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「光でタンパク質のはたらきを見る」 理学研究科 柳澤 幸子准教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

1月4日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、理学研究科の柳澤 幸子(やなぎさわ さちこ)准教授です。

 

今回のテーマは、「光でタンパク質のはたらきを見る」

柳澤准教授の専門は、「生物物理学」です。

 

世界有数の設備を利用して研究

柳澤准教授は、国際的な科学技術都市を目指す「播磨科学公園都市」に位置する播磨理学キャンパスにある理学研究科において、タンパク質に関する研究を行っており、特に化学反応を司る酵素タンパク質の研究に力を入れています。

タンパク質は、エネルギー変換、物質輸送、物質代謝などの生命活動を担っている分子で、形を巧みに変えながら働いています。これらのタンパク質が私たちの体の中で働く仕組みを理解するために、柳澤准教授は、本学が所有する世界有数の振動分光設備を利用して、タンパク質が働く様子を原子・電子レベルで調べています。

研究中の様子(振動分光装置に試料をセットする様子)

 

タンパク質とは

「タンパク質」という言葉を聞いて頭に思い浮かぶものとして、牛肉や豚肉、鶏肉といった食品の肉があります。私たち人間の体もタンパク質を多く含むことから、体をつくる材料としてタンパク質を摂り入れる必要があります。そのために例えば、私たち人間と同じ「動物」である牛や豚、鶏の肉などを摂取することで、動物性のタンパク質を取り入れています。そして、体内にあるタンパク質が食事で摂取したタンパク質をアミノ酸に分解して吸収し、新たなタンパク質をつくるという分解と合成を絶え間なく繰り返しています。また、タンパク質は、筋肉や骨、爪、髪の毛などの体の形をつくる「構造タンパク質」と、体の中で常に行われている化学反応を触媒する酵素タンパク質や、温度や光を感じるタンパク質、ヘモグロビンなどの、必要なものを必要なところへ運ぶ役割を持つタンパク質など、生命維持に必要な機能を持つ「機能タンパク質」に大きく分けられ、柳澤准教授は機能タンパク質を主な研究対象としています。

 

タンパク質の分類

 

光でタンパク質を見る

人間の肉眼では、0.1㎜程度の大きさまで認識できるといわれていますが、タンパク質は、ナノメートル単位の非常に小さなもので、そのサイズは数nm(ナノメートル)~数十nmといわれており、人間の肉眼はおろか、顕微鏡を使用しても識別して見ることはできないといいます。そこで、大型放射光施設「SPring-8」やX線自由電子レーザー施設「SACLA」を利用することによって、タンパク質の立体構造を調べることができると、柳澤准教授は話します。

※nmナノメートル:10⁻9 m(10のマイナス9乗メートル)=10億分の1m=0.000001mm

光の長さとタンパク質を見る手法

 

 

タンパク質の大きさと検出手法の特徴

 

「それこそX線を利用した『SPring-8やSACLAを使ったら、タンパク質がどんな構造をしているのかが分かるじゃない?それ以上、何を調べるの?』と思うかも知れませんが、X線構造解析での検出が難しい僅かな構造の違いを調べるために、光を使います。ここでいう光というのは、私たちの目で光として認識できる波長領域である可視光、つまり、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色の光を指します。この可視光をはじめ、可視光よりも少し波長の長い赤外光、少し波長が短い紫外線などの光を当てたときに分子の構造を見ることができるという手法があります」と柳澤准教授の解説は続きます。「タンパク質の分子は、原子と原子が結合してできており、分子は常に振動しています。その振動している分子に光を当てると、振動している分だけ、当てた光の波長とは異なる波長の光が出てきます。その当てた光とどれだけ異なる波長の光が出てきたのかを調べることで、分子の振動数を知る手法を『振動分光法』といいます。分子の構造が決まると、振動数が決まる。つまり、振動数が分かると、その分子がどんな構造をしているのかが分かるというカラクリになっています」。

 

振動分光法において、振動する分子に光を照射して検出する光

 

基礎研究から広がる可能性

柳澤准教授が取り組んでいる研究は、いわゆる基礎研究と呼ばれるもので「真理の探究」「基本原理の解明」「新たな知の発見、創出や蓄積」を目的とした研究活動です。「私たちの研究対象である酵素というタンパク質は、体の中で非常に重要な役割を果たしていますが、病気の原因として、タンパク質が上手く働かないなどといったことが起きてきます。そうすると、その原因が何かを調べることも1つの行き先ですが、働きが弱ってしまったその酵素を活性化するようなものがある場合に、どういう仕組みで活性化するのかというのを調べることができる。それが分かれば、創薬につながるのではないかと。創薬につなげてくださるのは共同研究をしている医師などの専門の方々で、私たちは、その方々が必要としている基礎の部分を、光を使って調べているということになります」と柳澤准教授は語ります。基礎研究は、まるで砂漠の中で丸い石ころを探すかのような、成果が出るまでに長時間を要し、成果が出るかどうかも分からない、また、研究している段階では出てきた成果がどのような形で活かされるのかも分からないと思われるかもしれません。しかし、生命を維持する上で重要なタンパク質や、珍しい機能を持つタンパク質についての基礎研究の積み重ねによって解明、発見、創出された成果が、別の研究の対象になったり、新たな製品を生み出すきっかけになるなどして、日々の暮らしや社会において新しい価値や変化をもたらす可能性を持っています。

振動分光装置の例

 

生命の不思議や神秘を学ぶということ

柳澤准教授が所属している理学研究科生命科学専攻では、生命の不思議や神秘といったものに興味を持つ学生が集い、数学、物理、化学、生物、地学を学びながら、日々研究に励んでいます。本学の理学部での学びについて柳澤准教授は、「高校時代に得意だった理科の科目が生物だけだったとしても、大学に入ってから生物学をさらに学んで理解を深めるには、物理や化学の知識も必要になります。そのため、物理は物理、化学は化学といった具合に分けるのではなく、幅広く科目を履修できるようになっています」と、自然現象を広く学び、自然科学の基礎が理解できるような教育を行っていることを紹介しました。

番組の最後に柳澤准教授は、理学部を志す受験生に向けて、「世界最先端の研究ができる大学ですので、ぜひ来ていただけたらと思います」と呼びかけました。

実験室で修士の学生とスペクトルについて話す様子

 

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