7月26日(土)・27日(日)の2日間にわたり、滋賀県彦根市の琵琶湖東岸・松原湖岸で読売テレビ放送株式会社主催「Iwataniスペシャル 第47回鳥人間コンテスト2025(2025 JAPAN INTERNATIONAL BIRDMAN RALLY)」が行われ、本学の鳥人間部wishbirdsが27日(日)に開催された滑空機部門に出場しました。

いよいよ琵琶湖へ
鳥人間部wishbirdsの38名の学生たちは、大会前日の7月25日(金)に現地入りする同部の代表・空力設計・パイロットの後藤圭吾さん(工学部機械材料工学科機械工学コース3年生)と大会当日に発進役を務めるメンバーからなる「チームKilo」、大会前日から彦根で宿泊し、大会1日目の朝一から会場入りする「チームAlpha」、大会1日目の始発の電車で現地に向かう「チームBravo」、大会1日目の昼頃に会場入りする「チームCharlie」、大会2日目の朝に会場入りする「チームDelta」の5つのチームに分かれて現地入りしました。
機体の運搬

機体は分解した状態でトラックに積み込み、現地へ運搬。設計段階で胴体・翼・コックピット等を分解して現地で組み上げられるように設計されている。

大会1日目(7月26日(土))
鳥人間コンテストには、一切動力を持たず、グライダーのように風の力を利用して飛行する機体で距離を競う「滑空機部門」と、パイロットが自転車のようにペダルを漕いでプロペラを回し、その推進力によって飛行する機体で距離を競う「人力プロペラ機部門」があり、大会1日目の7月26日(土)の午前6時30分から人力プロペラ機部門が行われました。
同部の学生たちは、機体を積んだトラックが到着するまでは人力プロペラ機部門のフライトを観戦。11時頃にトラックが会場に到着次第、資材と機体の積み下ろしに取り掛かり、その後、テント設営、発電機の準備、機体の組み上げを行いました。そして、15時頃に審判団による機体チェックが行われ、無事に合格することができました。
資材・機材の積み下ろし

機体の組み上げ


彦根市では、大会3日間とも日中最高気温35℃以上を記録。大会のルールで熱中症対策のために全員帽子の着用とタオルの常備が義務付けられていた。学生たちは水分補給をしながら作業を進めた。

機体についても、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の桁で構成されている胴体部分が黒色のため、日光にさらされたことで、素手で保持できないほど熱くなった。コックピット内部も非常に高温になるため、オンボードカメラ保護のためにキャノピー部(操縦席を覆う透明部分)に銀シートを被せた。
その後、学生たちは翌日の流れ等を確認し、夜間に機体を警備する班と、宿泊施設にて宿泊する班の2つに分かれ、それぞれ翌日のフライトに備えました。
大会2日目(7月27日(日)滑空機部門当日)
滑空機部門当日の7月27日(日)、学生たちは全員午前3時30分に起床、午前4時30分に駐機場に集合し、フライトに向けて最終組み上げを行いました。また、後藤さんはパイロットメディカルチェックを受け、特に問題なくクリアしました。

滑空機部門当日の朝、機体『GO TO GO』(全長約6m、全幅24m)とともに。
また、早朝には同部のOB・OGをはじめ、同部の学生たちのご家族、工学部の学生・教職員からなる約20名の応援団が兵庫から到着し、同部のフライトまでの動向を見守りました。


機体は、駐機場からプラットホームまでwishbirdsの皆で担いで運搬しました。


機体駐留域からプラットホームまで、機体を担いで運搬するにはかなりの距離がある。同部では、キャスター付きの台を製作して現地に持っていき、運搬中に止まった地点でコックピット部分を台に置く形で運搬したが、キャスター部分が砂に埋まる、駐機場を区切るロープにつまずいて転ぶメンバーがいるなどした。加えて、フライト待ちで停止している際の保持が特に大変だったと後藤さんは話す。
滑空機部門には17チームが出場、同部は8番目にフライトし、怪我やトラブル等なく無事にフライトを終えることができました。結果については、2025年9月3日(水)午後7時から読売テレビ・日本テレビ系全国ネットで放送される『Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2025』をぜひご覧ください。


フライト後、同部の学生たちや応援団によるパイロットの出迎え

フライト後の機体回収

着水後の機体と機体の破片は、大会事務局が中心となって回収しており、出場チームも機体を持ち帰ったり、湖岸に流れ着いた破片を回収するなどしている。
想定外のことの連続
後藤さんは、精魂込めてつくり上げてきた機体『GO TO GO』で、大会当日にプラットホームから飛び立つパイロットでもあるため、パイロットとしての準備も行ってきました。「トレーニングについては、7月上旬に1度、ハンググライダーによる滑空練習を行いました。その他、コックピットフレームの複製を作製し、乗り込み練習を1人でしました。発進練習は、鉄パイプをT字型に組んだものを使い、姫路工学キャンパスの学生駐車場でパイロットとフライト時の発進役(右翼持ち・左翼持ち・テール持ち)の4人で息を合わせる練習を複数回行いました。また、一般的な鳥人間パイロットは、体重制限をするものですが、設計体重50kgのところ、3月時点で49kgだったので、体重に関しては特に何も意識せず好きな物ばかり食べていました。代表職のストレスによるものか分かりませんが、大会4日前時点で48kgでした」。
※発進…鳥人間コンテストでは、パイロットは原則としてプラットホームから自力による助走により水上に発進することとなっており、発進時の機体保持者は最大3名まで認められている。

7月13日(日)に姫路工学キャンパス内で運用確認と滑空試験を実施
準備を重ねてきた後藤さんは発進役の3人とともに、他のメンバーよりもひと足早く7月25日(金)に現地入りし、大会事務局が実施する安全講習会を受講したり、物資調達をするなどしました。「琵琶湖に到着したときは『ついに来たか』と感じました。到着時点ですでに人力プロペラ機部門のフライトが開始していたので、会場の雰囲気を身に染みて感じました。壮観でした」。
翌日の7月26日(土)に姫路工学キャンパスから資材と機体が届き、以降、フライト本番に向けた最終調整に邁進しました。現地での機体の組み上げについて後藤さんは、「想定外のことが多すぎて非常に困惑しました。まず、トラックの搬入場所への進入が予定より大幅に遅れ、積み下ろし・テント設営・組み上げを開始できたのが11時過ぎからでした。また、与えられた駐機スペースの半分以上が『砂浜の傾斜』になっており、機体の組み上げが可能な水平なスペースが非常に狭かったです」と話します。
さらに、コンテスト出場決定時から不安感を抱いていた機体チェックについては「機体の設計者であり、コックピット内の保護材を取り付けたのは私なので大変ドキドキしましたが、垂直尾翼マウントのネジの保護や、コックピット内の一部保護について指示があったものの、概ねスムーズに、何とか一発で合格することができました。2つ目のステッカー(機体チェック合格ステッカー)を受け取ったときは心から嬉しかったです」と振り返ります。
※ステッカー…鳥人間コンテストでは、「設計図」「機体チェック」「メディカルチェック」の3枚の合格ステッカーが貼られた機体のみが大会に参加できる。

丁寧・慎重ながらも急ピッチで作業を進める学生たち
人生の中で最も頭をフル回転させた
目の前にある「すべきこと」に1つひとつ向き合い、取り組みつつも、刻一刻と「そのとき」は近づいていました。「土曜日に関してはあまりに多忙で、とにかく目の前の機体チェックのことだけに注力していました。機体チェック後も日曜日のことはほとんど意識せず、ただ茫然と夕焼けに輝く琵琶湖を眺めていました。宿泊場所に戻ってフライト時に着用するヘルメットなどを用意しているときに初めて緊張を感じました。夜は緊張からか午前3時には目が覚め、寝付けなくなり、そのまま駐機場に戻りました」。

大会1日目夕方の琵琶湖
そして、迎えた当日、後藤さんは大会開始前にパイロットメディカルチェックを受け、問題なくクリアし、3つ目のステッカー(メディカルチェック合格ステッカー)を受け取り、あとは機体を駐機場からプラットホームに運搬し、飛行するのみとなりました。
パイロットが飛び立つプラットホームは、水面からの高さ10m、助走路10mで、水深3.5~4mの場所に位置しています。「プラットホームに続く桟橋に上がる直前に電装部分の確認等を行っていたので、プラットホーム上でのトラブルは特にありませんでした。想定よりも早く準備が進んだので、プラットホーム上での準備時間は他チームに比べて短かったのではないかと思います」。

フライト待ちの様子
「プラットホームに上がってからは『いよいよか』と思い、プラットホームから琵琶湖を眺め、感動しました。あの景色は一生忘れられないと思います。プラットホームが高いことによる恐怖心などは全くありませんでした。それよりも発進時に『飛行中にどういう操作を行うか』『垂直直下だけは避けなければならない』というプレッシャーを強く感じ、不安感の方が大きかったです。しかし、プラットホーム上は向かい風正面3.5m/sという滑空機としては最高のコンディションでした」。

フライトを見守る応援団
機体の発進は、テイクオフディレクターの方の合図によって行うことになっています。「ゲートオープンの合図がかかり、すぐにコールしテイクオフしました。あのテイクオフの瞬間から着水まで、人生の中で最も頭をフル回転させました。テレビ放送前ですので詳細は語れませんが、加速時に機体が浮き、機首上げに成功しただけで嬉しかったです。それ以降は着水までほとんど無心で操作しました」と後藤さんは語ります。
着水後、大会事務局のボートに引き上げられた際の後藤さんの表情には、晴れ晴れとしたようなものがありました。「ボートに引き上げられた後、プラットホーム上の仲間たちに向けて大声で『ありがとう!!』と言いました。後ほど聞くと全然聞こえていなかったそうです。また、自分が設計した機体が『滑空機』として飛行し、体重移動による重心操作が効いたことが何よりも嬉しかったですし、過去2回の出場時は、ほとんど垂直落下のような形だったので、それを回避できただけでも私にとっては成功でした。過去のほとんどを失い、『事実上の初出場チーム』であるwishbirdsとしては悪くない結果だと思っています。惜しいところはありましたが、後輩たちが超えていける良い壁になれたかなと思います。チームの今後に期待しています」と説明しました。

フライト後の後藤さん
今回、兵庫から琵琶湖に駆けつけた応援団の中には、現在4年生で1年上の同部の先輩の姿がありました。「フライト後、応援団の方々からは『よく頑張った』『感動をありがとう』などとお声がけいただき、拍手を受けました。その応援団の列の中から、出場が叶わなかった1つ上の代の代表と、廃部の危機の最中チーム存続を決定したOBの二人が出てきて抱き合ったのを覚えています。あの瞬間は涙が止まりませんでした。自分たちの願いが叶ったのみならず、先輩方の悲願をも達成したことを実感しました」。

良いモノをつくるために
今回の鳥人間コンテスト出場に関する一連の取組から得た学びや教訓等について後藤さんは「チームをまとめる大変さ、チーム内での情報共有・他チームとの情報交換の重要性、信頼を損なわないための行動、あらゆることを想定した行動計画など、得たものは大変多かったです。特に、メンバーとの意見衝突から1つの正解を導くという経験がとても大きな学びになったと思います。機体の設計から製作、図面の作製、各部構造図の作製、周辺治具の製作など、本当にさまざまな面でメンバーと協力しての活動がありましたが、その数だけ意見衝突がありました。自分の意見が正しいとお互い思っているからこそ意見衝突が起こるわけですが、共通の目的は『良いモノを作ること』です。私はその視点を決して忘れず、相手の意見の根拠は何か、自分の意見の問題点は何か、運用のみならず、製作コストや破損したときの被害まで考えて結論を出すようにしました。自分の意見を折ることも何度もありました。しかし、それらの意見衝突の末に決定した結論のほとんどは、試験や現地での活動で成功を収めることができたと思っています」と語ります。

同部の今後の展望については「現2年生の26執行代の部員が極端に少ないので、次期主力世代は現1年生の27執行代になる見込みです。27代が育つまで私たち25代はwishbirdsに残り、27代に引継ぎと技術継承をし、技術開発を続けていきます。27代がwishbirdsを牽引していけると判断したときが、私たち25代の『本当の引退』になると思います。続けて2026年度出場を目指すか、あるいは2027年を目指すかは今後の活動次第になりますが、必ずや次の出場に結び付けます」と後藤さんは力強く話します。

最後に、後藤さんは同部を応援してくださった方々に向けて、「wishbirdsはOB・OGの方々をはじめ、他の鳥人間チームの方、教職員の方、学内の学生の方、協賛いただいた企業様など、本当に多くの方のご協力のもと、鳥人間コンテスト2025に出場し結果を残すことができました。技術の多くが失われ、事実上の初出場チームとなった私たちwishbirdsにとって、皆様のご協力なしではここまで来ることはできませんでした。兵庫県立大学鳥人間部wishbirds11期(25代)を代表して心より感謝申し上げます。しかし、wishbirdsはここで終わりではありません。私たち25代のフライトにより、wishbirdsはコロナ禍による廃部の危機、技術断絶を乗り越え、フライトに耐える機体製作が可能になったことを証明しました。ここからがwishbirdsの新たなスタートになります。今後とも、兵庫県立大学鳥人間部wishbirdsを応援していただけますと幸いです」と述べました。

8月11日(月・祝)・12日(火)に実施されたオープンキャンパスに出展した際の後藤さん。実際に大会で使用した機体のコックピットフレームとヘルメットとともに。

兵庫県立大学鳥人間部wishbirdsは次の目標に向けて歩み始めています。
同部の出場にあたり、多くの温かなご支援・応援をいただき、ありがとうございました。大会当日の模様は、9月3日(水)午後7時から読売テレビ・日本テレビ系全国ネットで放送される予定です。
・兵庫県立大学鳥人間部-wishbirds-公式サイト
・兵庫県立大学鳥人間部wishbirds X
・兵庫県立大学 鳥人間部wishbirds Instagram
鳥人間部wishbirdsの活動の内容や鳥人間コンテスト出場までのいきさつ等について取り上げた記事を、下記のリンク先からご覧いただけます。
・ケンダイツウシン「琵琶湖の空を飛ぶことで、『希望の鳥』を未来へ届けたい」兵庫県立大学鳥人間部wishbirdsが「第47回鳥人間コンテスト2025」に出場します
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