える必要性、SDGsについてお話いただける。ぜひ最後までお聞きいただいて、これから生きていく上での糧にし、環境人間学部及び研究科の発展の再スタートとしていただきたい」と述べました。

 

その後、来賓の方々から祝辞をいただきました。

小橋浩一兵庫県知事代理による齋藤元彦兵庫県知事からの来賓祝辞の紹介

 

清元秀泰姫路市長による来賓祝辞

 

来賓の方々による祝辞のあと、環境人間学部長兼環境人間学研究科長の内田勇人教授から、本研究科の20年の歩みや姫路環境人間キャンパスの歴史について紹介がありました。紹介の中で内田教授は、「近年における気候変動への対応やSDGsの達成、脱炭素社会の実現等を目指し、教育・研究等をより一層推進させていく。旧制姫路高等学校、旧姫路工業大学短期大学部の歴史と伝統を礎として、人間科学・文化、公共政策、建築・都市、自然・環境、食環境栄養、共生博物、先端医療工学の7つの視点を大事にして、持続可能な社会の構築を目指し、環境と人間をつなぐ教育と研究を実践していきたい」と話しました。

 

第2部

記念講演では、国際連合広報センター所長の根本かおる氏を講師にお招きし、「気候変動と国連 -SDGsがもたらす未来-」と題して、気候変動がもたらす影響についてご講演いただきました。根本氏はご講演の中で、現在は、学習指導要領に組み込まれるようにまでなったSDGsも、最初は誰にも見向きもされない中で、世界に先駆けて日本政府の対応が速かったことや、新型コロナウイルス感染症や気候変動、ウクライナ侵攻をはじめとした紛争の増大などによって歴史の転換点を迎えている中で、連帯して取組を進めていくことが問題解決のカギとなることなどを話されました。根本氏は、「SDGsも気候変動対策も、ただ単にブランディングのツールであるSDGsの輪っかのマークや個別ゴールのアイコンを使えば良いというものではなく、社会の枠組み・仕組みを大きく変えて、『新しい当たり前』を築いていくためのものである。ぜひ、ここにお集まりのみなさんには、『私たちがしていることは、ゴール何番、あるいはターゲット何番にあたります』というような説明の仕方、説明の枠組みを超えて、実態を大きく変えて『新しい当たり前』をつくる運動、ムーブメントにまで高めていっていただきたい」と、会場の参加者に向けて呼びかけました。講演後には、学生からの質問にもお答えいただきました。

 

記念講演後には、環境人間学部の高橋綾子教授から国連アカデミック・インパクト(UNAI)に関する紹介があり、国連アカデミック・インパクトの取組内容や、アントニオ・グテーレス国連事務総長の動画によるメッセージなどを紹介しました。高橋教授は学生に向けて、「アカデミック・インパクトのメンバーとして、他のメンバーから学びながら本学の教育・研究活動を基に、グローバルそしてローカルの問題に対して、私たちの新しいアクションを一緒に発信して進めていきませんか。SDGs推進室をみなさんのプラットホームとして考えてもらい、一緒に行動してもらえたら嬉しい」と呼びかけました。

 

本イベントでは、11月10日(木)に環境人間学部・研究科で行われた環境人間学フォーラムにおいて、今年新たに設けられたSDGs賞及びSDGs特別賞に選出された学生・生徒への表彰が行われました。本フォーラムは、学部・研究科内で重要なイベントの1つに位置付けられているプレゼンイベントで、学生や教員が日頃の研究や実践活動を発表する機会として開催されており、今年で19回目を数えます。SDGs賞には「グリーンインフラ、雨庭の現状整理と京都市における雨庭整備位置の妥当性の検証」をテーマに発表した環境人間学部3年生の前田菜緒さんと、「セクシャリティを語ることはタブーなのか?~ジェンダーの多様性をキャンパスに広める『SOGIウィーク』の実践~」をテーマに発表した学生団体「SOGIいろ」が選ばれました。また、今年度は、本学部・研究科と接点のある高校生も発表を行い、奥勇一郎准教授が支援を行っている兵庫県立姫路西高等学校のグループ「シミュヒート」が「ため池がヒートアイランド現象に及ぼす効果」をテーマに発表し、SDGs特別賞に選ばれました。

前田菜緒さんの代理出席で指導教員の太田准教授が表彰を受けました

 

学生団体「SOGIいろ」のみなさん

 

兵庫県立姫路西高等学校のみなさん

 

最後に、高坂誠副学長から閉会の挨拶があり、「SDGsの考え方を基に、『1.5℃の約束』を果たし、守るべく、学生と教職員が一緒になって、しっかりとした歩みを進めていければと思っている。我々は、未来に対する悲観主義とは無縁である。皆で手を携えて一歩一歩前に進んでいきたい。これからも厳しい情勢が続くが、一緒に頑張っていきたいと思う」と述べ、本イベントを結びました。

 

(参考:「1.5℃の約束-いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」)

2021年11月に英国で開催された気候変動枠組条約第26回締結国会議で、気候変動による多くの影響を回避するために世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えることが、国連気候変動枠組条約締結国の事実上の目標とする決意が示された。「1.5℃目標」の理解促進と個人や組織に行動変容を促すことを目的に、SDGsに熱心に取り組む日本のメディアと国連広報センターが一緒になって「1.5℃目標」の意味や目標達成のために何をしなければならないのかを伝えるキャンペーン「1.5℃の約束-いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」を行っている。

 

 

 

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