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「1.17に、あらためて建築物の耐震性を考える」 減災復興政策研究科公開講座 令和4年度第2回減災復興サイエンスカフェを開催しました

阪神・淡路大震災の発生から28年目を迎えた2023年1月17日(火)、神戸防災キャンパスで減災復興政策研究科公開講座 令和4年度第2回減災復興サイエンスカフェを開催しました。

 

減災・復興をテーマに対話する場として

「減災復興サイエンスカフェ」は、地域の方との減災・復興に関するリスクコミュニケーションの場として、また、減災復興政策研究科で行っている減災・復興の研究を対話形式で分かりやすくお伝えする機会として2019年から行っており、本学の生涯学習講座(公開講座)としての位置づけで実施しています。

「サイエンスカフェ」とは、科学技術の分野で行われている講演会やシンポジウムとは異なり、科学の専門家と一般の市民がカフェなどでコーヒーを飲みながら科学について気軽に語り合う場のことで、1998年頃にイギリスのリーズで始まったとされています。本講座においても、対面で参加された方々には飲み物とお菓子をお配りし、リラックスした雰囲気で講座を開催しました。

 

近い将来、発生が予測されている南海トラフ地震への対策で、行政による公助とともに、自助・共助による取組も重要であるといわれています。そこで、今年度は、本研究科の青田良助教授が講師として11月5日(土)に開催した第1回減災復興サイエンスカフェでは、「高齢社会の中で脆弱な人たちの生活を支える高齢者福祉施設のBCP(事業継続計画)」をテーマに講義を行い、第2回となる今回は、本研究科長の永野康行教授が、減災の視点から被害軽減を図る上で効果が大きいとされる建築物の地震時挙動をシミュレーションにより明らかにし、その結果を可視化することについて講義を行い、会場とオンラインあわせて約40名の方が受講しました。

 

法律で定められている耐震基準

永野教授は「あらためて建築物の耐震性を考える」をテーマに、本学に関する紹介、建築物の耐震性・耐震設計について、「地震」と「地震動」の違いについて、「震度」と「マグニチュード」について、地震が発生する仕組み、永野研究室で研究しているシミュレーションについて、講義を展開しました。

永野教授は、まず耐震性とは、言葉を構成する漢字が持つ意味のとおり「地震に耐える性質」、一般的には「建築物が地震に耐えられる性質」を意味していると述べ、「それでは、どの程度の地震に耐えれば、耐震性がある建築物と言えるのか」と、参加者に向けて問いかけました。この問いについて永野教授は、現行の建築基準法の耐震基準(新耐震基準)では、大きく2つの視点を持って建物の耐震設計を行うこととしており、1つめは、「建物の耐用年数中に何度か遭遇するような中・小地震動に対しては、ほとんど被害を生じさせず、建物の使用性を確保すること」、2つめは、「極めてまれに遭遇するような大地震に対しては、建物の多少の被害を許容するが、人命の安全性を確保すること」とされていると紹介しました。

2つめの視点の中にある「極めてまれに遭遇するような大地震」は、震度6強程度の地震を指しているといい、永野教授は「日本の法律が最低限保障している建物の耐震性は、震度6強程度の地震に対する建物の耐震性のレベルについて『倒壊・崩壊など重大な損傷を生じさせずに人命の安全性が確保できれば、建物は補修すれば生活できるレベルの損傷を受けても良い』とされていると言える。震度4程度までの中・小地震については、『揺れますが、使い勝手は続けられるようにしましょう』というものになる」と解説しました。

※耐震基準:1978年6月12日に発生した宮城沖地震を受け、1981年6月1日に建築基準法が改正され、耐震基準等の見直しが行われた。1981年5月31日までの建築確認において適用されていた耐震基準を旧耐震基準と呼び、震度5強程度の地震で倒壊・崩壊しない建物が想定されていた。現行の耐震基準は、新耐震基準と呼ばれている。

 

「本当に、これで良いのか?」という問い

永野教授は、建築基準法で定められている耐震基準について、さらに踏み込んでいきます。「基本的に法律には最低基準が書かれており、それを破ると違法になる。法律は守らなければならない。だからといって『このギリギリの基準で定められた耐震性で良いと考えますか』と、この講座を通してみなさんに問いかけをした。この問いには、いろいろな答えが返ってくるのではないかと思う。阪神・淡路大震災でも新耐震基準以降で設計された建物は、概ね安全性が確保されていることが分かり、検証実験等でも証明されている。でも、自然である地球は、私たちが建築基準法で定めている大きさの中で動いてくれるのかというと、そうではない。人間は『経験の生き物』で、その経験の中で『概ねこの程度だ』というふうに法律を決めてきているので、地震が起きるたびに『そんなことも起きるんですか』と学び、法を改正し続けてきている。法は、概ね余り過大評価にならない程度に、今の時点ではベストを尽くしている。あまり過大な要求をすると、過大なコストがかかる」「エンドユーザー、例えば家をつくりたい人は、法を満たしながら『こういう家をつくって欲しい』という要求を明らかにした上で、コストが多くかかることになるかも知れないが、その要求に対して『こういう耐震性を持たせたい』というふうな意識を持つことを認識されておくのが良いのではないか」と永野教授は話しました。

 

講義中には、会場・オンラインの参加者とともに「大地震とは何か」というものを学習することのできる体操をしたり、講義後には、会場の参加者から永野教授に質問が寄せられたり、活発な意見交換が行われるなど、南海トラフ地震を見据え、改めて地震というものを学び、私たちが日々生活を送っている住宅や活動の場となっている建物などの建築物の耐震性について考える機会となりました。

関連リンク

減災復興政策研究科

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科 永野研究室

 

2022年6月に永野教授がラジオ関西「水曜ききもん」に出演し、防災・減災について取り上げた際の記事を、下記のリンク先からご覧になれます。

ケンダイツウシン「『減災復興学』を活用した新たなまちづくり」減災復興政策研究科 永野康行教授

 

 

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