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「人々と共にあるクリティカルケア看護」 看護学部 大江 理英准教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、毎月1回本学の教員がラジオ関西番組に出演して、先進的・特徴的な活動をパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

7月21日(日)放送の「谷五郎の笑って暮らそう こちら兵庫県立大学です」に登場するのは、看護学部の大江 理英(おおえ りえ)准教授です。

 

今回のテーマは、「人々と共にあるクリティカルケア看護」
大江准教授の専門は、「クリティカルケア看護」です。

 

生命危機状態にある患者と家族へのケア-クリティカルケア看護

大江准教授が専門とするクリティカルケア看護は、急病や突然の大怪我によって急激に生命の危機状態に陥った患者とその家族を対象にしたもので、1969年にアメリカで誕生し、日本ではここ30~40年の間で医学の進歩とともに急速に発展してきました。急激に変化する身体と心理、それらの状態に必要な治療を理解した上で、高い倫理観に基づく高度な臨床判断と看護技術が求められます。そこで本学の看護学部では、1年生に対しては、正常な人間の身体の仕組みとその機能について学ぶ講義「形態機能学Ⅰ」を開講し、2年生に対しては「看護病態学演習」において、痰などの分泌物を取り除く気管内吸引や、健康診断でも行われる12誘導心電図、心肺蘇生など、呼吸器・循環器疾患を持つ患者に行う基礎的な看護技術を指導しています。さらに4年生では「統合看護実習」において、救命救急センターや集中治療室で実際にクリティカルケアを受けている患者とその家族の方への看護実習を行うなど、段階的にクリティカルケア看護を学ぶことのできるカリキュラムを組んでいます。

※12誘導心電図…身体上の特定の箇所に電極を10箇所貼り付けて心臓に流れる電流を12方向から記録するもの。

演習風景

 

また、クリティカルケア看護は、生命の危機状態にある患者に専門性の高い看護を提供するだけでなく、苦痛を和らげ、その人らしさを尊重することを大切にしている看護であると大江准教授は話します。「私は30年ほど前に看護師になりましたが、ちょうど阪神・淡路大震災が起こった頃は大阪市内の病院の救命救急センターで働いていました。震災時は、神戸からヘリコプターで運ばれてくる患者さんを待ち、運ばれてこられた方をICUやその後の一般病棟でケアをしながら日々を過ごしていました。看護師というと、一般的には医師の指示を聞いて、投薬したり、体を拭いたりするというイメージをお持ちの方が多いかと思います。私は看護師として、そうした痛みを和らげながら患者さんの気持ちを聞いたり、家族の方の苦しみを和らげるような関わりをしながらケアをしていくところにとてもやりがいを感じました。『この職を一生やっていこう』と思い、30年経った現在も続けています」。

 

患者さんにとって何が一番大事かを考えながらケアを提供-急性・重症患者看護専門看護師

救命救急センターやICUなどで臨床経験を積んできた大江准教授は「急性・重症患者看護専門看護師」という公益社団法人日本看護協会が認定している資格を保有しています。この資格は、実務経験が通算5年以上(うち3年間はクリティカルケア看護領域での経験があること)あり、看護系大学院博士前期課程(修士)を修了し、一般社団法人日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位を取得した後に、公益社団法人日本看護協会が実施する専門看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。この資格を持っている方は全国で400人程度であるといい、まだまだ少ないといいます。こうした状況の中、自身も約20年にわたって急性・重症患者看護専門看護師として活動してきた大江准教授は、急性・重症患者看護専門看護師を増やすべく、2021年10月に本学看護学部准教授として着任し、2023年4月に看護学研究科博士前期課程にクリティカルケア看護学専門領域を開設。臨床に貢献できるクリティカルケア看護領域の研究者育成と、ケアシステムの構築に強い急性・重症患者専門看護師の育成を行っています。なお、本研究科では、看護師として勤務しながらキャリアアップを図れるよう長期履修が可能となっています。

 

目の前で倒れた人を助ける『コール&プッシュ』

クリティカルケア看護は、救命救急センターやICU(集中治療室)、CCU(心血管疾患集中治療室)などの場で行われていますが、生命が危機的状態に陥るのは病院内に限らず、家庭内やスポーツの場面など、様々な場所でいつ、誰の身に起こってもおかしくありません。日本では、心臓病が原因で突然心臓が止まってしまう人が毎日約200人いるといわれています。心停止になった人に胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行い、AED(自動体外式除細動器)を使って人命救助をした人に対して消防署等が表彰したという報道を目にすることがありますが、突然心臓が止まってしまった人を救うには、一刻も早く心肺蘇生を行うことが重要であるといいます。こうしたことから大江准教授は、中学校に勤務する養護教諭の急変対応能力の向上と、中学校等の生徒向け心肺蘇生教育「コール&プッシュ」の実施を促すことを目指した養護教諭支援プログラムの開発や、一般市民等を対象に「コール&プッシュ」の公開講座を実施するなど、助けることのできる命を救うための活動も行っています。

心肺蘇生講習の様子

 

大学教育と臨床現場と

さらに、大江准教授は本学で教育・研究活動を行いながら、現在も臨床現場で急性・重症患者看護専門看護師として看護実践をしています。その中で、がん手術を受ける患者で身体・精神・社会的に解決困難な課題を抱えている方を対象とした周術期チームを院内に立ち上げ、手術を受ける前の準備から、手術後のリハビリテーション、退院後の社会復帰までの一連の過程で支援する活動に力を入れています。「周術期チームは、患者さんの術前の意思決定からICUや病棟での術後生活、退院支援まで関わります。例えば、高齢で合併症を持つ患者さんに対しては、トータルケアとして『生きて』『食べて』『帰る』ことができるように、麻酔科・外科・口腔外科・緩和ケアの医師、急性・重症患者看護専門看護師、認定看護師、病棟や外来の看護師、理学療法士、歯科衛生士、事務などが協働して患者さんを支えています。患者さんのこれまでの生活や今後の生きる希望を受け止め、様々な支援を行いながら、その人らしい人生が歩めるように支援しています。患者さんが病にありながらも大切な人生を自身の物語として自らの健康を取り戻すために口腔ケアやリハビリに取り組めるように関わり、支えることで、在院日数の短縮や合併症の予防に取り組んでいます」と大江准教授は取組を紹介しました。

社会医療法人大阪国際メディカル&サイエンスセンター 大阪けいさつ病院での専門看護師としての周術期チーム活動

 

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