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組織論の学びを活かしながら、 廃棄ファッションを減らすプロジェクトをスタート。

 

鈴木遼平さん

国際商経学部2年生。静岡出身。ファッションデザインを学ぶ学生らが作った服を販売する「タイムシブル」というサービスを構築。メディアにも多数掲載され、東京で行われた展示会の来場者は100名を超えた。

 

服の廃棄問題をきっかけに構想した「タイムシブル」プロジェクト

 

中高生の頃から林業に携わる会社の社長さんにお話を聞く機会をいただいたこともあり、もともとは林業に興味がありました。衰退してしまっている木材産業はどうすればよいのか自分なりに考えるうちに起業や経営の勉強がしたいと思うようになり、兵庫県立大学の国際商経学部へ進学しました。

 

大学2年生のときに「タイムシブル」という服のプロジェクトをスタートさせました。ファッションデザインを学ぶ学生が作った服を、将来への期待と先行投資の意味で購入してもらうプロジェクトです。このプロジェクトは『誰がアパレルを殺すのか』という本を高校生のときに読み、服の廃棄や流通の問題を知って衝撃を受けたことがきっかけになっています。自分の好きな服の背景にこんなに問題があることがわかってからは、ファッションを楽しむことがベースでありながら、シーズンにとらわれない、廃棄服をなくすようなプロジェクトをやってみたいと思っていたんです。

 

ただ、自分は服を作る側ではなくて、服の価値を外からみて発見できる立場にいたいんです。だから企画者として、ファッションデザインを学んでいる服飾専門学校の学生が作った服を取り扱うプロジェクトを組み立てることにしました。

 

 

シーズンにとらわれない価値のある服を、「仕組み」でつくる

 

例えば2021年の秋冬シーズンの服は2022年のシーズンに入ると価値がどんどん下がっちゃうんですよね。それは服に対して不憫だなという気持ちで…。どうすれば経営や企画側の人間としてファッション業界に廃棄を減らす提案ができるのかを考え続けていました。

 

そこで注目したのが、「アーカイブ」という商品価値です。例えば20年前のシーズンの服でも、その時代で評価されたものがデザイナーの過去作品=「アーカイブ」と呼ばれて、インターネットで定価以上で売られています。

 

つまり、学生が将来、デザイナーになったときに「アーカイブ」になるかもしれない服を売ることに注目しました。期間限定ストアで学生がデザインした服を20着ほど展示し、1着1万円〜3万円程度の価格帯で販売します。コンセプトは「時間を超えて愛される服を、時間と共にずっと愛用していく」というもの。買った人は学生がデザイナーとして成功するまでの10年20年が経つまで服を廃棄せず手元に残してくれるだろうと。この仕組みを作れば、奇抜で革新的な服や1点物の服が、シーズンの規格にとらわれることなく楽しめます。このプロジェクトの構想を初めて人に話した日が後の活動につながる大きな一步になりました。

すぐにこの仕組みに賛同してくれる仲間が集まり、クラウドファンディングで資金調達して生まれたのが「タイムシブル」です。文化服装学院の学生5人と運営を担当する横浜の学生、そして自分というチームでスタートしました。

 

「タイムシブル」プロジェクトのウェブサイト

 

プロジェクトを動かしてみて組織論の大切さがわかった

 

プロジェクトを実際に運営する際に役立ったのが経営学でした。特にモチベーションの理論に関しては授業で吸収したことを使ってみようと意識していました。組織がどういう種類のものなのかを4種類に分けて、自分のバイト先の組織だったらこうだなとか、プロジェクトの組織だったらこっちにもっと振り切りたいなとか、そういう組織論を採り入れたのはよかったです。

 

このチームの場合は、東京、横浜、兵庫と遠隔で取り組むプロジェクトで、かつ、それぞれが強い個性を持っています。自分ひとりが表に立って引っ張っていくよりも、全員が対等に意見が言え、離れていても責任を持って一人ひとりがプロジェクトのリーダーである意識で動ける組織をめざしました。例えば売上げに関しては、服を作った個人に全額還元することで個人のモチベーションを高める、というように。

これからもマーケティング論やモチベーション論の勉強に力を入れていきたいと思っています。自分でプロジェクトをやってみてリスクマネジメントの重要さみたいなものを結構感じた部分があったので、リスクマネジメントについて研究している先生のゼミに入ることにしました。

 

東京、横浜、兵庫の学生が共同でプロジェクトを実施

 

 

将来、「アーカイブ」になる可能性を持った服の展示販売会を開催

学生であることを強みに変えると、今しかできないことができる

 

今回立ち上げたのは「デザイナーの学生時代の服が将来の作品価値を期待されて購入される」という仕組みなんですが、学生でないとできないことをやっていると、思った以上に反響を得られるし、興味を持ってくださる人も多いです。学生という肩書きを持っているうちに、小さいことでもやってみるといい経験ができるかなと思いますね。実際に『装苑』という、服を作る人なら誰もが憧れるファッション雑誌にこのプロジェクトが載るとは思ってもいませんでした。

 

来年以降は、タイムシブルを運営する後輩がちゃんと入って、出来れば30年、40年続いて、タイムシブル出身のデザイナーが生まれた後、タイムシブルは成功か失敗か?判断できるところまでいけたらいいなと思っています。やっぱり自分はそういう運営の仕組みづくりや企画開発に興味があるんです。自分がいなくても継続する運営体制をつくることに取り組みたいと思っています。

 

鈴木さんが着用しているパンツはタイムシブルで文化服装学院の学生が製作

 

 

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