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「『減災復興学』を活用した新たなまちづくり」  減災復興政策研究科 永野 康行 教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

6月1日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、減災復興政策研究科・研究科長の永野 康行(ながの やすゆき)教授です。

 

今回のテーマは、「『減災復興学』を活用した新たなまちづくり」

永野教授の専門は、「減災シミュレーション、建築構造学、耐震工学」です。

 

安全・安心なまちづくりのために

永野教授は、地震応答解析などのコンピュータシミュレーションを用いて、地震による建物・都市災害から人命保護に役立つ「安全・安心なまちづくり」のための研究をしています。

コンピュータのシミュレーションでは、「街や都市全体で耐震化がなされているのか」「安全・安心に暮らせる街なのか」を明らかにしていきます。大きな地震が起こった場合、街でどのような被害が生じるのか、建物の倒壊や崩壊のリスクなどをシミュレーションし、それらが災害に対処するための最善策を導き出す橋渡し的な役割を果たすことを目的として、研究を進めています。

兵庫県下における都市の地震時コンピュータシミュレーションの例

 

震災を経験した兵庫県にある大学だからこそ

―減災復興学とは

永野教授は、減災復興学という学問分野を体系づける取組を進めています。

減災復興学とは、「減災を総合化する」という視点から、「減災」と「復興」を一体的に捉え、安全で安心できる社会の持続的発展をめざす、新しい学問体系です。従来から、防災は防災、減災は減災といった具合に、それぞれの分野で、各専門の研究者が災害発生後の復興のプロセスなどを研究しているというものはありましたが、減災復興学では、それらすべてを網羅して、防災や減災に始まり、災害発生後の復興過程までの全体を考えて論じます。

永野教授が研究科長を務める減災復興政策研究科の科名にもある「減災」という言葉は、「災害を減らす」という意味の新しい言葉です。以前から「防災」という言葉はありましたが、特に、2011年3月に発生した東日本大震災で、マグニチュード9クラスの地震に対して、すべてを防ぎきることはできないと分かり、そこから「災害を減じる」という視点ができたといいます。

減災復興政策研究科が目指すもの(研究科HPより)

 

減災復興政策研究科が育成する人材像(研究科HPより)

 

防災・減災は、横ぐしに刺すような視点が必要

減災復興政策研究科は、2017年4月にスタートし、今年で6年目になる研究科です。阪神淡路大震災を経験した兵庫から、まさに減災復興政策というものを学問として追求し、発信していこうということで立ち上げられました。

防災・減災の分野は、横断的な研究であるため、いろいろな分野の研究者が関わっています。永野教授自身は、元々は建築が専門で、建物の構造設計に長らく携わり、建物の耐震構造の研究などをしていましたが、研究科には、都市防災や災害情報を専門とする研究者も所属しており、様々な切り口で研究にアプローチしているそうです。また、研究科で学ぶ学生のバックボーンも多様で、学部時代に防災・減災を学んでいた学生や、工学部で化学を学んできた学生、行政で公務員として働かれていた方が防災関係の部署に異動となり、リカレント教育として研究科に学びに来られて、戻っていかれたという方もいます。「防災・減災の分野は、横断的であるので、それらを横ぐしに刺すような視点がなければ、減災復興学は出来上がらないと思っている」と永野教授は話します。

減災復興政策研究科の学生たちとのミーティング

 

日々の備え

番組の中で、永野教授は、自宅でできる地震対策を紹介しました。一番良いのは、我々が健康診断を受けるのと同様に、自宅も専門家の耐震診断を受けておくことであり、さらに何らかの不具合が見つかった際は、それらに対する手を打っておくことだといいます。

1981年に建築基準法が改正され、耐震基準の見直しが行われました。このときの法改正前の「旧耐震基準」によって建てられた建物は、注意が必要なのだそうです。

壁を叩いてみたり、建物が傾いていないかといったことにも注意を払うことが大事とのことで、「体でいうと、自覚症状があるというのは、手遅れのサインになっていることが多い。建物も、『なんか傾いているな』と人間の感覚で分かるというのは、傾きが相当進んでいるので、そうなる前の方が対処しやすい」「まずは、検査を受けることが大事」とし、その上で、家具などの転倒防止や、就寝時には頭部の周りを守るといった身近なところからできる防災・減災対策を永野教授は呼びかけました。

木造住宅は「耐震壁」の量と適切な配置が重要(ひらめき☆ときめきサイエンス 2021年8月3日実施)

  ※耐震壁…地震の横揺れに対抗できるように構造設計された壁のこと

 

安心して暮らせるように

永野教授は、今後の研究の展望として、人間の感覚に焦点をあてた研究をしてみたいといいます。例えば、地震で揺れたときやジェットコースターに乗ったときに「怖いな」と感じたりしますが、人間は、普段の日常生活の中で意識はしていないけれども、速度や加速度、変位といったものから「怖いな」と感じています。「これらに関するデータと人間の感性を紐づけて、地震で揺れて『怖いな』と感じるような状況でも、安心して居られるには、どう在れば良いのか。耐震として成り立っているのは当たり前。もっと、ひときわ安心感を持てるようなところに踏み込んでいきたい」「減災復興政策研究科としては、部局としては小さいけれども、発信力を増していきたい」と永野教授は言葉に力を込めて話しました。

研究室院生とのゼミ風景

 

【 減災復興政策研究科 第2回オープンキャンパス開催 】

令和4年7月31日(日)13:00~16:00(受付開始 12:30)

兵庫県立大学神戸防災キャンパス 大教室

問い合わせ先 TEL:078-891-7376 Mail : gensai@ofc.u-hyogo.ac.jp

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