神戸商科キャンパスで、6月21日(金)に神戸市の職員の方による講義が、7月19日(金)に公益財団法人神戸市産業振興財団の職員の方による講義が行われました。
データサイエンスの基礎知識の習得を目指す
神戸市及び公益財団法人神戸市産業振興財団の職員の方による講義は、国際商経学部経済学コース及び経営学コースの1年生を対象に開講している全学共通科目「データサイエンス入門」のDクラスとFクラスの授業時間を利用して行われたもので、当日は両日とも合わせて約100名の学生が受講しました。両クラスは中小企業診断士で国際商経学部非常勤講師の稲垣賢一講師が担当しており、昨年度から神戸市及び公益財団法人神戸市産業振興財団の職員の方々を講師としてお招きし、ご講義いただいています。
データサイエンス入門は、今後の専門学習において必要とされるデータサイエンスの基礎知識を習得することを目的に、パソコン実習によってデータ解析を体験し理解することで、最終的に分析手法等を活用できるようになることを目標に授業を行っています。その中で両クラスの学生は、神戸市及び公益財団法人神戸市産業振興財団が直面している課題解決に向けて、両団体からご提供いただいた実データを基に、現状把握やSWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析、仮説の立案を行い、その上で各団体の職員の方々による講義に臨み、その後、両団体への提案資料の作成に取り組みました。
未来の神戸について考える-神戸市
6月21日(金)は、神戸市の将来像を描き、まちづくり全体の進む方向性を示す都市計画「神戸市総合基本計画」の策定を行う神戸市企画調整局政策課の方々を講師にお招きして、神戸市の現状等についてお話しいただきました。
はじめに神戸市企画調整局政策課の大濱北斗氏から、神戸市の組織紹介と神戸市次期総合基本計画策定プロジェクトについて説明いただきました。
神戸市総合基本計画(マスタープラン)は、「こういうまちで在りたい」といった基本理念やまちの魅力を示す「基本構想」と、基本構想で掲げる「まちの姿」をどのようにして実現していくのかという中長期の将来ビジョンを示した「基本計画」、さらに基本計画を5年毎に分けて、具体的に何をしていくのかを示した「実施計画」の3つの計画から成り立っています。これらがいずれも2025年に計画終期を迎えることから、神戸市では2026年に向けて新たな総合基本計画を策定するために「神戸市次期総合基本計画策定プロジェクト」に取り組まれています。
本プロジェクトは昨年度からスタートしたといい、昨年度は約30年ぶりとなる基本構想案の策定に向けて、アンケート調査を2回実施したり、市内10カ所と東京、オンラインでワークショップを実施するなどして神戸市民等の意見を収集されたといいます。それらの意見を集約して作成された神戸市基本構想案については、本講義が実施された6月21日から1か月間、パブリックコメントの募集が行われました。そして今年度は、「基本計画・2035年に向けた将来ビジョン」の策定に向けて取組を進められており、大濱氏から10年後に向かって神戸市がどんなことをしているのかという具体的な戦略について紹介いただきました。基本計画の策定について大濱氏は、「神戸がさらなる発展をしていくために新しい計画をみなさんと一緒につくっていければと思っている。神戸の未来を担っていただくみなさんから様々な意見をいただきながら『ワクワクする神戸』をつくっていきたいと思っている」と話されました。
続いて、神戸市企画調整局政策課の寺尾友樹氏からワークショップに関する説明がありました。説明後に行われたワークショップでは「住む人、来る人、皆がワクワクする未来の神戸とは?」をテーマに進められ、学生たちは16のグループに分かれてグループワークに取り組みました。グループワークを行うにあたって寺尾氏からは「『ありたい姿』『ワクワクする神戸』ということで、みなさんには『具体的には』というところを考えていただく。ここではありったけを出していただきたい」と呼びかけがありました。
学生たちは「『ワクワクする神戸』にするために具体的にどうするか」について、グループのメンバーと話し合いながら自由な発想で意見を出し合っていました。また、講師の方々と話をする学生の姿も見られました。
グループワーク後に各グループの代表者から発表がありました。学生たちからは観光や産業、子育て支援等に関する様々な意見が出されました。
学生の発表後、寺尾氏は「今日は『思考の視点を変えてみる』というワークショップに取り組んでいただいた。『〇〇ができていない』など、『原因を取り除くために必要なことは何か』といった具合に『課題から入る』のが『いつもの思考』で、今回取り組んでいただいたのは『ありたい姿』から入る『ポジティブ思考』である。最初に『もっとこうなっていたら良い』という『目標とする未来』を思い描いて、それを実現するための道筋を逆算して行動していくというのが『ポジティブ思考』になる。『いつもの思考』も『ポジティブ思考』もどちらも大事であるが、今回のワークショップを通してみなさんに知っていただけたかなと思う」と説明され、「今年度の次期基本計画では、多くの学生のみなさんとも議論していきたいと思っている。今後の神戸の将来を担うみなさんから意見を聞きながら、計画策定に向けていろいろ取り組んでいくので、今後もよろしくお願いしたい」と話されました。
最後に、神戸市企画調整局政策課の森田暁氏は「神戸には洋風の街並みがあるが、それは海外にもあり、海外から来た人からしたら目新しさに欠けるとみられがちであるが、例えば、アメリカのニューヨークタイムスが2023年と2024年に発表した『行くべき52か所』の中で、それぞれ岩手県盛岡市が2位、山口県山口市が3位に選ばれた。神戸にも自然豊かな里山があり、先ほどの発表で『田舎』というキーワードを出していたグループもあったが、これからは都市部だけでなく田舎のまちも、あるいは今まで思ってもみなかったところが評価される世界になっていくのではないかと思う。みなさんには『神戸のこういうところが良いのではないか』という発信も一緒に協力してやっていただけると、われわれとしても嬉しいなと思う」と話され、講義を締めくくられました。
神戸を『働きたい』と思う街にするには-公益財団法人神戸市産業振興財団
7月19日(金)には、公益財団法人神戸市産業振興財団経営支援部の山本久美子氏を講師にお迎えし、「中小企業支援策の紹介」と題して同財団の産業振興等についてお話しいただきました。
講義では、山本氏からお話しいただく前に学生に向けて「起業をしたいかどうか」「起業している人が身近にいるかどうか」「どこで働きたいか」など、起業に関するアンケートが行われました。
続いて山本氏から、神戸市産業振興財団の紹介をはじめ、神戸市の中小企業や産業について説明がありました。その後、神戸市産業振興財団で行われている起業・創業支援に関する取組と、創業後の支援のために行われている取組について紹介がありました。
神戸市産業振興財団は、2011年度に市内にある7つの支援機関とチームを組んで、創業予定の方や創業から間もない方を対象に、起業・創業の支援を総合的に行う「神戸開業支援コンシェルジュ」を立ち上げられました。これまでは複数の支援機関が別々に支援を行っていたところを、こうした仕組みができたことにより、相談者が持つ課題を解決するための相談先が分かりやすくなり、また、支援機関同士で相談者の課題を解決するための方策を共有することにより、より良い支援につながりやすくなったといいます。さらに、中小企業診断士や税理士、司法書士等のコーディネーターに会社設立等の手順や起業・創業に関する相談をすることのできる個別創業相談も行われています。近年は、起業・創業に関する相談件数が増加傾向にあり、起業・創業につながるケースも増えつつある一方で、創業後の支援には課題があるといいます。
山本氏による講演後、学生たちは2~3人のグループに分かれて、「働きたい産業・仕事をつくり、神戸の魅力を高めるための施策」を神戸市産業振興財団に提案するためのグループワークを行いました。
グループワークでは、「あなたはどのような産業・仕事で働きたいか」という現状と、「どんな産業・仕事であれば、神戸の魅力が高まるか」という理想と、現状と理想のギャップを埋めるための取り組むべき施策についてチームごとに意見をまとめることが課され、学生たちは各々の考えや意見を導き出そうと、チームのメンバーと議論を交わしながら課題に取り組んでいました。
グループワーク後は、グループの代表者がグループ内で出された意見を発表し、稲垣講師と山本氏から意見に対するコメントがありました。学生からは、食品やアパレルをはじめ、広告・出版、医療、教育・研究など多岐にわたる分野の産業・仕事に関する意見が出されました。学生から出された意見に対して稲垣講師と山本氏からは、「社会課題にスポットを当てている点が良かった」「さらに深掘りをして具体的な提案に落とし込んでもらえたら良いと思う」などのコメントがありました。
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