記事検索

  • 学部・組織・所属

  • 記事のテーマ

  • 記事のタイプ

「人を支える、妊産婦を支える」 看護学部  岡邑 和子 講師

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

12月6日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、看護学部の岡邑 和子(おかむら かずこ)講師です。

 

今回のテーマは、「人を支える、妊産婦を支える」

岡邑講師の専門は、「切迫早産と診断された妊婦の方への看護ケア」です。

 

人の誕生と女性の生涯にわたる健康を支援する専門職を養成

-助産師養成課程

岡邑講師は、進学や育児休暇などを挟みながら、看護師及び助産師として25年の臨床経験を経て、2015年から看護学部生涯広域健康看護講座Ⅱ 助産師養成課程で教育活動をしています。

本学看護学部では、助産師国家試験の受験資格を取得することのできる助産師養成課程(定員20名、選択制)を設置しています。これまでに多くの助産師を輩出し、兵庫県内をはじめ、全国各地の医療機関などで活躍しています。助産師養成課程では、4年生から助産師教育の中心となる講義や学内演習を履修し、夏から病院実習が始まります。実習では分娩介助を10例程度扱い、正常な経過をたどる妊婦・産婦・新生児に対する看護ケア能力を養います。実習の際は、岡邑講師も実習先の病院に赴き、学生に助言・指導しています。

明石看護キャンパス

 

1つひとつの出会いときっかけで今がある

岡邑講師が看護師を志すようになったきっかけは、父親からのアドバイスだったといいます。「特に高校入学時までは、看護の道に進むとは全く考えておらず、それこそ中学生までは『デザイナーになりたいな』と全然違うことを考えていました。高校2年生の頃に父に『きちんと地に足をつけて、自分できちんと、女性が1人できちっとやっていける仕事をきちんと探さないといけない』と言われて、そこから看護師を目指す道が浮上してきました」と岡邑講師は振り返ります。看護師を志すようになった岡邑講師は、3年制の短期大学の看護学科に進学、看護師国家試験に合格して看護師免許を取得し、地元の病院で看護師として働き始めました。そこで配属された部署は産婦人科でした。「看護の道に入ってから、慢性病の方などの成人の方を支援したいと思っていましたが、配属されたところが産婦人科だったので、『あれ?』と思いましたが、実際に働き始めると、赤ちゃんがたくさん居て、産まれて、婦人科の患者さんもいらっしゃって、先輩の女性からいろいろなお話を聞くことのできる機会がたくさんあったので、『産婦人科も良いな』と思い、そこから『助産師になろうかな』という具合に、助産師の道を目指すようになりました」。その後、岡邑講師は休職をして進学し、助産師の資格を取得して臨床現場に復帰しました。

助産師として地元の病院で勤務していた頃の岡邑講師

 

切迫早産と診断された外来通院中の妊婦の方へのサポート

岡邑講師は、助産師養成課程で教育活動を行う一方で、現在、本学大学院看護学研究科博士後期課程に院生として在籍し、切迫早産と診断された妊婦の方への看護ケアに関する研究をしています。切迫早産とは、早産となる危険性が非常に高い状況にあることをいい、わが国では、早産による低出生体重児の割合が1980年は約4%であったところ、2014年には約6%になるなど、近年増加傾向にあります。切迫早産と診断された妊婦の方には、入院される方と外来で医療を受ける方がいるといい、外来通院中の妊婦の方は、早産の症状が起こらないように気を付けた日常生活を行う必要があるといいます。岡邑講師は「切迫早産と診断された方の中には、外来で医師から『ご自宅で様子を見てください』と言われて、ご自宅に帰られる方々もいらっしゃいますが、意外とそういった方々は『家でどう過ごしたら良いのか』『この活動は、どのくらい動いても良いのか』『予防のために何をしたら良いのか』『どのようなときに受診したら良いのか』といった具合に、いろいろな疑問を持たれています。特に、外来に通院されている方に支援を上手く届けて、できれば入院につながらずに、そのまま安心して満期(妊娠37週~41週)で、産み月に出産していただける支援ができればと思っています」と語ります。

 

母性看護専門看護師とは

また、産婦人科の臨床現場では、母性看護専門看護師と呼ばれる看護師の方が活動されています。専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)とは、水準の高い看護ケアを効率よく行うための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた看護師のことをいいます。看護師として5年以上の実務経験を持ち、看護系大学院の博士前期課程(修士)を修了し、一般社団法人日本看護系大学協議会が定める必要な単位を取得した後に、公益社団法人日本看護学会が実施する専門看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。がん看護など14の専門看護分野があり、母性看護専門看護師はその中の1つになります。なお、本学大学院看護学研究科博士前期課程 高度実践看護コースは、がん看護、母性看護、小児看護、精神看護、成人看護、老人看護、在宅看護、クリティカルケア看護の8領域が日本看護系大学協議会から専門看護師教育課程として認定を受けており、修了者は専門看護師認定審査の受験資格を得ることができます(課程修了のほか、実務経験等の要件あり)。

 

母性看護専門看護師は、身体的あるいは心理社会的に複雑な状況にある妊婦やその家族に対して、専門看護分野の専門性を発揮しながら支援を行っています。専門看護師の6つの役割「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の中でも「倫理調整」は、専門看護師の大きな特徴であると岡邑講師は話します。「例えば、母性看護の領域でいうと『この子どもを産むのか産まないのか』などの問題を扱うことになります。ご本人がどう選択されるかを支援していくかといったところや、看護師の方々も倫理的なジレンマで悩んでいるので、一緒に問題解決に向けて取り組むというような支援ができるところが大きな特徴かなと思います。『子どもに母乳を与えるかどうか』も、1つの倫理的な事案になります。例えば『子どもにとって、どの栄養が良いのだろうか』と考えたとき、子どもに選択権があるものの、乳児は自身の希望を言葉で話すことができないので、両親が代諾をすることになる。本来は、倫理的な意思決定の部分であるので、『自分たちがどうしたいか』ではなく、『子どもにとってどうなのか』というところも一緒に考えていただく。『いろいろ悩んだけれども、最終的にこの方法で』と決めたことは、それはそれで良いことだと思いますが、そういったことも関わってくるような問題ではあるかなと思います」と岡邑講師は紹介しました。

 

「支える」ということ

岡邑講師は、これまでの経験を振り返り、「助産師の道を選んで良かったと思っています。今は大学で教員をしていますが、助産師という仕事は楽しいなと思います。私たちは、いろいろな患者さんを一生懸命支えているつもりですが、蓋を開けてみたら、実は私たちが患者さんに支えてもらっていたのではないかと思うことがあります。赤ちゃんが泣いても、その泣き声1つかわいいですし、赤ちゃんのお世話を一緒に体験させてもらうのも楽しい。それで笑顔になれると『また明日も行こうかな』という気持ちになりますし、赤ちゃんの笑顔を見て『今日も1日幸せだな』と思えます。多くの人と出会い、そういう幸せな体験をたくさんさせていただけたことは、財産であると思っています」といきいきと話します。

番組の最後に、岡邑講師は今後の展望について「いろいろ勉強しながら、現在在籍している博士後期課程で単に博士号を取得するだけでなく、その学びを通して学生と一緒にいろいろなことを学んで、臨床にも時々出て、新しい発見をしていく。そこを楽しみながらやっていきたいというのが一番にあります。研究については、まずはしっかり行って、その行った研究は、ぜひ臨床に返したい。『行った研究が臨床で役に立つ』というような研究をしたいと思っています。教育活動については、病院実習に行ったときも含めて、『臨床でこんなことがあったよ』というこれまでの実務経験上の実例をたくさん話すことができるので、できるだけ多くのことを学生に伝えたいと思っています」と話しました。

 

COPYRIGHT © UNIVERSITY OF HYOGO. ALL RIGHTS RESERVED.