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姫路市と減災復興政策研究科による『姫路市版 仙台防災枠組2015‐2030中間評価報告書』が完成しました

このたび、姫路市と本学大学院減災復興政策研究科による『姫路市版 仙台防災枠組2015‐2030中間評価報告書』が完成したことから、2月10日(火)、姫路市役所(兵庫県姫路市)で清元秀泰姫路市長と本研究科長の永野康行教授による合同記者会見が行われ、中間評価の内容が公表されました。

左から清元市長、永野教授

 

大規模災害を受けていない都市としては初めての取組

「仙台防災枠組2015‐2030」は、2015年3月に宮城県仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」において採択された国際的な防災の指針で、同年に採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」「パリ協定(気候変動)」と並んで「3大アジェンダ」と呼ばれています。仙台防災枠組の取組期間が折り返しを迎え、世界では、73か国で国家レベルでの中間評価の取組が進められており、国内では、東日本大震災により大きな被害を受けた宮城県仙台市が、2023年に東北大学災害科学国際研究所とともに自治体としては世界で初めて仙台防災枠組の中間評価を実施し、報告書に取りまとめました。
その中で、2024年6月に国内で初となる防災に関する国際会議「防災グローバルフォーラム2024」(主催:世界銀行)が姫路市で開催されたのを契機に、仙台市と東北大学から姫路市に中間評価の取組について打診がありました。

姫路市は、近年、大規模な災害の被災地になったことはありませんが、活断層である「山崎断層帯」を直下に抱えていることや、南海トラフ巨大地震の発生の懸念があることから、世界文化遺産「国宝・姫路城」の防火・防災の取組をはじめ、津波避難対策や災害対策用備蓄物資の確保など、従来からさまざまな防災・減災に関する取組を推進されてきました。また、各地の被災地に発災直後から職員を派遣し、復旧・復興支援等を行ってきたことや、阪神・淡路大震災から30年の節目の年であることなどから、姫路市におけるこれまでの防災・減災の取組等を分析・評価し、その結果を今後の施策立案・対策や市民の防災意識の向上に活用するため、令和7年度主要事業の1つとして位置づけ、中間評価を実施されました。中間評価を実施した団体としては、自治体レベルでは仙台市に次いで2例目、大規模災害の被災地になっていない自治体としては全国初の取組です。

2025年4月16日に神戸防災キャンパスで行われたキックオフミーティングの様子

 

「姫路市の実情に引きつけて具体化した」ローカル版の取組点検

中間評価の実施にあたっては、減災復興政策研究科が2025年4月から連携機関として参画し、姫路市と協力しながら進めてきました。中間評価では、姫路市のこれまでの防災・減災の取組等について、成果と課題を明らかにすることを重視し、仙台防災枠組が2030年までの目標として掲げている、全てのステークホルダー(活動において直接的または間接的に影響を受ける利害関係者)が優先して実施すべき4つの「優先行動」と、具体的な目標である7つの「期待される成果と目標(グローバルターゲット)」と照らし合わせながら、定量・定性的に整理し、取組の進捗や達成状況の分析・評価が行われました。同時に、行政だけでなく、地域コミュニティ、企業、学校、医療・福祉機関など、多様な主体が担うべき役割と連携のあり方についても検討が進められました。

 

合同記者会見の様子

合同記者会見では、はじめに清元市長から『姫路市版 仙台防災枠組2015-2030 中間評価報告書』の作成事業の概要等について説明がありました。その中で清元市長は、「評価に当たっては、兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科と連携し、客観的な評価が得られるよう取り組んだ。評価の結果、『優先行動』に係る取組は、『グローバルターゲット』の達成に重要な役割を果たしており、災害による人的被害の防止等に効果をあげていることが確認できた。一方で、『グローバルターゲット』のおよそ半数は目標に到達できておらず、今後の取組の方向性や被害状況の定量的把握を通じて、データに基づく施策を行うことの重要性など、多くの示唆を得ることができた」と話されました。

 

続いて、永野教授が中間評価の意義と姫路市の取組への評価等について説明し、「今回の中間評価は、国際的な仙台防災枠組を『姫路市の実情に引きつけて具体化した』ローカル版の取組を点検するものである。世界の共通目標と、地域の現場での実務・暮らしとをつなぐ点で、学術的にも実務的にも大きな意義がある。仙台防災枠組では、災害リスク軽減のための4つの優先行動が示されている。特に、姫路市の場合は、世界遺産を含む歴史的市街地と、工業・物流・住宅地が混在する都市構造を持ち、地震・風水害双方のリスクに向き合っている点が特徴である。そのため、都市計画、文化財保全、産業継続、生活再建が一体となった防災・減災戦略が不可欠であり、その方向性が仙台防災枠組の考え方と整合的かどうかも評価の重要な観点になる。併せて、姫路市がこれら指標を意識し、自らの施策を点検しようとしていることは、『感覚的な防災』から『エビデンスに基づく防災』への大きな一歩であること、また、姫路市がインフラ更新、環境対策、地域コミュニティの維持・活性化といった分野と防災を結びつけて考えようとしている点は、『防災をまちづくりの一部として位置づける』優れた取組だと言うことができ、全国的・国際的な文脈から見ても評価できると強調したい」と話しました。

 

さらに、姫路市の防災・減災の取組で優れている点については、「姫路市は過去に大きな災害を受けていない日本の都市の一番手として中間評価に取り組んだというその志を、まず優れている点として挙げたい。防災は気持ちの問題も大事であり、市長を筆頭に防災担当部局をはじめ、市職員のみなさんは『防災マインド』を持っておられ、そのマインドを市民のみなさんに届けようとされている。もう1点は、市民向けに概要版を作られたことである。概要版には4つの優先行動などが明記されており、ご高齢の方、成人の方、お子さんも含め、家族で読めるものになっている。市民のみなさんに行き届いた際には、この報告書の成果の本領が発揮されると思っている」と話しました。
一方で、足りない点や今後に向けた課題等については、「人間は経験の生き物であるので、経験していないことに対するリアクションは非常に難しい。防災・減災について問題提起をする中で、それらをより『我が事』として捉えてもらえるようになることが大切だと思う。地震災害を経験していない地域は、災害に対する備えもしにくい。『訓練しろ』と言われても、なかなかできない。30年前を思い起こせば、当時、『神戸に地震は来ない』と皆思っていた。しかし、日本は地震国であり、地震が来ない地域というのはおそらくない。加えて、近年は地球温暖化に起因するような形で豪雨などの自然災害が多発しており、その規模も大きくなっている。備えもさることながら、行政だけでなく、企業も含め、日本国全体での意識の向上、マインドの向上が不可欠だと思っている」と述べました。

中間評価公表後の取組について清元市長は、「報告書を通じて、姫路市がこれまで進めてきた取組を市民の皆様と共有するとともに、災害への強靭性や回復力、いわゆる『災害レジリエンス』を一層高め、災害関連死を含めた被害の防止を図るなど、『仙台防災枠組』の後半期における対策を着実に進めていく。『30年前のあの日』を忘れることなく、震災の教訓を未来へと引き継ぎ、防災・減災対策をさらに強化し、『災害等に強く安全で安心な都市 姫路』の実現に向けて取り組んでいく」とし、また、永野教授は、「この中間評価を『防災の専門的な話』に留めず、『姫路の未来のまちづくり』の議論として、概要版も利用しながら市民のみなさんに分かりやすくお伝えいただきたいと思う。今後も姫路市と連携しながら、科学的知見に基づく防災・減災、そして、より良い復興の実現に取り組んでいく」と話しました。

 

併せて、当日は合同記者会見に先立ち、清元市長と永野教授による会談が行われました。終始和やかな雰囲気で進められ、永野教授は、本研究科の教員全員で分担執筆し、昨年2月に発行した書籍・兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科編『減災復興学 阪神・淡路大震災から30年を迎えて』(ミネルヴァ書房)を清元市長に贈呈し、本研究科の取組を紹介するなどしました。

 

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