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「慢性疾患における増悪予防の大切さ」 看護学部 森 菊子 教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

8月3日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、看護学部の森 菊子(もり きくこ)教授です。

 

今回のテーマは、「慢性疾患における増悪予防の大切さ」

森教授の専門は、「慢性閉塞性肺疾患患者における増悪予防」です。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

森教授は、慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)という呼吸器疾患の増悪予防に関する研究をしています。テレビなどのメディアでも取り上げられることのある病気ですが、慢性閉塞性肺疾患とは、これまで慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。主な原因は、喫煙と言われており、たばこの煙を吸い込むことで、煙に含まれる有害物質によって気管支が炎症を起こし、咳や痰が多くなります。また、気管支が炎症を起こして細くなることによって、空気が通りにくくなってしまいます。そして、気管支の奥にある肺胞(※)が破壊されて、体内に酸素を上手く取り入れることが難しくなるという病気です。長年の喫煙習慣によって発症するケースが多いことから、肺の生活習慣病ともいわれています。

「慢性閉塞性肺疾患における増悪予防のために」より

 

森教授は、この慢性閉塞性肺疾患の患者さんが風邪などによる増悪予防のために、自分の体に起きていることに気づき、早期に対処できることをめざしたセルフモニタリング促進プログラムの開発を行ってきました。現在は、高二酸化炭素血症(※)の予防も含めたセルフマネジメントプログラムを検討し、このプログラムの実践活用をめざして研究を進めています。

※肺胞…気管支の先端に多数ついている小さな袋状のもので、呼吸によって酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換)を行っている

※高二酸化炭素血症…体の組織にできた二酸化炭素を十分に体外に排出できない状態のこと

体調管理についての説明

 

日頃から予防することが大切

今回のテーマの中にも出てくる「増悪」という言葉は、「悪が増す」と書いて「ぞうあく」と呼びます。増悪とは、医学用語で、呼吸器疾患の患者さんが風邪をひいたことをきっかけに呼吸器疾患の症状が悪化してしまい、通常の治療では間に合わず、新たな治療を施す必要が生じてしまうような状態のことをいいます。呼吸器疾患をお持ちの方の場合、風邪をひいて「少し様子を見てみよう」とその時点で病院を受診するなどの対処を行わなかった結果、状態が悪化して肺炎となり、重篤な状態になっていくことがあるといいます。また、心疾患をお持ちの方も、やはり風邪をひくことで心臓に負担がかかって心不全が増悪すると森教授はいいます。

現在は、新型コロナウイルス感染症の影響で1年中マスク、手洗いという感染予防をしていますが、呼吸器疾患をお持ちの方であれば、特に風邪をひきやすい冬場において手洗いやマスクを着用し感染予防をすることが大切で、心疾患をお持ちの方であれば、普段から塩分の取り過ぎに気を付けるなど、増悪を起こさないための予防をしていくことが大切なのだそうです。

増悪予防のためのパンフレット・わたしの健康日誌

森菊子・城宝環・木村ちぐさ「慢性閉塞性肺疾患における増悪予防のために」

 

自分の体の変化に気づく

一度、慢性閉塞性肺疾患を発症すると、完治するということはなく、治療やセルフケアによって症状を緩和する、あるいは、機能低下の下降線を緩やかにしていくことになるといいます。慢性閉塞性肺疾患は、特に息を吐くことが難しくなる病気で、例えば、ストローで息を吐くかのように、「細いところで吸ったものを吐いていく」という息苦しさを感じる状態になるそうです。たばこの影響によって肺の機能が低下したり、空気のガス交換が上手くできなくなっていくという病気であることから、「病気にならないために、たばこをやめたり、病気になってしまったら、その病気になったということの中で、さらに悪化しないように自分でセルフケアをしていくことが大事」と森教授は話します。

慢性閉塞性肺疾患の症状としては、最初に息切れを感じることが多いそうです。階段の昇降時や、同じ年齢の人と一緒に歩いているときに同じスピードで歩けないといった場面で症状に気づくことがあるそうですが、中高年層の発症が多いこともあり、「年齢のせいでは」と考え、病院の受診につながらない人も多いといいます。慢性閉塞性肺疾患の主な症状には、咳や痰が長く続くというものもありますが、森教授は、「呼吸器の病気もいろいろあり、今は昔の病気と思われている結核にかかってしまっていることもあり得るので、まずは、呼吸器内科や内科を専門にしている自宅の近くにある病院を受診して、何らかの検査をしていただくのが大事と思う」と、自身の症状やサインに気づいたときに早い段階で病院を受診することを呼びかけました。

現場看護師との事例検討会

 

体からのサインに対処する

番組内で、コロナ禍においてマスクの着用が日常的になっている昨今、マスク着用時に口呼吸になっている方がいらっしゃるという話題が出ました。森教授は、「鼻には、鼻毛によってホコリを取り除いたり、毛細血管によって空気を加温したりする機能がある。例えば、今はマスクを着用しているけれども、鼻で呼吸している場合は、いろいろなホコリやウイルスなどが、鼻を通ることで、鼻毛で取り除かれたり、温められて不活性化したりする。感染予防という点でも防御機構が働くので、鼻を通して呼吸をした方が、呼吸のためには良いというところがある。口呼吸だと、口からそのまま肺に空気が入ってしまうことがある」と話しました。

番組の最後に森教授は、「年齢のせいだとか、病院に行くのが嫌だとか、病院に行ったら何か見つかるかも知れない、肺がんかも知れないという思いをお持ちの方もいらっしゃる。自身の症状に気づいていても病院に行かれない理由は様々ある。でも、やっぱり自分が一番分かっていて、何らか考えておられると思う。今回の増悪ということでは、風邪をきっかけに状態が悪くなっていくということがあるので、症状に早めに気づいて医療者に相談するなど、自分の体の状態に合わせて早めに対処していくということが大事だと思う。そして、体からのサインや変化に気づくためには、体調が良いときの状態を予め知っておくことが必要」と改めて呼びかけました。

「わたしの健康日誌」の一部

 

 

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