看護学部では、2025年度の新入生から順次、新しい実習ユニフォームに変わります。
看護学部の学生は、学内での演習をはじめ、医療機関や訪問看護ステーション、福祉施設などの地域施設で行われる実習において、実習ユニフォームを着用しています。現在着用されているユニフォームの基本デザインは、1993年4月に看護学部の前身である兵庫県立看護大学が開学した際に作成されたもので、これまでに多くの卒業生がこのユニフォームを着て、看護の技術を磨くべく、切磋琢磨してきました。
左:新ユニフォーム、右:現在のユニフォーム
一方で、かねてより一部の学生から「ユニフォームのズボンの色を濃い色にしてほしい」との要望があったことから、開学以来初めてユニフォームをリニューアルすることになり、2023年度からユニフォームの変更に向けての検討が始まりました。特に昨年度は、学生会に所属する学生が主体となって取組を進めてきたことから、日々実習でユニフォームを着ている学生たちの声がより反映されたユニフォームになりました。
新ユニフォーム
病院実習バージョン
上着は薄いサックス色を基調に、両脇にネイビーの共布があるデザインで、アクセントのブルーラインが、看護学部のシンボルマーク『未来を目指す若鳥』を思い起させます。ズボンの色は、学生からの要望を反映して紺色になりました。
また、これまで男子学生と女子学生は異なるデザインのユニフォームを着用していましたが、男女共通のユニバーサルデザインになりました。
ユニフォームの主な特徴やこだわり
1 左右の腰ポケットには、深さが異なる内ポケットが2つ付いたため、メモ帳や聴診器、テーピング用のテープなど、大小様々な大きさの小物類の整理がしやすくなりました。
2 左右のウエストにあるループは、消毒液や鍵、個人情報を記載するメモ帳を落とさないように紐を通して括りつけるなど、様々な使い方が可能です。男子学生の現ユニフォームには付いていなかったので、より利便性が高まることになります。
3 ズボンの色が紺色に変わり、左右にポケットが付きました。通気性の良い生地でできており、ウエストから太ももにかけて裏地があります。
4 その他、現ユニフォームには胸元に学校名と名字の刺繍が入っていますが、新ユニフォームには左肩に学校名のみ刺繍が入ります。
地域実習バージョン
左:新ユニフォーム、右:地域実習時の服装。上はポロシャツ(自前で用意)、下は新ユニフォームのズボン
地域に出る実習での服装は、実習先からポロシャツやジャージなどの「動きやすい服装」を指定されることが多く、また、感染予防のために普段着用する服とは分けて、実習用の服として用意する必要があります。そのため、学生たちは、これまではユニフォームとは別に、自前でポロシャツとズボン(学内での販売もあり)を用意していましたが、このたびのリニューアルにより、ズボンはユニフォームのものを着回しできるようになり、実習用に別途ズボンを購入する必要がなくなりました。
新ユニフォーム決定までの道のり
ユニフォーム変更の経緯
今回、ユニフォームのリニューアルに向けて、中心的な役割を担った兵庫県立大学看護学部学生会副会長で看護学部3年生の浮田結菜さんと原田琴和さんは、当初は女子学生のユニフォームのみリニューアルすることになっていたと話します。「2024年度に入って早々の頃に、学生から学生会に『ユニフォームのズボンを紺色にして欲しい』と要望があり、学務課に伝えたところリニューアルについて承諾を得ることができました。ズボンの色については、これまでにも毎年学生から要望が出ていましたが、何も行動に移せていませんでした」と振り返ります。他方、教員側でも2023年度に実習調整委員会の教員がユニフォームに関する調査を実施するなど、リニューアルを見据えた動きをしていたこともあり、2024年度から本格的に新ユニフォームのデザインを検討することになったといいます。「学生からは『ズボンだけ変えたい』との要望があったのですが、現在のユニフォームの布地で紺色はなく、下のズボンを変更するのであれば、上着も変更する必要があることが分かり、女子学生のユニフォーム上下ともにリニューアルすることになりました」。
左から浮田さん、原田さん
デザイン案の検討-学生会主体でアンケートを実施
学生会のメンバーは、女子学生の上下ユニフォームをリニューアルするにあたり、ユニフォームメーカーからデザインブックを見せてもらい、新ユニフォームの全体像のイメージを絞り込みました。そして、角襟と丸襟の2つのデザイン案を出し、これらをもとに、看護学部の学生全員を対象に昨年7月から8月にかけてアンケートを実施しました。アンケートは、「ユニフォームを変えるか否か」「ユニフォームを変更するなら、これら2案のうち、どちらのデザイン案が良いか」という形で実施され、その結果、角襟を希望した学生が多く、また、新しいデザインに変更したいという学生が多かったため、リニューアルに向けてその後も検討を進めていくことになりました。
さらに、アンケートで回答のあった学生からは様々な意見が寄せられ、このときに男子学生もリニューアルを望んでいることが分かり、男子学生のユニフォームもリニューアルすることになりました。「男子学生から『今のユニフォームは不便』との意見がありました。学部自体は女子が多く、どうしても女子の意見の方がよく聞こえてくるのですが、女子学生からは出てこないような意見で、『この意見も大切にしたい』と思いました」と2人は説明します。
学生たちの意見が反映された角襟
また、学生たちが角襟を希望したのには、LGBTQへの配慮もあったといいます。「先生方から『LGBTQに配慮したデザインが良いのではないか』とのアドバイスをいただいていたこともありますが、実際にアンケートを取ると、学生側もLGBTQへの配慮に希望があったことが分かりました」といい、新ユニフォームは角襟・丸襟の2つのデザインとは全く異なる3つ目の案として男女兼用のユニバーサルデザインにする方向で検討するようになったといいます。
アンケートの結果と日々の困りごとを踏まえ、第3の新規デザイン案を作成
学生会では、アンケート結果と、自分たちが現ユニフォームを着用して実習に臨む中で日々感じている困りごとを踏まえ、デザイン案をより具体的なものに落とし込んでいきました。その過程で昨年8月に行われた大学生協の担当者やユニフォームメーカーの方との打合せには学生会も参加し、デザインについて直接やりとりしたといいます。浮田さんと原田さんは、「上着のポケット周りの色については、ボールペンのインクで汚れやすいので、汚れが目立たない色にしてほしいとお伝えしました。ズボンも、紺色に変更するだけでなく、今のユニフォームにはポケットがないので、左右に2か所ポケットのあるデザインを選びました。また、企業の方の中には看護師という職業柄、『女性らしさ』をデザインに出すことを気にされている方もいましたが、LGBTQに配慮したいという希望があり、リニューアルするからにはイメージしているものに変えたいとの思いがあったので、私たちの希望はきちんとお伝えするようにしました。デザイン案については、先生方から『学生らしさが感じられるデザインを』というアドバイスをいただいていたので、襟のあるデザイン、ユニフォームの色で学生らしさが出るようにしました」と説明します。
加えて、新ユニフォームの価格が現ユニフォームよりも上がるため、価格について学生会の学生の保護者の方数人に意見聴取したといいます。「実際に学生のユニフォームを購入してくださるのは保護者の方だと思ったので、意見をいただいた方が良いと考えました。保護者の方には、変わる部分と変わることによるメリットをお伝えし、その上で意見を伺いました。その結果、『ユニフォームは4年間使うものだから、それくらい払うよ』『地域に出る実習用のズボンを買わなくても良くなるなら、少々高くても良い』といった言葉をいただきました」と話します。
そして、様々な要望を反映した第3のデザイン案(ユニバーサルデザイン)を作成し、昨年9月に再び看護学部の全学生を対象に、今度は、角襟と丸襟の2案にこの第3案を加えた形でデザインの希望に関するアンケートを実施しました。その結果、アンケート回答者のうち、約85%の学生が第3案のユニバーサルデザインを希望したことから、このアンケートの結果をもって、ユニバーサルデザインのユニフォームにリニューアルすることが決定しました。
将来、自身が働く病院に新ユニフォームを着た実習生が来るのを楽しみに
新ユニフォームは、2025年度の新入生から着用が開始されます。リニューアルに携わった学生会のメンバーをはじめ、現在の在学生がこのユニフォームに袖を通すことはありません。「私たちはこのユニフォームを着ることはできません。それゆえ、私たちも途中で挫折しそうになったときに『自分たちは着れないのに』と思ったこともありましたし、本当は着たかったです」と2人はプロジェクト中に感じた本音を明かしました。その一方で、「今の在学生全員にとっては関係ないことですが、せっかくリニューアルできる機会が巡ってきたのだから、『今が良いタイミングなのかな』と思いながら取り組んでいました」と話します。
新ユニフォームを着用することになる将来の後輩に向けて原田さんは、「『かっこいい』と感じるユニフォームを着ることで、実習のモチベーションが上がったら嬉しいです」と述べ、浮田さんは「社会人になって働いている病院に、自分たちが頑張って決めたユニフォームを着て実習に来る学生たちの姿を想像すると、嬉しいです。でも、新ユニフォームを着て、『違うな』と思ったら、その代の学生たちでより良いユニフォームにできるように頑張ってほしいです」と語ります。
最後に、学生会での活動について2人は、「クラブやサークルに入っていないと、他学年の先輩との関わりがあまりないと思いますが、学生会では月に1度集会があり、そこでは大学生活をより快適に、有意義に過ごせるような様々な活動について話し合いをしているので、他学年の先輩と関わる機会が増えると思います。また、運営側に回ることは、良い経験になると思います。今回のユニフォームのプロジェクトに運営側として携わったことで、アンケートを2回実施したり、意見をまとめたりと、『こんなことを、こんなにもしないといけないのか』と思うことがたくさんありましたが、ただ『言うだけ』でなく、自分できちんと行動したことが結果につながっていくことにやりがいを感じ、面白かったです」と話しました。
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