本学と福島国際研究教育機構(Fukushima Institute for Research, Education and Innovation 通称「F-REI」、本部:福島県双葉郡浪江町)は、それぞれの資源を有効に活用して協働での活動を推進することにより、相互の研究開発および人材育成等の充実を図り、福島県浜通り地域の復興および発展、福島や東北の創造的復興、日本創生の牽引に寄与することを目的に連携協力することに合意し、基本合意書を締結することとなり、3月10日(火)、本学神戸商科キャンパスにおいて基本合意書締結式を行いました。
(左)福島国際研究教育機構 山崎光悦理事長 (右)兵庫県立大学 髙坂誠学長
複合災害を経験した福島県浜通り地域の創造的復興を願って
F-REIは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震および津波と、東京電力福島第一原子力発電所事故により甚大な被害を受けた福島をはじめ、東北の復興を実現するための「司令塔」として、2023年4月に国が「福島復興再生特別措置法」に基づいて設立した特別法人です。福島の復興を通して優位性を発揮できる「ロボット」「農林水産業」「エネルギー」「放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用」「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」の5つの分野で世界水準の研究開発、産業化、人材育成を一体的に推進することにより、日本の科学技術力と産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する「創造的復興の中核拠点」としての役割を担っています。

また、本学は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災において、前身の神戸商科大学・姫路工業大学・兵庫県立看護大学が専門分野を活かした復興・支援活動に取り組み、そこでの経験が災害看護学の構築の契機や、減災復興学の基礎となり、2004年4月に地域ケア開発研究所を、2017年4月に減災復興政策研究科を設立したほか、東日本大震災をはじめ、国内外の災害で得た経験や教訓を踏まえて、防災・減災、地域再生、リスクコミュニケーション等に関する復興知を蓄積しています。加えて、F-REIとの間においては、兵庫県立大学自然・環境科学研究所が2023年度からF-REIの農林水産業分野の委託事業に参加し、本研究所のワイルドライフ・マネジメントの知見を活かして、ドローンやICTを用いた高効率な被害対策システムの構築・実証実験を進めてきました。

締結式では、はじめに本学の髙坂誠学長が挨拶し「福島の課題というのは、日本だけでなく、世界の課題であり、未来の課題であるが、次世代にツケを回すのではなく、われわれの責任で、できることをしてしまわないといけない。そして、持続可能な未来をつくる。その先頭に立っているのがF-REIだと思う。福島は破壊から復興・希望のシンボルにならないといけない。そのために、われわれはF-REIとともに少しでも福島に希望の光を灯すために貢献したいということで、本日、基本合意書を調印させていただくことになった。具体的にわれわれは何ができるのかと考えたとき、まずは『備え』ではないかと思っている。事業継続計画(BCP)や防災計画、住民主体の復興計画等の策定は、阪神・淡路大震災と東日本大震災で経験しているので、少しは貢献できるのではないかと考えている。それから、グローバル展開や健康の実態把握に関する調査等でもお力になれるのではないか」とし、「原子力災害は長期的・複合的な社会災害だと考えており、数年で解決できるような話ではない。これから継続的にみなさんを支えていきたいと思う」と述べました。

F-REIの山崎光悦理事長は、「原子力災害を伴う複合災害からの復興ということで、福島を復興・再生させるには、30年、50年、100年と、相当な年月がかかるかも知れない。今、全力で推進している取組がなんとか終わったそのときには、それらがレガシーとなり、シンボルになっていると考えたい」とし、「F-REIは、『原子力災害に関するデータや知見の集積・発信』分野において、災害発生当時のデータ等を集積し、それらをデータベース化して世の中に発信しながら、福島の人たちの災害経験を次世代に受け継いでいきたいと考えている。あるいは、これから兵庫県立大学との連携によって研究成果が創出されれば、それらを使って世界の災害に立ち向かっていくことができるのではないかとの期待を抱いている。そして、最終的には、今まで地域に住まわれていた方々をはじめ、日本中のみなさんに『福島に住みたい』と思ってもらえるようなレジリエントな街をつくりたい」と話されました。

基本合意書への署名後には意見交換が行われ、それに先んじて坂下玲子副学長が「兵庫県立大学・福島国際研究教育機構との連携協定について」と題して話題提供をしました。その中で坂下副学長は、F-REIとの連携協定の背景と経緯について取り上げ、「阪神・淡路大震災の経験を通じて得た多くの知見は、2004年10月23日に発生した新潟県中越地震で活かされたと考えているが、一方で、東日本大震災は、私たちが予期せぬ放射能汚染を伴う複合災害として、従来の知見だけではどうしようもない課題を私たちに突き付けた。だからこそ、阪神・淡路大震災と東日本大震災の知見を融合した『復興・レジリエンス分野における新たな知』と、次世代を担う復興・防災・地域創成人材と社会実装人材を育成する『人材育成モデル地区』を構築していく必要があると考えていた。そのような中で、F-REIにお声がけをし、ちょうど1年前の2025年3月に、山崎理事長をはじめ、F-REIのみなさんの訪問を受けることができ、それを契機に包括連携協定について検討が進められてきた」と説明しました。

また、「放射能汚染からの環境回復に向けた環境動態の継続的な計測、データベースの構築、それらの情報発信、さらにコミュニティの合意形成を促進する研究に対しては、未来につながる人々が共生するレジリエンスなまちづくりに向けて、どのような複合災害にも耐えうることができ、しなやかに回復できる仕組みを考えていきたい」とし、「まちづくりには、住民の健康が不可欠である。これまでにF-REIの方々が蓄積されたデータを拝見し、健康増進を考えていきたい。併せて、まちづくりにはコミュニティの合意形成が不可欠である。私たち研究グループも住民の方々と対話を重ねながら、真のレジリエントなまちづくりを模索していきたい。さらに、本学にはBCP策定を専門とした研究者もいるので、これまで福島で培ってこられた知見を共有いただきながら、ともに¥復興をめざしていきたい。同時に、新たな研究の展開が望めるのではないかとの思いから、福島を学生の教育・研究フィールドにさせていただきたいと考えている」と今後の展望・取組について述べました。

このたびの基本合意書の締結により、研究開発や人材育成・交流を積極的に進めるとともに、社会課題の解決に資する研究成果の社会実装に向け、共同で取り組むこととしています。
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