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「ナチュラリスティックガーデンのすすめ」 緑環境景観マネジメント研究科 田淵 美也子准教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

3月1日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、緑環境景観マネジメント研究科の田淵 美也子(たぶち みやこ)准教授です。

 

今回のテーマは、「ナチュラリスティックガーデンのすすめ」

田淵准教授の専門は、「観賞園芸」です。

 

植物の専門家として持続可能な公共空間のガーデンを模索

田淵准教授は、兵庫県淡路市に位置する淡路緑景観キャンパス内にある緑環境景観マネジメント研究科において、研究活動を行っています。田淵准教授が専門としている「観賞園芸」とは、一言で表すと、花を使った造園、植栽デザインであるといい、主に、公共空間の花修景、暖地の宿根草(しゅくこんそう)ボーダー、新しい園芸植物の利用、植物を楽しむ(観賞、料理、クラフト、染色、生活等)、アジサイ類の変異と園芸利用をテーマに研究を進めています。また、実際に長年にわたり、尼崎市や札幌市、神戸市の都市公園の植物の栽培管理や公園・緑地管理を行ってきた実務家教員として、花をテーマにした景観づくり(フラワーランドスケープ)やガーデンデザイン、植物の管理技術に関する教育活動を行っています。

札幌市都市緑化植物園豊平公園で作った花修景(2003)。チューリップとムスカリで春の景観を演出。

 

札幌市百合が原公園で作った一年草花壇(2009)。カラーリーフや宿根草も取り入れたもの。

 

淡路景観園芸学校での花壇デザイン(2019)

 

神戸市立森林植物園で植物副産物(木の実など)を使ったリースづくりの市民講座

 

街中の花壇の花々には、人の手がかかっている

公園や街中を歩いていると、きれいな花が咲いている花壇やプランターが並んでいるのを見かけることがあります。例えば、これから迎える春のシーズンでは、パンジーやビオラといった春の一年草の花が花壇に植えられていることが多く、夏になると、サルビアやベゴニアなどの夏の一年草が植えられています。一年草の花もそれぞれに美しく街を彩ってくれますが、一年草の花壇の場合、一年草の花は種子から芽が出て、花が咲き、枯れるまでのサイクルが1年以内であり、年に数回、花苗の取り換えが必要で、メンテナンスに労力と費用がかかるといいます。そこで田淵准教授は、宿根草という多年草の一種で、毎年植え替えをしなくても良い植物に植え替えていき、なおかつ自然風で、ローメンテナンスになるようなガーデンづくりを目指しているといいます。

一年草の花壇。華やかだが、1年に2~3回の植え替えや花がら摘み、潅水などの日常のメンテナンスに手がかかる。

 

宿根草ボーダー花壇(2013)。イングリッシュガーデン風のものでまだ、ローメンテナンスとはいえない。(札幌市内)

 

自然風に見せる-ナチュラリスティックガーデン

今回のテーマにもなっている「ナチュラリスティックガーデン」は、近年、世界的に広まってきているガーデン手法で「自然風に見せる」というものです。「各地域の土地に合った、手入れにあまり手間のかからない植物を選び、植物の生命力をいかに発揮させ、さらに色合いなどの組み合わせにも配慮してガーデンデザインとして感動できるものに仕上げていくというところを目指しています」と田淵准教授は話します。最近は、ススキのような見た目をしている「グラス類」の植物を植栽に使う傾向があるといい、中でもミューレンベルギアという赤色をした細かな穂がつく品種が人気で、おしゃれでモダンな雰囲気を出すことができるといいます。「今までは観賞園芸の対象にされていませんでしたが、「グラス類」といったものも、花壇全面ではなく所々に入れることによって、グッと自然風になります。花が咲く植物だけでなく、このような植物と組み合わせることで、よりナチュラリスティックな花壇になり、グラス類は割とメンテナンスが楽なものが多いので、『その土地では、どういう植物であれば手間がかからず、なおかつ全体として美しく見えるか』というのをキャンパスで実証実験しながら実践しています」。

真ん中の赤い霞のような植物がミューレンベルギア・カピラリス。逆光で観賞するとより効果的。(2022淡路景観園芸学校)

 

様々なグラス類を入れることで、自然な雰囲気を演出。穂の形や色も様々。(2021淡路景観園芸学校屋上ガーデン)

 

それぞれの地域に合う植物がある

公共空間のガーデンは、美しく、人の心を癒し楽しませてくれるものですが、手入れの手間やコストがかかることから、近年、自治体によっては敬遠されることもあるといいます。一方、海外では、植物を取り入れた景観づくりに力を注いでいる国もあります。日本と海外の違いについて田淵准教授は、「それにはやはり、文化の違いもあると思いますが、例えば、イギリスなどは元々園芸文化で、ヨーロッパと日本とでは気候も異なります。雑草の生え方も全然違います。日本は、梅雨があり、高温多湿ですから雑草の生え方が激しく、台風で草木が倒れるようなこともあり、条件が厳しいです」と語ります。このような中、国内各地では、ボランティアグループと自治体が一緒になって、それぞれの地域の気候に合った植物を見極めながらガーデンづくりが行われているといいます。「『ナチュラリスティックガーデンというのは、こういう植物を使って、こういうデザインで』という決まりはなく、各地域に合った植物を使えば良いのです。日本の中でも北海道、東京、大阪、熊本では気候が異なるので、その土地に合う植物というのも少しずつ違ってくると思います」「現在、淡路島のキャンパス内でも実験を行っていますが、気候や土地に合わず、負けてしまう植物もあります。その場合は、自然に任せて見切りをつけ、また異なる植物を試しています」と田淵准教授はいいます。

横浜山下公園の市民連携花壇(2021)。木陰エリアのため、その環境に向いた日本産の植物を多用している。

 

東京多摩市民間会社のビルの屋上ガーデン。海外のデザイナーによるものだが日本産の植物が多く使われている。管理は専属ガーデナーがいる。(2019.10撮影)

 

枯れた姿も観賞

春夏秋冬、季節が移り変わっていくように、植物の姿もまた変わっていくものです。田淵准教授は、花が枯れた後の姿も観賞して欲しいと強調します。花が枯れているのを見ると、「切ったら良いのに」と考えがちですが、ナチュラリスティックガーデンは、花だけでなく、葉や植物全体の姿、葉色、枯れた後の実や種子など、植物のすべての姿を観賞の対象にしているといいます。「『春は芽出しを、秋は枯れた姿を楽しんでください』というのがナチュラリスティックガーデンの考え方なので、いつも華やかである必要はないのです。そのため、観賞する人々への訓練も必要です」と田淵准教授は語ります。そして、花壇に植えた植物が観賞時期を終えると、すべてを刈り取ってリセットし、また次のガーデンづくりを始めます。番組の最後に田淵准教授は、「植物の種類は、とてもたくさんあり、日本の植物にも良いものがあるので、日本の植物だけを使ったガーデンづくりを行うというのもありだと思いますし、海外の植物も含めて、それらを上手く使って、いろいろなガーデンをつくっていきたいと思います」と今後の展望を話しました。

同じ場所の左から7月4日、10月21日、12月24日の変化。通常の植物の管理では花か終わったら茎刈りをし、翌年に備えるが、ここではできるだけそのまま残し、花が実になり枯れてゆく姿まで観賞の対象にする。このような枯れ姿も様々で美しいと感じられるようなデザイン力も必要である。2020年淡路景観園芸学校屋上ガーデン(学生制作)

 

ロニカストルムという植物の花(左)と実(右)。花後の実やその周辺部などの姿をシードヘッド(Seedhead)といい、植物によって様々な色や形を楽しめる。

 

ヒロハマウンテンミントのシードヘッド

 

左:ルリマツリモドキ、右:シランのシードヘッド

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