1月28日(火)、兵庫県立大学新長田ブランチにおいて、兵庫県立大学主催、一般社団法人日本ガス協会共催、大阪ガス株式会社の協力で「兵庫県立大学の都市ガスセミナー カーボンニュートラルを目指す都市ガス社会」を開催しました。
まちの賑わいづくりに貢献-兵庫県立大学新長田ブランチ
本学は、2025年1月に新長田キャンパスプラザ(神戸市長田区)5階に、本学において産学連携や地域創造に取り組む社会価値創造機構の神戸拠点として、「兵庫県立大学新長田ブランチ」を開設しました。
新長田ブランチが入居している新長田キャンパスプラザは、阪神・淡路大震災の新長田駅南地区市街地再開発事業(神戸市事業)の一環で、新長田駅南地区に様々な教育機関が集う9階建ての教育複合ビルとして開設(2024年11月竣工)された建物で、1階から4階、9階に兵庫県立総合衛生学院が、6階から8階に兵庫教育大学が入居しています。
新長田キャンパスプラザ建物外観
新長田ブランチでは、新長田キャンパスプラザ内の教育機関と連携を進め、教育の質の向上に取り組むほか、本学の学生・教員の起業や大学発スタートアップ支援など、地域の課題解決等に取り組む起業人材の育成・支援、企業との共同研究、企業のデータを活用した経営支援、企業向けリカレント講座の実施等による地元企業人材のスキルアップを図る取組などを通じて、まちの賑わいづくりに貢献していくこととしています。
兵庫県立大学新長田ブランチ
・所在地:神戸市長田区腕塚町5-2-1新長田キャンパスプラザ5階
JR・神戸市営地下鉄 新長田駅下車 南へ徒歩約7分
・開館日:原則として、年末年始を除く毎日(ただし、建物の開館日に限る)
・貸館時間:月曜日~金曜日9:00~21:00 ※2025年3月末までは18:00まで
土曜日・日曜日・祝日9:00~17:00 ※2025年3月末までは休館
4つのセミナー室を有しており、移動間仕切により使用目的に応じて部屋の広さを調整することが可能で、36人~180人の講義や講座を開催することができます。
新長田ブランチオープニングイベント・都市ガスセミナー
新長田ブランチが2025年4月から本格稼働するのに先立ち、オープニングイベントとして「兵庫県立大学の都市ガスセミナー」を開催しました。「カーボンニュートラルを目指す都市ガス社会」をテーマに、エネルギー業界の現状と将来への課題をはじめ、CO₂削減のための様々な取組の中で、身近な都市ガスのカーボンニュートラルについて世界と日本の最新状況を本学の学生・教職員、地域の方々に分かりやすくお伝えし、自分事として考えていただく機会とすることを目的に開催し、当日は約110名の方にご参加いただきました。
はじめに、髙坂誠学長から開会の挨拶がありました。髙坂学長は挨拶の冒頭で新長田キャンパスについて言及し、「新長田は、30年前の阪神・淡路大震災で最も大きな被害を受けた地区の1つである。ここを創造的復興の拠点として、再開発の都市計画のもと、次々と新しい建物が建設され、その最後の1棟がこの建物だった。この30年の間に様々な出来事があったが、ここでこうしたセミナーが開かれることは感無量である」と述べました。
さらに、「本セミナーのテーマは、カーボンニュートラル・脱炭素社会ということで、地球の温暖化が進み、『1.5℃の約束』の目標達成どころではない状況の中で、われわれ1人ひとりが地球上の一市民として何ができるのか。そのようなことを考える機会になればと思っている。また、このセミナーは新長田ブランチのオープニングイベントであるが、本キャンパスを積極的に活用して、市民とアカデミアが一緒になって地域の活性化に向けた取組等を考えていきたいと思っている」と話しました。
(参考:「1.5℃の約束-いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」)
2021年11月に英国で開催された気候変動枠組条約第26回締結国会議で、気候変動による多くの影響を回避するために世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えることが、国連気候変動枠組条約締結国の事実上の目標とする決意が示された。「1.5℃目標」の理解促進と個人や組織に行動変容を促すことを目的に、SDGsに熱心に取り組む日本のメディアと国連広報センターが一緒になって「1.5℃目標」の意味や目標達成のために何をしなければならないのかを伝えるキャンペーン「1.5℃の約束-いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」を行っている。
続いて、草薙真一副学長が登壇し、新長田ブランチの概要について紹介したあと、「脱炭素社会において私たちが持つべき問題意識」と題して、本セミナーの開催意義について紹介しました。
その中で草薙副学長は、「脱炭素社会について考える際に、効率性というものを抜きにして語ることはできない。都市ガスと電気における効率性の追求が社会を維持していくことにつながり、それらのことを考えたときにまずできることは節約である」と指摘しました。また、企業や公共施設などの事業者や家庭における電力および非電力(主に熱)の節約方法とその効果を紹介し、「事業者ではすでに十分節約が実施されているが、家庭ではまだまだ無駄が多いと言われている。少しずつでもエネルギーの節約を進めることで、コスト増という部分に対抗していただくことが必要ではないか」と述べました。
さらに、脱炭素社会実現に向けては、「先進国の少子高齢化と人口減、インフラの拡充・補修の必要、世界の政情・治安の不安定化、地球温暖化・災害の激甚化などの懸念材料をもっと直視すべきではないか。今後の厳しい石油事情を背景に、温室効果ガス排出の少ない『天然ガスシフト』の一層の拡充に向けて、もっと大胆なアプローチが必要ではないか」などと指摘しました。
第1講演
第1講演には、ガス業界の第一線でカーボンニュートラルのための政策対応に携わられている一般社団法人日本ガス協会企画部 エネルギー環境グループマネジャー兼カーボンニュートラル推進センター長の奥田篤氏にご登壇いただきました。「カーボンニュートラル推進に向けた世界と日本の最新動向」と題し、エネルギー政策(GX実行会議、第7次エネルギー基本計画、GX2040ビジョン(案))の動向、天然ガスとe-メタン(e-methane:合成メタン)の政策的位置づけと果たす役割、e-メタンの普及拡大に向けた取組、e-メタンの開発プロジェクト、ガスのカーボンニュートラルにおける国際的な動向についてお話しいただきました。
講演の中で奥田氏は、カーボンニュートラルと我が国の産業・社会の発展を両立するためには、都市ガスを安定供給した上で、シームレスなe-メタン等への移行を前提としたさらなる天然ガスへの燃料転換や、徹底した省エネの推進、都市ガスの主原料である液化天然ガス・LNGの長期契約の柔軟性確保とトレーディング拡大、e-メタンのコストダウンと生産・利用の拡大のための環境整備が課題であると説明されました。その中で、今後取り組んでいかなければならないことの1つに、地産地消エネルギーに関する取組を挙げられ、「ガスエネルギーを大量に確保するには海外に頼らざるを得ないが、国産で、地産地消で、いかにエネルギーをつくるかということがとても大事だと思っている。われわれとしても、そういった取組についてもサポートしていきたいと思っている」と話されました。
第2講演
第2講演には、環境・エネルギー戦略に携われている大阪ガス株式会社企画部制度企画チームマネジャーの村上和隆氏にご登壇いただきました。「メタネーションを活用したカーボンニュートラルへの挑戦」と題して、Daigasグループにおける2050年カーボンニュートラルやエネルギーの低・脱炭素化に向けた取組内容についてお話しいただきました。
講演の中で村上氏は、Daigasグループでは都市ガス原料(e-メタン、バイオガス等)や電源(再生可能エネルギー発電、火力発電へのe-メタン導入等)の脱炭素化により、「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けて取組を進められていることを紹介されました。また、その軸となるのはe-メタンであるとし、「e-メタンの最大の利点は、既存のインフラを使えることであり、脱炭素化の社会コストが不要になるところにある。そのためにも、移行期には石油・石炭から天然ガスへの切り替え、あるいは、天然ガスの利用を拡大し、低炭素化をしっかりと進めていくことで、スムーズな脱炭素移行が可能になると考えている。他方で、技術開発や商流開発には様々な課題がある。振り返れば、われわれの会社の歴史というのは、いろいろな挑戦に取り組み、課題をクリアしてきた歴史でもあった。今まさにその2030年の社会実装に向けて、第3の創業と位置づけ、これからも取り組んでいきたいと思っている」と話されました。
講演後、質疑応答の時間が設けられました。モデレーターを務めた草薙副学長がお二人に向けて3問ずつ質問し、お二人から丁寧なご回答をいただきました。
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