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「経営学から考えるイノベーションと学び」 国際商経学部 中村 友哉准教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

7月5日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、国際商経学部の中村 友哉(なかむら ともや)准教授です。

 

今回のテーマは、「経営学から考えるイノベーションと学び」

中村准教授の専門は、「イノベーション、製品開発」です。

 

教員として母校の教壇へ

中村准教授は、現在、神戸商科キャンパスにある国際商経学部で「イノベーション」について様々な側面から研究をしていますが、高校生の頃はバス釣りが好きで、ブラックバスを釣ることで生計を立てる「バスプロ(バスフィッシングプロフェッショナル)」になることを真剣に考えていたといいます。しかし、バスプロになるには、バスボートというバス釣りをする際に乗船するボートを購入する必要があり、高校生が購入するには現実的な価格ではなかったことから、中村准教授はバスプロになる夢を断念しました。そんな中村准教授でしたが、銀行員だった父親と経済や経営に関する話をする機会がある中で、当時これらに関する知識を持っていなかった中村准教授は上手に会話することができず、そこから経済や経営のことをきちんと勉強したいと考えるようになり、経営学を学ぶことのできる、本学の前身である神戸商科大学商経学部に入学したといいます。

神戸商科大学を卒業する際に、大学教員になることを志したという中村准教授は、学部卒業後、本学大学院に進学し博士(経営学)の学位を取得。その後、他大学での教員経験を経て、2020年4月から本学の国際商経学部の准教授として、自身の母校の教壇に立つようになりました。学生として通っていた大学に教員として戻ることについて中村准教授は「キャンパス内の講義室も含めて、当時と大きく様変わりしていないので、自然な感じでいます」と語ります。

2005年の学部卒業式の際の写真。後列右から2人目が中村准教授。中央は当時中村准教授の指導教員だった當間克雄教授。神戸商科キャンパス内の教育棟をバックに撮影。

 

すべての講義やゼミを英語で学ぶ環境

中村准教授が所属する国際商経学部は、2019年に経済学部と経営学部を再編して開設された学部で、経済学コース、経営学コース、グローバルビジネスコース(GBC)の3つのコースがあります。そのうちGBCは、英語力とコミュニケーション能力を駆使してグローバル企業など世界を舞台に即戦力として活躍できる優秀な留学生及び日本人学生を育成することを目的としたコースで、経済学・経営学の専門科目も含め、すべての講義やゼミを英語で学びます。そのため、1年次前期に約5週間にわたる海外語学研修を行い、併せて入学後1年間は神戸商科キャンパス内にある国際学生寮に入寮し、留学生と日本人学生が共同生活を送り、社会性や国際感覚、国際コミュニケーション能力の獲得を目指します。「留学生と日本人学生の比率は半々ほどで、学生も教員も全て英語で会話します。英語のネイティブの方もいれば、英語が第二言語の方もいますので、本当にいろいろなタイプの英語で会話が展開されており、少なくともアメリカやイギリスのような英語が主流で話されている訳ではないです」と中村准教授は説明します。中村准教授もGBCの学生を対象に国際マーケティング論(International Marketing)の講義をしており、自身も日々試行錯誤しながら学生とともに英語力を磨いているような感覚であるといいます。

講義中の様子

 

イノベーションとは

近年社会的にも注目を集めており、様々な場面で使われるようになった「イノベーション」という言葉ですが、個々人によって、イノベーションという言葉に対して持つイメージや捉え方が異なっていると中村准教授は指摘します。「イノベーションとは、よく日本語で『技術革新』と訳されることがあるのですが、『経営学領域のイノベーション』と言った際に、少し抽象的な言い方になりますが、『既存の技術やアイデアと、また別の既存の技術やアイデアとを新しく組み合わせ、その新しい組合せによって経済的な価値を生み出すという現象』をイノベーションというふうにいいます。イノベーションでも、われわれの生活をガラッと変えるような、非常にインパクトの大きいものもあれば、小さな改善の積み重ねによって徐々に変わっていくようなタイプもあり、イノベーションという言葉自体の意味合いが非常に広く、いろいろなものを含んでいます。元々は、ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターという20世紀に活躍した非常に有名な経済学者が提示した概念で、シュンペーターによると、イノベーションというのは、技術を使った製品はもちろん対象に含まれますが、それ以外にも、例えば新しい組織であったり、新しい販路の開拓といったものもイノベーションであると言っています。さらに、それらの対象が、全く新しい知識や要素と、また別の全く新しい知識や要素で組み合わせて新しいものをつくるのではなく、すでにあるもの、すでにある知識や情報を全く別のものと組み合わせて新しいものや新しい価値を生み出す。これがイノベーションだというふうに言っています」と中村准教授は語ります。

※ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター…Joseph Alois Schumpeter(1883年2月8日-1950年1月8日)オーストリア・ハンガリー帝国出身の経済学者。イノベーションの概念を生み出した。

ラジオ収録の様子

 

イノベーションを生み出すために必要なもの

さらに中村准教授は、学生の学び方とイノベーションの関わりについても言及しました。「近年、『組織がイノベーションを生み出すには何が必要か』ということで、理論的には、1つは『新しい知識を探索していくような活動』、もう1つは『既存の今知っているような知識をより深堀していく、深めていくような活動』の、この2つの活動をバランスよく行っていくことが非常に重要であると言われています。個人に置き換えた場合も、仕事をしていると、自分の業界などの知識を深く掘り下げていくというようなことは得意になっていくのですが、全く別の領域を探索していくという前者の活動についてはなかなか難しくなっていく。そう考えると、学生のみなさんも何かと忙しいと思いますし、私たちの学部自体も経済や経営がベースにありますが、大学は様々な知識に触れることのできる機会があり、いろいろな知識を学ぶことはイノベーションの観点からもとても大事なことなので、学生のみなさんには、関心のあることについて積極的に学んでほしいと思っています。最近話題になっているChatGTPなども含めて、学び方も『何をもって学びとするのか』という部分が大きく変わってくるような時代である中、重要なことは『こういうことをもっと知りたい』という好奇心を持つことだと思います」と話しました。また、中村准教授は、イノベーションと同様に、最近よく使われるようになった『多様性』という言葉についても言及し、「価値観やバックグラウンド、考え方などが異なる人たちが集まって、そこで自分が知っている知識の外にあるような全く新しいものとの衝突や組み合わせが起こるというようなことが、イノベーションを生み出す上で重要な活動になってきます」と解説しました。

国際商経学部「製品開発論」の講義

 

経済や経営を中心に様々な現実の世界を見るということ

国際商経学部の学生は、1年次後期から2年次前期の1年間、いずれかの教員のゼミに所属して産学連携プロジェクトやフィールドワークなどを行うことで、実社会の課題解決に取り組むプロジェクトベースの課題解決型ゼミ活動「プロジェクトゼミ」を受講することになっています。中村准教授のゼミでは、17、8人ほどの学生を対象にフィリピンで研修を行い、日本とは全く異なるビジネス環境を学ぶことの大事さなどを学生たちに伝えています。学生たちも「現地では、端的に知らない情報や知識を肌感覚で触れることになるので、自身への情報の入り方も変わってくると思いますし、よくあるケースですが、実際に海外に出てから初めて日本について気づくこと、インフラやトイレをはじめ、『こういうところがすごかったんだな』『こういうものは、海外にはないんだな』と、改めて気づくことがあると思います。全く異なる領域を学ぶことは大変ですが、イノベーションを生み出すにはそういう活動が非常に重要であると分かっているので、広い視野を持って物事を学んでいくということを、学生時代にいろいろな形で実践できると良いのではないかと思います」と中村准教授は話します。

番組の最後に中村准教授は「これからは、英語もそうですが多様性も含めて『グローバル』がキーワードになる社会になっていきます。その中で、経済や経営を中心に様々な現実の世界を見ていくことは、とても楽しいことなので、ぜひ関心を持っていただければと思います。また、ChatGTPにも触れましたが、今後ますます学び方が変わってくると思います。そのときに『難しそうだから、今はやめておこう』というよりは、生活をしている中で自分の心が動かされるような、面白いなと思うものと、ピンと来ないものとがあると思うので、ピンとくるものにチャレンジしてみると良いと思います」と本学への入学を目指す方や学生に向けてメッセージを送りました。

2022年9月フィリピン研修で現地の学生と撮影。(英語でのプレゼンテーション後に行われた学生同士の交流会にて)

 

2023年3月フィリピン研修で現地の小学生と撮影。(小学校訪問時)

 

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