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「阪神・淡路大震災の教訓とは何か」減災復興政策研究科公開講座 令和7年度減災復興サイエンスカフェを開催しました

阪神・淡路大震災の発生から31年目を迎えた1月17日(土)、神戸防災キャンパスおよびオンラインで「減災復興政策研究科公開講座 令和7年度減災復興サイエンスカフェ」を開催しました。
減災復興サイエンスカフェは、地域の方々との減災・復興に関するコミュニケーションの場として、また、本研究科で行っている減災・復興に関する研究の内容等を対話形式で分かりやすくお伝えする機会として2019年から開催しており、本学の生涯学習講座(公開講座)としても位置付けられています。

 

リラックスした雰囲気の中で気軽に減災・復興について語り合う

「サイエンスカフェ」とは、科学技術の分野で行われている講演会やシンポジウムとは異なり、科学の専門家と一般の市民がカフェなどでコーヒーを飲みながら科学について気軽に語り合う場のことで、1990年代にイギリスやフランスで始まったとされています。「減災復興サイエンスカフェ」においても、対面で参加された方々には飲み物とお菓子をお配りし、終始リラックスした雰囲気で講座を展開しています。

 

今回は、減災コミュニケーション、防災教育、災害情報、国際協力を専門とする本研究科の阪本真由美教授が講師として登壇し、6,434人が犠牲となった阪神・淡路大震災において、災害対策の失敗はどこにあったのか、また、この30年間で対策は進化したのか、来たる南海トラフ巨大地震への備えはできているのかについて、参加者の方々とともに考える機会とすることを目的に行われました。なお、当日は阪本教授の他に、阪本教授の研究室に所属する3名の社会人大学院生が登壇し、それぞれの経験を踏まえて阪神・淡路大震災について語るとともに、参加者の方々からの質問を交え、講座の内容の理解を深めました。

阪本研究室所属院生 左から川原耕一氏、福田敬正氏、山口恭平氏

 

阪神・淡路大震災の際に起こったこと

本講座では、はじめに阪本教授が「阪神・大震災の教訓とは何か」について、話題提供をしました。阪本教授は冒頭で、自身が防災・減災にまつわる研究を始めたきっかけについて取り上げ、「阪神・淡路大震災が発生した当時、神戸大学の学生だった。31年前の今日、突然大きな地震が起こり、神戸は壊滅的な被害を受けた。なぜ、このような災害になったのか当時の私には全く分からなかった。『日本は災害に強い国』と言われていたのに地震には強くなかった。地震後、一気に火災が広がり、建物の下から救出できず火災で犠牲になった方もいた。消火活動を支援するために全国から消防や自衛隊が駆けつけてきたものの、消火は難しかった。避難所はどこも混雑し、物資不足に陥った。大阪や京都の人々は普段と変わらない生活をしているのに、神戸の状況は全く異なった。なぜ、このような災害になったのかを知りたくて、防災研究を始めた」と語りました。

減災復興政策研究科 阪本真由美教授

 

続けて、阪本教授は「『阪神・淡路大震災の教訓』として3点をお伝えしたい。1点目は『地震が起きないことを前提とした対策をしていた』という点である。これは行政だけでなく、われわれ市民側も地震が起きないことを前提に暮らしていた節がある。2点目は、当時、行政の方々は現場の最前線で非常に苦労されていたが、それでもいざというときは『行政だけでは命を守れない』ということである。行政のみでなく、学校や企業、住民等による地域連携が大切である。3点目は、これが一番大事なことだと思うが、『災害が起きたあとに備えること』である。地震による被害を防ぐための対策はいろいろ行われていたが、地震が起きた後の暮らしに対する対策は弱かった。これが露呈した災害だったように思う」とし、「これから南海トラフ巨大地震が起きるとされており、『地震が起きたとしても神戸が受ける被害はさほど大きくはない』といわれているが、直下型地震、海溝型地震のいずれでも、常に最悪を想定しておくことが大切である」と言葉に力を込めました。

※直下型地震…都市部の居住地域の直下で発生する地震。海溝型地震より比較的規模は小さいとされるが、震源が浅い場合は大きな被害をもたらすといわれる。阪神・淡路大震災は直下型地震である。
※海溝型地震…海側のプレートと陸側のプレートの境目である海溝での断層運動により発生する地震で、地震の規模が大きくなりやすいとされる。東日本大震災は海溝型地震である。

 

「いつも」をよくし、「もしも」に備える「フェーズフリー」へ

また、阪本教授は「阪神・淡路大震災を契機に日本全国の災害時の仕組みが変わっていった。この30年で何が変わり、できるようになったのかを如実に示したのが、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震だった」とし、令和6年能登半島地震における災害対応の中で、30年間の取組成果が見られたものや、希望する住民が被災地外にあるホテルや旅館に避難する「二次避難」といった画期的な取組が行われた一方で、深刻な断水やトイレ環境の悪化、阪神・淡路大震災の際に初めて問題となった「災害関連死」については、同地震の際にも321名の方が認定されるなど、解決できていない課題も明らかになったと説明しました。
さらに昨年度、兵庫県が実施した『令和6年度第4回県民モニターアンケート 防災に対する意識や取組』の調査結果について言及し、「携帯トイレやトイレ用凝固剤の備蓄に関する設問で『備蓄している』と回答した人は全体の約49%、『していないができればしたい』が約41%、『将来にわたってしない』が約10%だった。阪神・淡路大震災の際にあれほどトイレのことで困ったのに30年も経つと備えていない人が半数である。常に、どのような災害を経ても、『いつ起きるか分からない災害に備える防災は無駄なコストだ』と考える人もいる」と指摘しました。その上で、「『究極の防災』は、震度7の地震が起こっても、誰も死なずに、普段どおりの生活ができることであり、その状況になれば良いのである」と述べ、日常生活で使用する物を災害時にも使える物にしたり、地域のこども食堂を災害時には食の拠点にするなど、「いつも」をよくし、「もしも」に備える、「フェーズフリー」の仕組みや考え方を取り入れることを提言しました。
最後に阪本教授は、「防災庁設置準備アドバイザー会議の報告書には『皆で共に創る防災立国 災害を想定外にしない 誰一人取り残さない』と書かれている。これを実現するには、私も含め、みなさん1人ひとりの力が必要であるので、今からできる防災の取組を一層進めていただきたい」と参加者に向けて呼びかけました。

※災害関連死…被災後の生活の社会低位な要因による怪我や疾病等による死。

 

阪本教授による話題提供後には、参加者の方々から寄せられた質問や感想・意見などに対して阪本教授や阪本研究室の大学院生が回答したりコメントするなどし、日々の備えを一層強化することの大切さについて理解を深める機会となりました。

 

併せて、当日は、神戸防災キャンパスが位置するHAT神戸なぎさ公園(神戸市中央区)において開催された、令和7年度「ひょうご安全の日のつどい」(主催:ひょうご安全の日推進県民会議)に、減災復興政策研究科と地域ケア開発研究所がブースを出展し、多数の方々にご来場いただきました。

減災復興政策研究科のブース

 

地域ケア開発研究所のブース

 

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