本学では、県下全域に広がっている個性豊かな各キャンパスが有する多彩な教育・研究資源を生かし、地域の方々などを対象とした公開講座を開講しています。
9月4日(金)、淡路緑景観キャンパス(兵庫県立淡路景観園芸学校)において、本学大学院緑環境景観マネジメント研究科が兵庫県立大学生涯学習公開講座「一緒につくる未来のまち(美しいまちづくりの実践)」を開催しました。


自身が住むまちの姿を見つめ直し、未来のまちへつなぎたいものを考える
人口減少や少子高齢化が進む中、これからの「まちづくり」は行政だけでなく、住民が「つくり手」として関わっていくことが欠かせないといいます。本講座は、「一緒につくる未来のまち(美しいまちづくりの実践)」をテーマに、一聞すると「行政や専門家が決める難しいルールではないか」と思われる都市計画の基本を押さえながら、受講者自身が住むまちの姿を見つめ直し、課題を考え、未来のまちへつなぎたいもの「一緒につくる未来のまち」を考える機会とすることを目的に行われました。
講師は、前橋市職員として33年間、都市計画などの実務に携わる傍ら、オープンスペースの利活用と評価に関する研究を行ってきた経歴があり、2025年4月に本研究科に着任した塚田伸也教授が登壇しました。講義は、「都市計画とまちづくり」「自分の住んでいるまちの姿を知る」「自分のまちの課題を考えて解決する」「未来のまちへつなぎたいものを考える」の4部構成で行われました。
『都市計画』と『まちづくり』の両方を知ることが大事
講演の冒頭で塚田教授は「今、『まちづくり』に大きな転機が訪れている。まちづくりが大きく変わるときには3つの要素があると言われ、戦争、疫病、災害が挙げられる。これらが揃っている今日、まさに時代の転換期にある。『将来暮らしやすいまちづくりとは、どうあるべきなのか』について、みなさんと一緒に考えていきたい」と述べました。
第1部の「都市計画とまちづくり」では、都市計画は「土地利用」と「都市施設」の大きく2つに分けられることをはじめ、都市の起源や成り立ち、都市計画の先駆者の1人であるスコットランドの生物学者および植物学者のパトリック・ゲデス(Patrick Geddes,1854-1932)が人口に注目して都市計画の理論を展開したことや、米国の社会学者で教育者のクラレンス・アーサー・ペリー(Clarence Arthur Perry,1872-1944)が1つの小学校が成立する程度の人口を、1つの都市をつくる単位とするモデル『近隣住区理論』を展開したことが学問としての都市計画の始まりであることなどを紹介しました。また、法律や制度に基づく「都市計画」と住民側が主体となって参加する「まちづくり」の2つの言葉を解説し、「都市計画」の内容を知りながら、『このような「まちづくり」を実現してみたい』と考えることが一番良いと思う」と述べました。

緑環境景観マネジメント研究科 塚田伸也教授
自分で土地について調べる
第2部の「自分の住んでいるまちの姿を知る」では、「開発」という言葉が「区画形質の変更」を指すことをはじめ、道路・公園の整備や土地区画整理事業による「区画の変更」、土木工事を実施することによる「形の変更」、農地から宅地など地目を変更することによる「質の変更」の3つが「開発」であるとの説明がありました。また、日本の土地は「都市計画区域」と「都市計画区域外」の大きく2つに分かれていること、都市計画区域内の「市街化区域」には、13の用途地域があること、建ぺい率と容積率の「建築制限」などの土地利用の制限、景観法(2004年6月公布・同年12月施行)や屋外広告物条例などの説明がありました。
さらに、受講者の方々がスマートフォンを使用して、不動産の取引価格や地価公示をはじめ、防災情報や都市計画情報、周辺施設情報などを国土交通省のウェブサイト『不動産情報ライブラリ』で自宅周辺などの用途地域や地価を調べるワークも行われました。その中で塚田教授は「例えば、新しく住まいを探す際に災害などがある場所ではないか、あるいは、店舗を開くといった際に人口情報を得るなど、このサイトはいろいろな用途で上手く活用できる。ぜひ、自身や親類が所有する土地について、自分で調べてみてほしい」と述べました。
※地目(ちもく)…登記簿上で定められた土地の用途による区分のこと。田・畑・宅地・山林など23種類ある。

自分が住むまちをより良くするために
第3部の「自分のまちの課題を考えて解決する」では、受講者の方々の身近な地域集落の内側にある課題と、地域の外側(社会全体)の変化から生じる課題をワークシートに書き出し、その後、受講者同士で解決に向けての方法が話し合われました。都市における代表的な課題として、地域集落内では、空き家・空き地の増加、子どもの遊び場や高齢者の交通手段の減少、道路や各種公共施設などのインフラの老朽化、地域の外側では、環境問題や自然災害、産業構造の変化、国際化への対応が挙げられました。
まちづくりの課題解決のための方法として、塚田教授から3つの都市計画的な視点が紹介され、「1つ目は、各都道府県・市町ごとに今後10年20年先のまちの将来像を示したマスタープランがあり、各地域における将来の方向性が分かるので、ぜひ見ていただきたい。2つ目は、マスタープランなどの計画を作る際には、都市計画の制度として、『住民の意見を反映させる』手続きが義務づけられている。計画案の策定時に各自治体のウェブサイトなどでパブリックコメントを募っているので、『こういうふうにしてもらいたい』という希望があれば、積極的に意見を述べていただきたい。3つ目は、都市計画の制度の中に地域住民の意見を反映して、街並みなどその地域独自のルールをきめ細かく定められる地区計画という制度がある」と述べ、西宮市や芦屋市、岐阜県白川村、埼玉県川越市など、地区計画を活用した街並みを形成している事例が紹介されました。

残したいものと新しくつくりたいもの
第4部の「未来のまちへつなぎたいものを考える」では、これまでの講義の内容を振り返り、「現代は高度情報化社会となり、あらゆる物事の変化が加速化している。まちづくりについても、今まで時間を長くかけて変化してきたものが、かつての10分の1、100分の1と時間が短縮されている状況にある」と述べました。その上で、「このような著しい変化の中、残しておきたいものと新しくつくりたいものは何か」との問いに対し、残しておきたいものとしては、伝統的町並みや祭り・行事、思い出の場所などを、新しくつくりたいものとしては、子育て環境や交流の場などを挙げ、将来を見据えた都市づくりを考える必要性を述べました。
最後に、「都市計画は行政だけで、あるいは専門家だけで取り組むものではなく、実際にそのまちに住んでいるみなさん1人ひとりが『つくり手』として考え、将来に向けて実現していくことが大切である」と述べ、質疑応答後、盛会のうちに終えました。

・緑環境景観マネジメント研究科
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