兵庫県大生の「くわしく教えて」に答える『県大Tips』。今回のテーマは理学部のインターンシップと就職活動です。
みなさんは、各キャンパスにあるキャリアセンターを訪れたことはありますか?就職活動がスタートしてから行くものだと思っている人が多いかもしれませんが、今学んでいることから就職先をどう見出すのか相談したり、インターンシップ先を探すポイントを聞けたりと、初歩的なことから相談に乗ってくれる場所なんです。今回は播磨理学キャンパスキャリアセンターの古川龍平さんに、キャンパスの立地も学習内容もちょっと特殊な理学部のインターンシップと就職活動の道のりについてお話を聞きました。
ゲスト:古川龍平さん(キャリアコーディネーター) / 聞き手:1460編集部
編集部:さっそくですが、今日は理学部のインターンシップと就職活動について色々とお聞きしたいと思います。播磨理学キャンパスキャリアセンターには、主にどのような悩みを持った学生が来られますか?
古川:一番多いのは、3年生のはじめに就職活動がスタートしたばかりの学生です。何から始めればいいのか迷っている人が多いですね。
編集部:理学部というと専門的な分野なので、入学時に進路がみえている方が多いのかと思っていました。
古川:理学部は学科や研究分野の名称から、職業をパッと想像しづらいと思います。ですから、入学してから自分の興味をさらに深めることで、専門性を活かした就職をする人もいれば、一見関連がなさそうには見えるけど研究成果を活かした仕事に就いたりと、就職先も人それぞれなんです。
例えば、生命科学科で同じ研究をしていたAさんは化粧品メーカーの商品開発部門で働いていますし、Bさんは科学捜査研究所で活躍していますよ。
編集部:想像以上に、いろんな職業に就かれているようですね。
古川:そうなんですよ。兵庫県立大学の学部ごとに就職先を分析してみると、他の学部ではおおよその傾向が見えてくるものなのですが、理学部の場合は“バラエティに富んだ”結果になります。これは、理学部の卒業生が広範囲で活躍している証ですよね。ちなみに兵庫県立大学の理学部では就職浪人(※1)がほとんどいないんですよ。
編集部:そうなんですか!それはきっと、学生の皆さんの頑張りとキャリアセンターのサポートあってこそですね。
※1:就職浪人とは、大学在学中の就職活動で内定を得られず、卒業後も就職活動を続けること
令和2年度卒業生の業種別就職情報(理学部)
編集部:インターンシップ先の選択肢についてはいかがでしょうか?
古川:傾向としては、製造業が多いですね。実はインターンシップについては、コロナの影響で現地に赴いて対面でインターンを行える企業がずいぶん減少して、近頃ようやく対面で行う企業が出てきたというところです。これから感染の状況とともに変動していくでしょうから、これといった傾向をお話するのが難しいところもありますが、現在はオンラインで行うインターンシップが増えています。
編集部:理学部からインターンシップへ行くとなると、実技を伴うことが多いと思うのですが、オンラインで実現できるものなのでしょうか?
古川:例えばオンラインでインターンシップを実施した塗料メーカーでは、自宅に教材が送られてきて、そのキットを使って調色をするような事例もありますが、ごく一部の例で、実技はオンラインではやはり難しいんですね。通常は、会社の説明会に近い内容をオンラインで聞くことが多いようです。
編集部:コロナ禍において、社内で行われるインターンシップはますます貴重な機会なんですね…。ちなみに平時ではどのようなインターンシップが行われていたのでしょうか?
古川:食品会社であれば品質管理の手法を経験してきたり、鉄鋼メーカーならば現場の仕事を見学し、実際の業務に携わり、最終日にその体験に関するプレゼンテーションを行ったりとさまざまです。期間はおおよそ1週間ほどの場合が多く、企業文化や職場の環境、仕事内容を体験しに行きます。会社の雰囲気を見たいという理由で、最近では対面でインターンシップに参加できる企業を選ぶ学生もいます。
編集部:インターンシップと就職活動について、大まかなスケジュールを知りたいのですが、インターンの募集はいつ頃から始まるのでしょうか?
古川:GW明けに募集が始まって、夏休みに長期のインターンシップに行くパターンと、夏休み明けに募集がスタートして秋・冬にインターンシップに行くパターンがあります。
編集部:キャリアセンターには、初動で悩んでいる人も多く相談に来るということでしたが、就職活動が進むにつれ、相談内容も変わっていくのでしょうか?
古川:業界を絞っている人ならエントリーシートの添削や面接の練習ですね。それから、研究概要のプレゼンテーションを企業から求められることもあり、その練習を行うこともあります。実際にプレゼンテーションを行う相手は、たいてい技術職の方達なので、基本知識はありますから、キャリアセンターではその内容を深く掘り下げてアドバイスをするというよりは、全体の流れが聞きやすいものであるか、素人が聞いてもある程度理解できる内容になっているのかなどを確認するのが私たちの役割です。
編集部:学生から理学にまつわる専門的なことを聞かれることもありますか?
古川:そうですね。しかし、私は理学のエキスパートではありませんから、いろんな資料を見たりして学んでいる部分もありますよ。客観的な視点を持って対話を重ねながら、その人が目指している傾向を見出していくイメージです。やはり話せば話すほど、相談に来た人が抱えている課題の本質が見えてくるものなんです。
編集部:インターンシップや就職活動を進めるためには、古川さんとのやりとりが欠かせませんね!
古川:すべての学生がキャリアセンターに来るわけではありませんが、小規模なキャンパスなので、就職希望者の就活事情は把握しています。また、私との面談というかたちでなくても、昼休みに立ち寄って30分ほど話をしたり、時には立ち話で問題が解決することもありますよ。ちなみに、原則は1時間の予約制になっています。
編集部:気軽に立ち寄ってOKなんですね。学生にとってはハードルが低いですね。
古川:もちろんOKです。キャリアセンターでは、コーディネーターの古川と専任の職員の2人で運営していますから、私が不在の場合でも、もう一人の職員が対応してくれますし、必要に応じてその場で次の予約を入れることもできます。ためらっていてまだ来たことがない人も、どうぞ気軽にのぞいてみてください。
編集部:将来のことを決めきれていない学生には、古川さんはどんなアドバイスをされますか?
古川:先入観を持たずに、気になる企業があれば説明会などにどんどん参加して、自分がどのような分野に興味があるのか考えるきっかけにしてほしいんです。ですから、「自分の可能性を自分で狭めないこと!」とはよく言っています。例えば、興味のある企業にインターンに行けそうだけれど、その一歩を踏み出せないなんてこともあるようです。
編集部:それはなぜでしょうか?
古川:その企業で取り扱っている商品が自分の希望と違うということでした。仮に目指していた分野と異なる企業であったとしても、今は外から見てわかっていないだけで、入社してみるとその学生のやりたい仕事があるかもしれないじゃないですか。インターンシップにエントリーしたということは、おそらく何か興味を持つフックがあったはずです。チャンスはどこにあるのかわかりません。だから、少しでも希望と近いのならチャレンジしてみるようにアドバイスしています。
編集部:実際にインターンシップに行くのと行かないのとでは、企業の見え方がやはり変わってくるものなのでしょうか?
古川:そうですね。その企業に行きたいという決意を新たにする人もいれば、イメージとは違ったという人もいます。傾向としては、2週間以上の長期インターンシップに行った人はその企業へのエントリーを決めることが多いように思います。2週間もあれば、日常業務を十分に体験できますから、就職後どのように働くのか想像しやすいんでしょうね。
編集部:ちなみに理系のインターンシップは、就職活動においてどのような位置付けなのでしょうか?
古川:原則は、インターンシップの参加と選考は別ものですが、コロナ禍においては企業も学生と会える機会が減ったため、インターンシップに参加しておいた方が有利な傾向ではあると思います。また、インターンシップの選考に落ちてしまっても、早期選考の案内通知が届いたという話もよく聞きますから、気になる企業にはとにかくエントリーしてみることです。
編集部:コロナ禍ではイレギュラーなことが増える一方で、オンライン面接が一般化するなどインターンシップや就職活動のありようが変わってきていますね。キャリアカウンセリングのプロから見て、リモートにおける就活で心がけておくべきポイントはどんなところでしょうか?
古川:例えば、面接であれば“目線”です。リアルな面接会場であれば、面接官との距離が2mほどあるので多少目線が動いても気にならないのですが、オンラインの場合はカメラ越しではあるものの5〜60センチの距離で会話することになります。ここまで近いと、左右に動く目線が気になるんですね。緊張するとどうしても目はキョロキョロと動いてしまうものなのですが、面接官にカンニングペーパーを見ていると誤解を与えてしまうこともあるようなので、相手の目を見て話すようにアドバイスはしています。
編集部:思わぬデメリットがあるものですね。
古川:でも、メリットもあるんですよ。例えば、声の小さい方は面接会場だと面接官に声が届きにくくてやや不利なこともあるのですが、オンラインであればマイクでしっかり伝えることができて、欠点をカバーしてくれるという側面もあります。
編集部:キャリアセンターに相談に来た学生とのやりとりで、印象に残っているエピソードはありますか?
古川:中学生の頃から憧れていた企業の技術職に受かった学生がいました。とても倍率の高い企業です。何度か面接の練習に来ていたんですが、最終面接の前日に、緊張でかちんこちんになっていて。あの時は、緊張をほぐすために叱ったんです。数えきれないほど面接をしてきましたが、叱ったのは後にも先にもその時だけですね。
編集部:そうだったのですか!
古川:けれど、そこからつきものがとれたみたいに滑らかに話し出して、翌日の面接もうまくいったようで、無事合格しました。内定が出た時は、不在時に内定報告に来てくれたのですが、直接会って報告をしたいとの伝言を残してくれて。その後、直接報告を聞くことができて嬉しかったですよ。その企業のテレビCMを見るたびに、「元気でやっているのかなぁ」と思い出します。
編集部:一人ひとりに寄り添い、情報を整理して、迷いの突破口を見出し、時には叱咤激励しながら…古川さんは、理学部の学生にとって就職活動には欠かせないパートナーですね。
古川:私はただお話を聞いて応えているだけですが、播磨理学キャンパスは人数が少ないからこそ、オーダーメイドの対応ができるのだと思います。悩みも、やりたいこともそれぞれ違いますから、キャリア相談には個別の対応が求められますよね。
編集部:最後に、学生の皆さんにメッセージをお願いします。
古川:1〜2年生は、とにかく勉学に励んでください。そして、もし余裕があれば気になる企業について調べてみて、何を作っている企業なのかくらいは知っておくといいですね。
就職活動の極意はありませんが、できるだけ早くスタートして、とにかく歩みを止めないことが重要です。就職活動は長いです。365日気を張った状態では生きていけませんし、普通に暮らしていても、生活や気持ちに波はあるものです。途中でちょっと気持ちが落ちてしまってもいいんですよ。気分転換や迷いの解消のためにキャリアセンターを活用してくれてもかまいません。とにかくモチベーションを継続してください。歩みを進めていけば、必ず自分のゴールに辿り着きますから。
今回のゲスト
播磨理学キャンパスキャリアセンター
キャリアコーディネーター 古川龍平さん
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