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「日本で日本文化を教える」 国際商経学部 タマシ カルメン准教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

10月5日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、国際商経学部のタマシ  カルメン准教授です。

 

今回のテーマは、「日本で日本文化を教える」

タマシ カルメン准教授の専門は、「文化人類学」です。

(左から)林編集長、タマシ准教授

 

ルーマニアから日本へ

タマシ准教授は、ルーマニア出身の文化人類学者で、日本の祭りについて、中でも天神祭を中心に研究しています。最近は、日本の儀礼の観点から大衆演劇に関する研究も行っています。

タマシ准教授は、小学生のときに1冊の本に出会いました。1980年頃の日本の風景を写した写真集でした。見たことのない風景で、とてもきれいだと思ったといい、「10歳頃に『私、いつか絶対日本に行く』と思いました」と、そのときの決意を語ります。タマシ准教授の出身高校では、日本語を学ぶことはできなかったそうですが、外国語である英語とフランス語を勉強し、その後、ブカレスト大学外国語学部日本語学科に進学して日本語を勉強しました。2001年に学徒生として奈良教育大学に1年間留学するために初来日し、2004年に再び来日して以降、関西で暮らしながら研究を続けています。

1年間留学生として過ごした奈良の地は、タマシ准教授の目には「『不思議の国のアリス』の世界観のような風景で、とてもきれいなところ、御伽草子のようなところ」に映ったといいます。特に奈良公園と、ルーマニアでは滅多に見ることができないという鹿を日常的に見ることができることに驚いたそうですが、タマシ准教授にとって、それらは「信じられないほどきれいな風景」で、奈良での生活を通して、日本が特別なものになっていったのだそうです。

 

祭りは、現代社会で生きている神話

日本の祭りは、現代社会で生きている神話であると、タマシ准教授はいいます。タマシ准教授の研究テーマである天神祭は、京都の祇園祭、東京の神田祭と並んで日本三大祭と称される日本の重要な祭りの1つです。「大阪が大好きだ」というタマシ准教授は、大阪の祭りである天神祭の研究をしたいと考えていたところ、縁があって天神祭を研究できることになりました。2017年から研究を始め、天神祭がより身近なものとなり、自分のコミュニティのような存在になったといいます。また、天神祭と同じく古くて有名な祇園祭については、日本語以外にも英語やフランス語での研究があるものの、天神祭については、日本語以外の言語で書かれた研究は、タマシ准教授による研究のみではないかといいます。

タマシ准教授にとっての天神祭の魅力は2つあるといい、1つは、歴史的事実の部分もありますが、菅原道真の神話に非常に興味があるといいます。もう1つは、天神祭を中心とした天満のコミュニティで、ルーマニアの小さな町が出身地であるタマシ准教授にとって天満のコミュニティは、居心地が良いそうで、「大阪は大都市ですが、天満は、大都会の中の村のようです」と話します。

天神祭の鳳神輿の前で

タマシ准教授は、来日するまで日本の祭りについては知らなかったそうで、当初は、日本神話の研究をしていました。「大学では、日本文学の勉強が主で、日本神話に興味があったので古事記の研究をし、大学院でも、古事記の神話の時代の部分の研究をしていました」とタマシ准教授はいいます。「元々、日本神話のみでなく、子どもの頃から世界の神話に興味を持っていました。自分で文字が読めない頃でしたので、おそらく5歳頃だったと思いますが、父がギリシャ神話を読んでくれて、『この神は、何の神?』といった具合にクイズを出してくれたりして、神話に興味を持つようになりました。神話が好き、日本が好き、日本語の勉強がしたい、日本神話へと、関心がつながっていった形になります」と、タマシ准教授は生き生きと話します。

 

大衆演劇と儀礼

タマシ准教授は、最近の研究テーマに大衆演劇を取り上げています。大衆演劇は、観客を笑わせるものであり、「笑い」と日本神話や日本の伝統には関係があり、面白さを感じるといいます。タマシ准教授は、「アマテラスオオミカミが弟のスサノオノミコトの振る舞いに怒って天の岩戸に隠れてしまい、世界が暗闇に包まれたとき、アメノウズメノミコトが岩戸の前で踊って笑いを起こして、その笑い声を聞いて不思議に思ったアマテラスオオミカミが『何かな?』と思って岩戸の外を覗いたという場面を踏まえて考えると、男性が女装をして芸を披露するドラァグクイーンというのは、一般的に研究されるときは、ジェンダーの観点から研究されていますが、私はそうではなく、『パフォーマンスと日本文化との関係』『笑うことの意味』ではないかと考えています」と解説しました。また、大衆演劇と併せて研究している儀礼については、「儀礼は、人間の文化の普遍的な部分です。ただ、日本の演劇を考えると、能もそうですし、能からできた歌舞伎などは、元々神様に捧げるものだったので、儀礼的な部分が残っています。大衆演劇は割と新しいものですが、人形浄瑠璃など儀礼として行ったものを研究して、面白いと感じました」と話しました。

大衆演劇「劇団心」と石見神楽のコラボレーション

 

私たちの近くには、神話が生きている

タマシ准教授は、本学で2つの授業を担当しています。1つは、留学生向けの授業で、日本文化の基礎知識のような内容で、神話だけでなく、日本語の成り立ちや日本語の書き方、現代社会のことなどを理解しやすいよう、簡単な内容で指導しています。もう1つは、専門的な内容の授業で、日本文化や日本の祭りのことを中心に取り上げています。

日本人ではない、ルーマニア出身のタマシ准教授が日本文化を教えるということについて、留学生は、教員の国籍を意識することはないといいますが、日本人の学生は、最初は驚いているのではないかと、タマシ准教授は推察しています。「日本人の学生は、大げさに気持ちを表すことはなかなかないので、私が日本文化を指導することに対してどのように考えているのかは分かりませんが、やはり最初は、日本文化に関する授業であれば、簡単な内容の授業なのではないかと思って受講を決めた日本人の学生はいるのではないかと思います。評価はしませんが、授業内でクイズをする機会を設けており、例えば、有名な神であるイザナギとか、アマテラスとか、神道・民俗学に関係がある専門用語のクイズをしたら、10点満点で1、2点程度の学生がいます」とタマシ准教授は話します。日本人でありながら、日本文化や日本の伝統について知らないことは、意外とたくさんあります。

タマシ准教授は、「私たちの近くには、神話が生きています。本学の神戸商科キャンパスは、淡路島に近いところにあり、淡路島には、日本文化が感じられる面白い場所がたくさんあります。授業の中で関連する内容の話をして、それから実際に現地を見に行きます」と紹介しました。

 

日本人が日本文化を学ぶことの意義

祭りという分野で考えると、日本が世界で一番豊かなのではないかと、タマシ准教授は話します。日本の祭りは、神事を中心に毎日行われています。天神祭というと、一般的には7月25日に花火が上がって、大川に船が出るというイメージがありますが、実際には、大阪天満宮で様々な神事が毎日行われています。「天神祭を勉強すれば、歴史も、儀礼も、神話も、日本の芸能も勉強することになる」とタマシ准教授はいいます。「留学生に日本文化を教えることよりも、日本人に教えることの方が重要だと思います。私も、ルーマニア文化に関する授業があればよかったと、今は思います。正直に言えば、ルーマニア文化より、日本文化の方が詳しいです」と、かつてルーマニアで過ごした学生時代に思いを馳せました。

番組の最後にタマシ准教授は、今後、学生に向けて発信していきたいこととして、「本学の国際商経学部は、経済・経営が専門ではあるけれども、日本の文化を少しでも深く理解しておけば、他の国の文化の理解につながり、国際交流や貿易などの場面において、多文化コミュニケーションを通じて、より良いコミュニケーションをとることができるようになるのではないかと思います」と話しました。

授業風景

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