堀田育志 准教授 (左:工学部電気電子情報工学科)
佐々木 翼 さん(右:工学部電気電子情報工学科2013年3月卒業、NHK放送技術研究所勤務)
研究に没頭した日々が開いた未来への道。卒業生と教員があの日、あの時の学びを振り返ります。
佐々木 堀田先生との出会いは、4年生の時。電子デバイスに興味があって工学部に入ったのですが、勉強するうちにますますおもしろくなって。卒業研究は自分がいちばんやりたいことをしようと、先生の研究室に入りました。
堀田 現在の電子デバイスには半導体のシリコンが使われていますが、この先さらに性能を上げるにはシリコン以外の材料も取り入れないといけない。私の研究室ではそのための基礎研究をしていました。着任して2年目だったので、研究室もまだこぢんまりしていましたね。
佐々木 アットホームな感じがよかったですし、何よりデバイスの新しい材料を見つけようという先生の研究に魅力を感じました。
堀田 佐々木さんは目的意識をしっかり持った学生で、自分のやりたいこと、めざすところがはっきりしていました。研究も勉強もそこがいちばん大切です。何がしたいのか、何のためにやるのか。それが自分の中になければ、いくら周りからやれと言われてもできませんから。
佐々木 高校生の頃は、これは何の役に立つんだろうと思いながら勉強することもありましたが、大学では自分の学びたいことが選べます。新しいことを勉強したり、目的に向かっていくのが好きなので、自分には大学での学びが合っていました。復習するより、新しいことを知りたいんです。
堀田 高校までは、たとえば数学なら、例題をやって、それが解けたら基本問題、応用問題という流れがありますが、大学は違います。習ったことのない言葉がいきなり出てくることもあったでしょうし、もっと順序立てて丁寧に教えてくれたら良いのにと思うこともあったでしょう。何を伝えたいかというと、学問の本質。なぜそれを学ぶのかという根源的理由の部分なんです。
佐々木 だから、おもしろいのですね。問題を解くためのテクニックではないんですね。
堀田 研究にも熱心に取り組んでくれたのが印象に残っています。実験の背景や目的を理解したうえで、よく考えてやっていました。こういう人は自由にやらせた方が伸びる。そう思って目的設定をしたあとは、あまり具体的な指示は出さずに自由にやってもらいました。
佐々木 自分で考えてやるのが楽しくて、研究室では毎日実験に没頭していました。あとはどこかに遊びがほしくて、こんなのもやってみたらどうだろうって、先生に黙って実験したりもしました。それも楽しかったです。
堀田 その気持ちはすごく大事です。温度の変化を自動的に記録するプログラムを自作して、それを使って最適な温度条件を探しだした実験は見事でした。ノートに手書きで記録していたのでは、探し出せてなかったかもしれないですからね。何かを突破する時というのは、それまでのやり方を続けていてはだめ。道具を生み出すか、手法を生み出さないと、その突破口は見えてきません。自分で考えて、つくって、実践するというプロセスをたどることが重要なんです。4年生でそれができたのは、すごいことだと思いますよ。おまけに結果も伴いました。
佐々木 研究というものがまだきちんと理解できていない中で、完成させた卒業研究が高く評価されたのは思いがけないことでした。
堀田 こんなデータが出ましたと持ってきてくれた時に、私の方が盛り上がってしまいました。突き止めてほしかったことがそこにありましたから。
佐々木 なんとか結果が出せたんだと、ほっとしました。卒業研究もそうですが、他大学の大学院に進学したいと相談した時も、先生にはずいぶんサポートしてもらいました。
堀田 他大学で同じようなテーマを扱っている研究室を紹介しましたね。試験に合格するための勉強は本人しかできませんが、そこも頑張ってくれました。
佐々木 外の世界を見てみたい、高いレベルで研究をしたいという気持ちが強くて、他大学大学院への進学を決めました。進学後ももちろん新しく勉強しなくてはならないことがありましたが、ベースはすべてここでやってきたこと。基礎をつくってもらったので、向こうに行っても自分のペースで研究を進めることができました。
堀田 うちの大学院に残ってくれたらという複雑な思いもありました。一方で、佐々木さんならどこへ行っても活躍できると確信していましたから、ためらいを捨てて後押しすることができました。あちらでもすばらしい成果を挙げてくれたので、本当によかったと思っています。
佐々木 将来はデバイスに関わる研究職に就きたいという目標も、NHK放送技術研究所の採用試験に合格したことで実現できました。今は有機ELディスプレーの研究をしていますが、とてもおもしろいです。
堀田 今でも研究室に遊びに来てくれるし、最近は学会でもよく会いますね。同じ研究者として話ができるのは楽しいものです。
佐々木 先生が最近始めた研究にも興味があります。また話を聞かせてください。
堀田 そうやって、世界が広がり、人のつながりが広がっていくのがいいですね。研究も人生もまだまだ広がっていきそうです。
佐々木 ここから始まったことが広がっています。兵庫県立大学で過ごした4年間は、私にはとても大切な時間。勉強や研究はもちろん、準硬式野球部で活動したり、アルバイトに精を出したり、友だちと遊んだり。来たこともなかった姫路での学生生活は、思っていた以上に楽しいものでした。
堀田 充実した学生生活が今につながっているのでしょう。
佐々木 会社の野球部に入って、今も休みの日は草野球を楽しんでいます。気分転換はスポーツ。そこも学生時代と全然変わってないです。
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