兵庫県大生の「くわしく教えて」に答える『県大Tips』。今回のテーマは朝食です。
新型コロナの感染拡大が収まらず、不安がぬぐえない日々が続いていますが、コロナに打ち勝つためにも日頃からしっかりと食事をとり、免疫力を身につけておきたいですよね。けれど、学業に加えてアルバイトや部活で忙しかったり、一人暮らしで食事をとるのがめんどうだったり…生活リズムが狂って、食事もおろそかになってしまいがちです。それでも、毎日元気に1日をスタートしたいもの!そこで今回のテーマは、朝食。「朝食をとるとどんないいことがあるの?」「手軽にはじめたいけれどどうしたらいいの?」環境人間学部の中出麻紀子先生にお話をお聞きし、朝食にまつわるお悩みにヒントをもらいました。
―いまなお続く新型コロナウイルス感染拡大は、学生の食生活にも影響があるのでしょうか?
昨年末に、コロナウイルスの感染拡大と大学生の意識や行動がどのように関連しているのかを調査しました(2020年12月)。感染が拡大する前と後では「外食が減った」と回答した人が7割、逆に「自宅で料理をして食べる食事が増えた」と回答した人は4割にのぼります(対象者数546)。家で料理をする機会が増えたということは、その食事の内容がそのままその人の栄養素摂取量に大きく影響します。特に、一人暮らしで自炊がめんどうだからと食事を抜いたり、コンビニで買ったものやレトルト食品、おやつだけなど簡単に済ませずに、バランスのいい食事を心がけることが理想的です。
―食生活の中でも、先生は主に朝食の研究をされています。朝食にはどんなメリットがあるのでしょうか?
朝食には、大きく4つの働きがあります。
(1)体のエネルギー源になる
(2)脳を働かせる
(3)体温を上げる
(4)便通を整える
学生の皆さんに特に知ってほしいのは「脳を働かせる」効果。脳はブドウ糖をエネルギー源としています。ブドウ糖となる炭水化物を朝食で摂取することで、朝から効率よく勉強や仕事に取り組むことができるのです。文部科学省の調査では、朝食を多く食べるほど国語や数学の学力調査の平均正答率が高い傾向にあることが報告されています(図)。
(図:文部科学省「平成30年度全国学力・学習状況調査)
また、成人男性を対象とした研究では、主食・主菜・副菜の揃った食事をとった群では、朝ごはんを食べなかった群と比較してその後の作業集中度が高かったという報告もあります。効率よく学び、動き、よりよい体内環境を整えるためにも朝食は欠かせないものなんです。
―こんなにも学力に差が出てくるのですね…!けれど、朝はドタバタしてしまいがちです。朝食をとる習慣のない人は、どんなことからはじめればいいでしょうか?
朝食を食べる習慣のない人にとっては、バランスのとれた朝食を摂取することはとてもハードルが高いと思います。そんな人は、まずはバナナ1本、ヨーグルト1つでかまわないので、何か食べてみることからはじめてほしいんです。慣れてきたら、今度は2種類を組みわせてみる。最終的には主食・主菜・副菜をセットで、さらに余裕があれば乳製品や果物を加えられるとベストです。1品からでいいので、ぜひトライしてみてください。
―ところで中出先生のクラスでは、学生発の簡単レシピができたとお聞きしました。
「大学生向け朝食摂取率向上プロジェクト」という事業の一環で、誰でも簡単に作れる朝食レシピを学生が企画しました。兵庫県の食育プロジェクトの1つで、兵庫県栄養士会と大学が連携して、学生が同世代の人たちへの朝食摂取率向上を図るためアイデアを出し、実践しようというもの。食環境栄養課程の学生からは、「オクラツナ丼」と「チーズオムライス」の2つのレシピが誕生しました。レシピ開発の情報収集のために事前アンケートをとったところ、朝食を食べない理由として「もっと寝ていたい」「準備で忙しい」「朝食の準備や片付けがめんどう」「食欲がない」などの理由があげられました。そこで、作りやすさ、栄養バランスを考慮して考えたレシピなんです。
(レシピの紹介)
(材料)
ごはん 170g(茶碗1杯)
冷凍オクラ 30g
ツナ缶 25g
めんつゆ 5g(小さじ1)
マヨネーズ 3g(小さじ1弱)
きざみのり 0.5g
(作り方)
①オクラはレンジで解凍し、ツナ、マヨネーズ、めんつゆと混ぜ合わせる。
②ごはんの上に①をのせ、のりをかける。
(山岡さんのレシピのこだわり)
ストックが可能な冷凍野菜や缶詰を使って、混ぜるだけで手軽に作れるレシピにしました。
(材料)
ごはん 110 g
ミックスベジタブル 35 g
ケチャップ 25 g
卵 50 g (1個)
ピザ用チーズ 20 g
豆乳 5 g
(作り方)
① 器にごはん、ミックスベジタブル、ケチャップを入れて600Wの電子レンジで1分30秒加熱する。
② ①を混ぜ合わせる。
③ ボウルに卵、豆乳、ピザ用チーズを入れて混ぜる。
④ ③を②に乗せて600Wの電子レンジで2分30秒加熱する。
(磯野さんのレシピのこだわり)
包丁やフライパンを使わず、混ぜて電子レンジで温めるだけで作れるようにしました。たんぱく質がきちんと摂れることもポイント!
レシピを考案した磯野さん(左)と山岡さん(右)
―食生活に関して、学生の皆さんに伝えておきたいことがあれば教えてください
大学生は、親元を離れて一人暮らしをしたり、アルバイトをはじめたり、これまでの生活に大きな変化がある時期です。食事についても自分で選択する機会が増えますので、その変化が栄養素摂取量や健康にダイレクトに影響します。大学生の年代は他の年代と比較して朝食を取らない人の割合が多い、野菜摂取量が少ない、主食・主菜・副菜の揃った食事をしている人が少ないことが報告されています。他方で、今が骨密度を増やせるラストチャンスの時期でもあります。ぜひバランスのよい食生活を心がけていただきたいと思います。
朝食をとることが、体力面だけではなく学力にも大きく影響するとは驚きですね。バランスのいい食事は少しハードルが高いかもしれませんが、フルーツやヨーグルトを1品食べることならすぐにはじめられそうです。朝食をとるのがめんどうだと思っていた人も、この機会にぜひチャレンジしてみては。
・今回のゲスト
環境人間学部 食環境栄養課程 公衆栄養学研究室 准教授 中出麻紀子先生
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