フィールドワークで訪れる六甲山系
本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「PUSH!」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。
12月7日(火曜日)放送の「PUSH!」「こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、環境人間学部 大橋瑞江教授です。
今回のテーマは「森のめぐみを研究する」。
大橋教授の専門は、森林生態学です。
森林には、炭素の固定化、土砂災害の防止、水質の調整機能など様々な機能があります。
大橋教授は、このような森林の機能がどのように生じているのかを、昆虫や微生物などの活動が生み出す森林内の物質循環と結び付けて研究をしています。
森林の土の中での生物の活動(例えば、二酸化炭素を発生させる微生物の呼吸活動、動物や昆虫の移動による物質の循環、樹木の根が果す役割など)を正確に観測することは難しく、現在でも解明されていなことが沢山あります。
しかし、研究が進むにつれ、生物の活動がもたらす森林地下部での物質循環が、森林の生態系のバランスを維持するためにとても重要であることが明らかになってきており、大橋教授の研究テーマは注目されています。
フィンランドの風景
今でこそ環境問題には多くの人が関心を寄せていますが、大橋教授が大学進学時に進路を決めた当時は、今ほど注目されてはいませんでした。大橋教授は大学入学当時から森林と環境問題についての研究を志し、後にフィンランドで4年間研究員として研究に携わりました。フィンランドは「森と湖の国」と呼ばれることからも分かるように、自然豊かで人々の生活と森が密接に関わっています。日本も国土の4分の3が山林と言われていますが、居住地と森は別の場所にあり、山に登らないと森に行くことができません。フィンランドは国土が平坦で「森の中に人が住んでいる」イメージだということです。国が積極的に調査・維持管理に携わることにより、森との共存が可能になっています。
大橋教授が設計したアリの巣から出る二酸化炭素を計測する装置。
フィンランドのアリの巣は世界一大きいと言われ、直径が1.5mになるものもある
世界的にも環境問題への関心が高まる中で、若い人達も森の大切さを理解してきていると大橋教授は感じているそうです。温暖化防止のための炭素固定、緑のダムによる土砂災害の防止、ハイキングなどのレクリエーションのほか、森は様々なめぐみを私たちに与えてくれています。しかし、環境汚染や気候変動に加え里山の放置、人工林・自然林の荒廃などが進むと、「森のめぐみ」の恩恵が受けられなくなってしまいます。
「身近に課題があることを意識し、将来的にどうしていくべきか、若い人たちと一緒に考えていきたい」と大橋教授は言います。
人材の育成、制度の拡充など、森を守っていくために、私たちができることはまだまだありそうです。身近な六甲山や姫路の里山から、遠く世界の森で研究を続けてきた大橋教授のお話を聞いて、改めて森のめぐみに感謝の気持ちを抱きました。
姫路の里山でのフィールドワークの様子
放送内容は下記関連リンクからお聞きいただけます。
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