令和7年春の叙勲において、元兵庫県立大学経済学部長の生越利昭名誉教授が、「瑞宝中綬章」を受章しました。
「瑞宝中綬章」は、長年にわたり公務等に従事し、成績を挙げた方に授与される勲章です。
生越名誉教授は新潟県出身で、静岡大学教育学部を卒業後、本学の前身である神戸商科大学大学院経済学研究科博士課程を修了、1975年に神戸商科大学に助手として就任しました。その後、講師、助教授、教授を経て、2004年からは本学経済学部教授に就任、2008年~2010年には本学経済学部長を併任し、2012年3月末に定年退職するまで本学の教育・研究に努め、2012年に名誉教授となり、今日に至っています。
生越名誉教授の専門は経済学史で、「市場システム、国家の役割をめぐる経済学、思想の歴史」をテーマに、ジョン・ロック(John Locke FRS、1632-1704)から、アダム・スミス(Adam Smith, 1723-1790)に辿り着くまでのイギリス思想史について、40年以上の年月をかけて研究を続けてきました。1992年11月には学位論文「ジョン・ロック経済思想研究」により神戸商科大学経済学博士号を授与され、著書も『ジョン・ロック経済思想』(晃洋書房1991年)、『成熟社会のライフスタイル』(リベルタ出版2001年、菊本義治氏・松浦昭氏との共編著)などを発行しています。論文についても『アダム・スミスの「公共性」概念』(人文論集2000年)、『デイヴィッド・ヒュームの「公共性」概念』(神戸商科大学創立70周年記念論文集2000年)など、多数発表しています。
また、1986年から1987年にはスコットランド啓蒙思想とアダム・スミスの経済思想との関係に関する研究のために、1991年には17世紀から18世紀にかけての英国の啓蒙思想に関する研究のために渡英され、1996年にはアダム・スミス経済学の思想に関する研究のためにカナダに渡航されるなど、これまでに6度、海外における在外研究に取り組み、成果を挙げています。学会における活動では、長年、日本イギリス哲学会に所属したほか、現在も経済学史学会、社会思想史学会に所属し、経済学史学会では関西部会幹事や『年報』編集委員、経済学史学会幹事等を務めるなど、学外においても活躍してきました。
さらに、2023年5月には、2020年に昭和堂から出版された『啓蒙と勤労-ジョン・ロックからアダム・スミスへ』により、経済学史学会賞を受賞しています。
学内においては、2003年に神戸商科大学の最後の図書館長として、県立大学に移行するにあたって神戸商科大学・姫路工業大学・兵庫県立看護大学の3大学附属図書館システムの統合に際し、規程の制定やシステムの円滑な統合に大きく貢献したほか、図書館における貴重資料である「サー・ジョン・ヒックス旧蔵書および文書コレクション(ヒックス文庫)」の一部出版計画の申し出に関し、可能な範囲で資料提供を行い、学問の発展に寄与するため奔走されました。2008年から2年間は経済学部長の職を兼務し、豊岡市でのフィールドワークの実施など、地域貢献を目的とした学部教育の具体化に取り組むとともに、兵庫県立大学大学院経済学研究科地域公共政策専攻を2010年に開設し、大学院改革に取り組むなど、教育や大学の管理運営にも尽くし、多大な貢献をしてきました。
以上のように、生越名誉教授は教育・研究活動や社会貢献全般に尽くしてきたとして、その功績が認められ、受章されました。
このたびの受章を受けて、生越名誉教授からコメントをいただきました。
「瑞宝中綬章」の受章について
令和7年春の叙勲に際し、瑞宝中綬章を受章する栄誉を賜りました。これまでご指導ご鞭撻いただいた恩師、先輩・同僚諸氏、友人たちに感謝するととともに、結婚後、長年私を支えてくれた妻に改めて感謝します。
瑞宝章は、長年にわたり公務に従事し功労を積み重ねた者に授与される勲章だそうですが、私自身は、40年近く大学教員として教育と研究に従事してきたものの、どれほどの功績をあげたのかの自信もなかったのですが、今回これが評価されたのは大変嬉しく存じます。
私は、静岡大学卒業後、神戸商科大学大学院に入学し、高木正雄教授と末永隆甫教授のゼミに所属し、経済学史と経済理論の指導を受けました。
大学院修了後の1975年に、神戸商科大学に高木先生の後任として採用され、それから2012年の定年まで勤務しました。この間、1986~87年にオックスフォード大学とグラスゴー大学、1991年ケンブリッジ大学、1996年ブリティッシュ・コロンビア大学、2006年グラスゴー大学、2010年バーミンガム大学、2011年オックスフォード大学での外留の機会を与えられました。その成果は、『ジョン・ロックの経済思想』として出版し、また、定年後にこれまでの研究の集大成として『啓蒙と勤労-ジョン・ロックからアダム・スミスへ』を出版し、これが経済史学会から学会賞の栄誉を受けました。
本学での公務は、2003~2004年に図書館長、2004~2006年に経済学部評議員、2008~2010年に経済学部長(兼大学院経済学研究科長)を務めました。経済学部長のときに、大学院には社会人夜間主コースを、学部には英語で授業を行う国際経済コースを新設しました。多くの方々のご協力を得て何とか実現し、それは現在に引き継がれています。教育と研究に従事して40年近く、優秀な学生に恵まれ、同僚教員に助けられ、多くの国内外の研究者と研究交流ができたことは、私の大きな喜びです。
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