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「本学の研究シーズや本学発スタートアップの取組を紹介」神戸商工会議所×兵庫県立大学 第8回KCCI Startup Pitch&Meetが開催されました

7月23日(木)、兵庫県立大学新長田ブランチにおいて、神戸商工会議所 新事業・イノベーション創出委員会および本学の主催で「第8回KCCI Startup Pitch&Meet ~兵庫県立大学の研究シーズや同大学発スタートアップの取り組み紹介!~」が開催されました。

 

社会課題の解決や地域経済活性化に向けて

産業競争力の強化に向けて、イノベーション創出の重要性がますます高まっている昨今、アカデミアが持つ研究シーズの社会実装やそれらをベースとしたスタートアップが大きく期待されており、特に、大学発スタートアップは社会課題の解決や地域経済活性化に大きな役割を果たす存在として注目されています。
本イベントは、大学の研究シーズの活用や大学発スタートアップの取組に関心がある企業をはじめ、出資先・投資先・融資先を探されているベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、金融機関、起業家支援事業を展開している支援機関、新規事業担当者や起業に関心のある方などを対象に、本学が持つ研究シーズや、本学の技術から生まれたスタートアップが有する知を紹介し、参加者の方々と本学の研究者のイノベーション創出の出発点の契機となることを目的としています。今回は、産官学金連携や地域創造に取り組む兵庫県立大学社会価値創造機構の神戸拠点である本学新長田ブランチで開催され、約80名の方々にご参加いただきました。

司会・進行を務められた神戸商工会議所 産業部産業振興チームの公手大夢氏

 

兵庫県立大学の取組紹介

はじめに、本学社会価値創造機構の久保貞夫本部長が「兵庫県立大学の取組紹介」と題し、本学の特色と強み、産学連携活動推進に向けた取組、スタートアップの創出に向けた取組、本イベントの登壇企業(本学発スタートアップ企業)および登壇教員について講演しました。
その中で久保本部長は、本学のスタートアップの取組について、2021年以降、KSAC(関西スタートアップ アカデミア・コアリション)-GAPファンド等の活用により、本学発スタートアップの創出件数は着実に増加傾向にあると述べました。さらに、スタートアップ創出を加速させるための取組として、起業環境整備、起業支援体制、起業人材育成、エコシステム活用の4つを挙げ、スタートアップに関する制度への対応やオフィス・研究室の提供、社会価値創造機構のOBが設立した会社による教員・学生への起業支援、産官学金連携で兵庫県播磨地域の新産業創出をめざす「はりま新産業創出エコシステム」などについて紹介し、「大学発のスタートアップは実用レベルの尖った技術と革新的なアイデアなどの強みを持っている。これらの強みと、地域企業の強みを掛け合わせることでスピーディーに新事業・新市場を創出することができると考えており、本日のセミナーもそうしたことをめざす取組の1つである。9月18日(金)にアクリエひめじで開催する『価値共創シンポジウム2026』のスローガン『未来を拓く共創の力』にもあるように、共創は地域社会に新たなイノベーションを創出する力となる。共創を実現するためのファーストステップとして、本学および本学発スタートアップとの連携についてご希望があれば、社会価値創造機構までご相談いただきたい」と話しました。

※KSAC-GAPファンド…科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出基金事業スタートアップ・エコシステム共創プログラムの1つで、事業化の可能性やグローバル展開が期待できるような大学の研究開発課題に対してGAPファンドを提供するだけではなく、採択案件に対しては起業支援人材や外部機関と連携し、事業化に向けた伴走型支援を行う。

 

兵庫県立大学発スタートアップ4社によるピッチ

安くてクリーンな次世代のエネルギーを開発-株式会社先端化学研究所

まず、株式会社先端化学研究所(本社:神戸市中央区)代表取締役社長の岡本和也氏から「高耐久性を持ち安価な電気エネルギーの提供が可能なペロブスカイト太陽電池」と題する講演がありました。
同社は、次世代の再生可能エネルギー源の開発を通じた社会貢献をめざして、工学研究科工学専攻化学分野の伊藤省吾教授らとともに、スクリーン印刷により安全・安価に製造が可能な「多層多孔質カーボン電極型ペロブスカイト太陽電池」などの研究開発を行っています。同社が研究開発しているペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型太陽電池とは異なり、ガラス基板を使用し、希少金属であるインジウムを使用しないインジウムフリーで、リサイクルも容易に可能であるといい、現在はパイロットラインを2028年に稼働させることを目標に、変換効率20%向上と実証実験の実施に向けて取り組んでいるといいます。岡本氏は「われわれと一緒に取り組んでくださる企業があれば、ぜひよろしくお願いしたい」と呼びかけました。

 

金属から原子・分子レベルの粒の計算技術などを提供-株式会社計算科学研究所

次に、情報科学研究科教授で株式会社計算科学研究所(本社:神戸情報科学キャンパス内)CTO(最高技術責任者)の鷲津仁志教授が「産学連携研究を計算科学で伴奏する“研究ベーシスト”型ベンチャー」と題し、講演しました。
鷲津教授は、情報科学研究科がある神戸情報科学キャンパスに隣接する理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」をはじめ、本学が所有するスーパーコンピューターや鷲津教授の研究室が独自に所有するスーパーコンピューターなどを用いて、材料シミュレーションに関する研究を行っており、研究室には社会人を大学院生として積極的に受け入れ、技術者の人材育成にも力を入れています。2022年に設立した同社では、自動車や石油・化学などの幅広い分野の企業に対し、さまざまな材料の分子シミュレーション計算・解析や分子シミュレーション技術指導、データ科学に関する技術指導を行うなどしており、鷲津教授は教育・研究活動と同社の活動を通して、産業および社会に貢献することをめざしています。鷲津教授は「われわれは『伴走する』というスタンスで企業のみなさんのサポートをさせていただいている」と話し、今後はAIを活用した技術開発や学内の摩擦学の研究者らとともに国際学会を開催するなどして、展開を広げていくこととしています。

 

化学農薬の代わりに使える安全・安心な殺菌水-株式会社YSH総合研究所

プラズマ応用工学を専門とする工学研究科工学専攻電気電子工学分野准教授で株式会社YSH総合研究所(本社:兵庫県姫路市)代表取締役社長の岡好浩准教授からは「キャピテーションプラズマ処理水による持続可能な農業の実現」と題する講演がありました。
同社が開発を進めているキャピテーションプラズマ(CBP)殺菌水は、岡准教授が開発した、水中でプラズマを発生させる技術「キャピテーションプラズマ技術」で作られたプラズマに、通常の水を一定期間晒すことにより製造されるもので、99.9%は水で、残りの0.1%は過酸化水素と電極由来のナノ粒子という構成になっており、同社では「活性酵素タイプ」と「金属イオンタイプ」の2種類を顧客の用途に合わせて製造しています。原料は水のみでありながらも、従来の化学農薬と同等、あるいは有機農法用薬剤以上の防除効果を持ち、人や土壌の微生物などの環境にも影響のない安全・安心な殺菌水であるとして、現在、国内各地の農家の方々に協力をいただいて実証試験等を進めています。また、殺菌効果が必要な分野は農業以外にもあるのではないかとして、将来的には幅広い分野での展開を想定しています。岡准教授は「われわれがめざす世界は、化学農薬に依存しない持続可能な農業の実現である。実証や協業、資金調達のパートナーを募集しているので、ご興味をお持ちの企業・個人事業主の方には気軽にお問い合わせいただきたい」と話しました。

 

最適化の「レンズ」で経営の真実を可視化する-MODS株式会社

元本学社会情報科学部長・情報科学研究科長でMODS株式会社(本社:神戸市長田区 本学新長田ブランチ内)代表取締役の加藤直樹本学名誉教授からは「数理最適化による経営効率化のための革新的ソリューションの実現」と題する講演がありました。
加藤名誉教授は、これまで長年にわたって教育・研究を行ってきたオペレーションズ・リサーチ、中でも数理最適化とデータサイエンスの分野における実績や経験、成果を活かして、社会や産業が直面する複雑な課題に対し、課題解決に向けて数理最適化およびデータサイエンスに基づく視点や方法論を用いた解決策を提案することで社会に貢献することを目的に、2025年11月にMODS株式会社を設立しました。
同社では、「研究開発・システム提供」「コンサルティング・DX支援」「人材育成・研修業務」の主に3つのサービスを提供しており、いずれも具体的なデータに基づいて現状分析・戦略立案・実行・事後評価までを行う、一貫したコンサルティング・サービスを提供しています。加藤名誉教授は「われわれが持つ数理最適化やデータサイエンスの技術は、与えられた制約条件の中で特定の目的関数を最大化または最小化する問題を解決に導く計算技術で、広範なビジネス分野で応用が可能であると考えており、利益の最大化や業務の最適化の実現に向けて、DEA(包絡分析)やスケジューリング、DX戦略などを提供できると思っている。また、南海トラフ地震を見据え、企業や行政、研究機関と避難計画の策定に取り組んだ実績・成果もあり、災害発生時の最適避難経路の作成、工場から日本国内に点在する倉庫や関連企業への最適な輸送計画立案、電気設備点検の最適巡回路の作成などを提案することもできる。ぜひ、数理最適化およびデータサイエンスの技術を用いた意思決定支援を強力に推進し、社会に還元していきたい」と述べました。

 

兵庫県立大学の研究シーズ紹介

兵庫県立大学の研究シーズ紹介には、2名の本学教員が登壇しました。

 

ダイヤモンドコーティングの革新的手法

工学研究科工学専攻機械工学分野の田中一平准教授からは「複雑形状に対応する高密着ダイヤモンドコーティング技術」と題する講演がありました。
田中准教授は、トライボロジーや薄膜工学を専門とし、地球上で最も硬い鉱物で、高硬度・低摩擦・高耐摩耗性などの特性を持ち、すでにさまざまな分野でコーティング剤としても使われているダイヤモンドに着目し、ダイヤモンドコーティング技術に関する研究を行っています。特に、工具や金型メーカーにおいて、工具や金具の摩擦・摩耗量の増加に伴う低寿命化や、材料となる資源・超硬合金の入手が困難であることなどの課題があり、これらの課題を解決するには、硬質な材料を薄膜としてハードコーティング(硬質薄膜)することにより、製品の性能・寿命・使用範囲を大幅に向上させる必要があるとして、複雑かつ微細な形状にも均一にダイヤモンド膜を合成できる「マイクロ波励起高密度機材近傍プラズマ(MVP)技術」を基盤とした革新的な成膜手法を開発しました。これにより、従来型では困難だった少量・多品種に向けたダイヤモンドコーティングも迅速な提供が可能になるといいます。なお、この研究は2024年度に「革新的ダイヤモンド膜形成法によるダイヤモンドコーティングサービスの事業化」としてKSAC-GAPファンドに採択され、田中准教授は現在、KSACのサポートを受けながら、ビジネス化をめざして取組を進めています。田中准教授は「この技術について、実際には実用的な製品に対してどれくらい均一にコーティングできているのかについてや、性能が十分であるのかなど、まだまだ分かっていないことが多く、検証段階にあり、一緒に検証していただける共同パートナーを募集している。併せて、ダイヤモンドをメインに扱ってはいるが、その他のコーティング技術もあるので、ご協力できることがあれば、ぜひお声がけいただきたい」と呼びかけました。

 

小型検査装置で拓く新しいケア

工学研究科工学専攻機械工学分野の浮田芳昭教授からは「小型検査装置で拓く新しいケア」と題する講演がありました。
微細加工やマイクロ流体工学などを専門とする浮田教授は、コロナ禍で普及が進むとともに、医療現場から人手不足などの要因により、さらなる必要性が求められている在宅医療や遠隔医療に注目し、自宅でも指先血1滴・20分以内で専門施設が有する大型の専用機器で行う検査・酵素免疫測定法(ERISA)と同等の高感度分析を行うことのできる小型検査装置の研究開発を行っています。この検査装置には、浮田教授が独自に開発した微細加工のマイクロ流路により、液体を自在に制御する「流体回路」の実現を可能にする流体回路技術「CLOCK」を使用することで、高性能でありながら、「弁当箱サイズ」の小型化・低コスト化を実現し、また、スマートフォンでの結果判定も可能であることから、浮田教授は、誰でも使える革新的な検査装置として、コロナ禍のようなパンデミック下における検査・診断をはじめ、在宅医療や遠隔医療の現場での活用を期待し、実用化をめざしています。さらに、CLOCKについては医療以外の分野でも活用できるとし、「さまざまなことに応用が可能であることはすでに実証しているが、他の分野や応用のアイデアをお持ちであれば、ぜひご提供いただきたい」と述べました。

 

講演後には、交流・ネットワーキングの場が持たれ、活発な交流が行われました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

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