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看護学部のオンライン講義への取り組みについて

今年度はコロナウイルスの感染拡大により、多くの大学が対面授業の代わりにオンライン授業を行っています。今回は本学の中でもいち早くオンライン授業を開始した看護学部の取り組みについて、授業の補助を行うティーチングアシスタント(以下TA)1名と学生3名の感想を紹介します。

オンライン授業を配信する様子と、受講者側に表示される映像

はじめに

オンライン授業とはネットを介して授業を行うことを指しますが、ここには大きく分けてオンデマンド型(収録)とオンタイム型(生配信)が存在します。いずれにしても準備にはかなりの時間を要しますが、特にオンタイム型では双方向の環境整備や調整など多くの課題があります。

 

では、なぜ本学の看護学部は4月20日という比較的早い段階から、さらには前期全ての講義についてオンタイム型でのオンライン授業を行うことができたのでしょうか。

統合看護実習(小児)で学生が患児役の学生に水分摂取を促すための説明をしている様子

 

以下のページではTA1名と学生3名がオンライン授業に対する取り組みや感想を述べているので、ぜひご覧ください。

オンライン授業TAからの報告(卒業生:森脇由佳さん)

オンラインでの講義演習(学生:3回生 Uさん)

学外での実習(学生:3回生 Iさん)

母性看護学のオンライン実習(学生:3回生 Mさん)

 

 

これらの取り組みは、地域情報誌「ミニコミあかし」でも紹介されました!

 

 

 

オンライン授業TAからの報告(卒業生:森脇由佳さん)

兵庫県立大学明石看護キャンパス

兵庫県立大学明石看護キャンパスは、看護学部および大学院看護学研究科の学生が学ぶキャンパスです。さまざまな分野で活躍できる資質の高い看護職を育成するとともに、看護学の教育・研究・実践を通して、人々が安心して健康な生活を送ることができる文化の形成と学問の発展に寄与することを目指しています。

オンライン授業に向けての準備

新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、3月に予定されていた卒業式や謝恩会も中止となりました。新しい年度を迎えるにあたり、学生が登校できない状況を念頭におきながら、学生の学びをいかに担保していくか、教職員の間で繰り返し話し合いが行われたそうです。

4月に入り、入学式も中止となり、いよいよ学生の登校も禁止となってしまいました。実習が多く組まれている看護学部では、講義や演習が少しでも遅れてしまうとさまざまな方面に影響が出てきます。学生の学びとカリキュラムの履修への影響を最小限にとどめるべく、看護学部の教職員のみなさんは、一刻も早くオンラインでの授業を開始することを決定し、先例となる大学も無く設備も限られるなか、教職員が手探りでオンライン授業のマニュアルの作成をしたそうです。また、すべての学生がオンライン授業に参加できるかどうか確認するために、学生全員に複数回の接続テストをしました。そして、機器や通信の操作をしながら授業を実施することはあまりに負担が大きいことがわかってきたことから、私など都合のつく数名の卒業生がTAとして授業の補助をすることになりました。オンライン授業は、ゴールデンウィークを待たずに4月20日月曜日より開始しました。

ライブでのオンライン授業の採用

看護学部の遠隔授業では、教員が時間割通りに教室や研究室から授業の配信を行い、リアルタイムで学生が受講するというオンライン方式を採用しました。できるだけ通常の対面授業に近い授業を実現させたいという強い思いがあったそうです。学生は、個人のパソコンやスマートフォンからライブで受講します。授業の資料は、大学の学習支援システムに教員が3日前までにデータをアップロードします。それを学生がダウンロードまたは印刷して授業を受ける準備をします。

オンライン授業を受講する学生へのフォロー

スマートフォンなどの小さい画面を見続けることが難しい学生、パソコンや通信状況の不調が起こる学生も出てくることが懸念されました。そこで、オンライン授業を受ける上で、機器等の問題がある学生には、大学より無償でタブレットやポケットWi-Fiの貸し出しを行いました。

オンライン授業の開始

誰も行ったことのないオンラインでの授業は、学生はもちろん、教員も戸惑いの連続で不安も大きかったように思います。オンライン授業のアプリケーションの使い方・学生の受信環境・トラブル時の対応など、不明な点・やってみなければ分からない点だらけでした。

実際に授業が始まってみると、音声が聞こえない・画面が映らない・ログインできない等トラブルが続出しました。なんとか学生が授業を受けられるようにと協力しながら対応しました。TAとしてトラブルと対応策を日々集約し、教職員全体への情報共有に努めました。授業が進んでいくうちに、教員学生ともに徐々に慣れてきて、落ち着いて授業を受けられる環境が整っていきました。

グループワーク

オンライン授業での気になる点として、学生それぞれが家から受講しているために他の学生との交流が図れないということが挙げられました。教員の方も、ずっと一方的な講話を聞き続けるだけの授業では学生が大変だろうという気遣いがあったように思います。そこで本学のオンライン授業では、グループセッションが容易にできるアプリを採用しました。その機能を活かし、学生をグループに分けて話し合いを行う授業を積極的に行いました。この方法は、少しでも対面での授業に近い形で行う一助になったのではないかと思います。また、学生から「久しぶりに友達と顔を合わせて話ができた。」等といった意見が寄せられました。大学に登校できない日々が続く学生の不安とストレスを少しでも解消する一助にもなったのではないかと思います。

チャット機能

オンライン授業で発見した意外なメリットは、チャットでの教員と学生とのやり取りです。対面での授業では、授業に対する意見や質問を挙手して声を上げて行うことは気軽にしにくいものがあります。しかし、オンライン授業のチャット機能を使うと、教員や授業TAに直接質問を行ったり感想を伝えたりできるので、学生側の理解度に沿った授業を行いやすくなったことは驚きでした。また、教員の方曰く、一つ一つの授業に対する感想や考察の内容も対面授業で行っている時よりも質が高いこともあるということでした。これは、授業のみに集中できるオンライン授業ならではかもしれません。

オンラインでの看護実習

看護の実習もオンラインで行いました。はじめは、どのように実習が行われるのか見当もつきませんでしたが、何とか学生に学んでもらおうと、教員がさまざまな工夫を凝らして実施していました。

ある実習では、教員が地域の施設やコミュニティに直接出向いて撮影交渉し、そのインタビュー内容から想定される課題を学生が考えていました。別の実習では、教員がシナリオを考えて患者役・看護師役を演じ、実際にケアがどのように行われているかが分かる実習をつくりあげていました。このような実習では、実習の場への往復の時間が短縮される等で学習の時間が確保できるためか、いつもの実習よりも学習の深度が深くなっている学生もおり、今だからこそできる学びもできていたのではないかと思われます。

終わりに

オンライン授業では、授業におけるその時々の学生の反応の把握の仕方、学生が印刷する資料のスリム化などの課題も山積しています。しかし、このような形式で行うことによって、「授業」や「学び」とはどのように行っていくものなのかという事を見直す機会になったのではないかと思います。今後も新しい生活様式が続く中、オンライン授業が続いていく可能性が高くなっています。実技など、対面授業でしか行いにくいこともありますが、今だからこそできるオンライン授業でのメリットにも目を向けて、学生との相互のやり取りを大事にしながら、授業も進められればと考えます。

 

 

 

オンラインでの講義演習(学生:3回生 Uさん)

講義演習がオンラインで行われるという初めての経験をした。事前に演習内容の資料が配布され、それを基にして実施された。資料に画像や絵を多用してくださった。イメージがしやすいように動画を作成してくださった。画面越しにリアルタイムで進めてくださった。

 

私は、今まで演習は技術面での学びが大きく、対面でやるものであると考えていた。しかし、実際にオンラインで実施してみて、いくつかの発見があった。まず、実際に行わない分、むしろ知識が習得できたことである。演習は技術に集中しがちであったが、オンラインで行うことによって、より根拠や内容を考えながら行うことができた。また、友人とのグループワークが充実しており、フィードバックの時間が十分にとれた。フィードバックを行うことで、自分にない視点にも気づくことができ、とても良い機会であった。その他、準備や片付けの時間が省略されることで、演習後すぐに学びを振り返ることが可能となったことも、メリットだったのではと感じる。

 

特に印象に残ってるのは、グループに分かれ、それぞれが看護師役、患者役、家族役になり、ロールプレイを行った演習である。対面でない分、看護師は患者の思いを読み取ることや表現の仕方が難しく、コミュニケーションのとり方をよりいっそう考える機会となった。

 

その一方で、やはり技術面での不安も残る。実践して気づく点もあると考えられる。後日時間を確保し、練習をすることが大切だと考える。また、電話対応など様々な対策が取られていたが、動画が多い場合はWiFiの環境なども気にしながら受ける必要もあったため、対面に比べると不安はやや多いと感じた。

 

 

 

学外での実習(学生:3回生 Iさん)

6月末から生涯広域健康看護実習が始まりました。私の実習は在宅看護領域からスタートしましたが、今年は新型コロナウイルスの流行に伴い、臨地実習の日程が例年の半分ほどの4日間に短縮して行われました。在宅看護の実習では、学生1人につき療養者さん1人を担当します。その方への看護ケアを考え、実施します。

 

例年よりも限られた時間の中で情報収集や関係構築、看護ケアを実施するため不安もありました。しかし、臨地実習以外の6日間はオンラインで同じグループのメンバーと意見交流ができました。先生方からもたくさんのサポートをいただいたため、無事に看護計画を立案し、実施することができました。

 

また、限られた時間の中でわたしたちの学びが少しでも深まるようにと、訪問看護ステーションのみなさんには時間を調整していただきました。そして、たくさんの療養者さんのお宅に同行させてもらうことができました。大学の授業で聞いていたサービス担当者会議に実際に同席できました。さまざまな疾患が学べるようにと、異なる疾患の療養者さんのお宅に伺うことができました。自宅や施設など異なる環境での訪問看護の様子も見学でき、連絡帳を用いた多職種連携の様子や訪問看護の仕組みなど、たくさんのことを学ぶことができました。

 

療養者さん一人ひとりに合わせた看護が提供されていたところが印象に残っています。摘便や清拭といった清潔や排泄などのセルフケア能力をサポートするための看護ケアを行うだけでなく、近況を伺ったりご家族も交えながら一緒に懐かしい話をしたりして場を盛り上げるなど、目に見える看護ケアではないコミュニケーションを通しても療養者さんと関わる場合がありました。訪問看護は、療養者さんによって時間も内容も異なります。そのため、その人の生活の中で訪問看護をどのような存在にするのか、療養者さんやご家族、ケアマネジャーや医師など様々な人と意見を出し合いながら考えていくことが大切であると学びました。

 

新型コロナウイルス感染症が流行する不安定な状況の中で実習を受け入れ、たくさんのことを学ばせてくださった訪問看護ステーションの皆様、療養者様、実習を行うにあたってサポートしてくださった先生方、同じグループのメンバーには本当に感謝しています。ありがとうございました。

 

 

 

母性看護学のオンライン実習(学生:3回生 Mさん)

生涯広域健康看護実習の母性看護領域では、新型コロナウイルス感染症の影響で対面での実習を行うことが難しい状況となった。そのため2週間の実習では、オンラインにてコミュニケーション実習と模擬事例の展開の2つが実施された。

 

コミュニケーション実習の目標は、育児期である女性とオンラインでコミュニケーションを図り、妊娠・出産・育児の体験談を聞き、理解を深めることであった。実習までの授業では、妊娠・出産・育児期の身体的、心理的変化や疼痛についてなどを学んでいた。これらについて実際の体験談を聞くことで疼痛緩和の大切さや、周囲の人からの心理的ケアの重要性に関して改めて理解することができたと感じられた。また、入院中の妊婦や褥婦に対して看護ケアを行う病院実習とは違い、妊娠から育児までの長い間での経験を具体的に情報収集することができた。それゆえ、もう少しこのようなことをして欲しかった、などの看護ケアに対する不満や改善点についても教えてもらうこともでき、今後の学びにつながるような貴重なお話を伺うこともできた。

 

模擬事例の展開の目標は、対象理解を深めながらアセスメントを行い、対象に必要な看護支援について検討することであった。もし病院実習を行うことができたら実際に受け持つであろう、母児の事例を担当した。今回はオンライン実習であったため、母児を演じる教員と情報収集のためのコミュニケーションを行いつつ、2人1組でアセスメントを行いながら看護ケアを展開した。最初は教員を母児に見立ててコミュニケーションを行うことに対して戸惑いを感じ、どのように情報収集を行っていけば良いか困った。しかし担当教員が丁寧にコミュニケーションを行ってくれたので、具体的な情報を得ながらアセスメントを行うことができた。病院実習と比べて良いと感じた面は、教員とのコミュニケーションの中で、正しい情報、知識や技術を得ながら学ぶことができたことである。病院実習よりも疑問点や看護ケアの展開方法について相談しやすく、学びやすい環境であったと感じた。

 

私は、最初は病院での実習を行えないことに対して悲観的に感じていた。しかしオンライン実習を行う中で先生方が様々な配慮や工夫を凝らしてくださったおかげで自身の大きな学びにつながったと感じている。母性看護に対する興味も深まったため、良い実習となったと感じた。

 

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