兵庫県大生の「くわしく教えて」に答える『県大Tips』。今回のテーマは大学時代の人付き合いです。
友だち、家族、アルバイト先の同僚など、人間関係はどこにいても、どんな立場になっても身近なテーマです。大学生になると、高校時代に比べて出会いの数がぐっと増え、人との付き合い方が変化して、新たな価値観に触れることができたり、逆に戸惑ったりすることもあるかもしれません。考え方も、受け止め方も、解決方法も人によって違うものだし、正解なんてないもの。そこで、今回は在学生の本音を座談会形式で聞きながら、友人関係にフォーカスして、等身大の悩みともやもやを解決する(かもしれない!)処世術をお届けします。
なお、今回座談会に参加してくれたのは、臨床心理学などを研究している環境人間学部 井上教授と、そのゼミ生のみなさんです。井上ゼミでは、現代人が抱えている様々な心の悩みや傷つきへの理解を深め、人と人との関わりを通して心が変化し、成長していく心理療法やカウンセリングの臨床実践研究を行っています。
ゲスト:井上靖子教授、池田雄斗さん、十都(とそ)祐真さん、中川唯人さん、中田右納さん、新田麻妃さん、水本咲綺さん(6名ともに3年生) / 聞き手:1460編集部
編集部:みなさんこんにちは。今日は人間関係のなかでも、友だち付き合いについてお聞きしたいと思います。もうすぐ入学式。1年生の時は緊張しているでしょうし、学業についていくのに必死ですよね。友だち付き合いもこれから始まるというタイミングで、みなさんはどうやって交友関係を広げていきましたか?
新田:私は入学式の時に声をかけた子と仲良しになりました。入学式はお互いに初対面だから、話しかけても変に思われない雰囲気なんですよね。どんな風に声をかけるべきか難しいし緊張もするけど、「どこの学部?」とか「どこの出身なん?」とか簡単なことをきっかけにすればいいと思うんですよね。
中田:わかる!私も話しかける寸前まで心拍数上がるタイプ。
十都:僕も、「名前が一緒だね〜」って盛り上がった友だちと仲良くなりましたね。小さなネタをきっかけにして話しかけたらいいと思います。声をかけられたら嬉しいものだし、愛想よく接してくれるだろうから。
新田:授業がスタートしたら、英語の授業とかでランダムにグループ分けされた時もチャンスかな。
十都:部活やサークルに入ったら、学部も価値観も違う人たちが自然と集まるじゃないですか。そこに参加しないとできないご縁もあるので、足を運んでみるのはありだと思います!
水本:サークルは募集がはじまったらすぐに行ってみるべき!2年生にもなればグループもできちゃって入りづらくなっちゃうから。
池田:僕の場合は一浪して入っているので、年齢が違うことにこだわってしまってなかなか人に声をかけることができませんでした。高校時代って先輩・後輩の上下関係があるじゃないですか。でも、よく考えたら1歳差くらいで世代間ギャップなんてないし、ほとんど違いがないなって気がついて、それからは肩の力を抜いて友だちと付き合えるようになりました。
水本:私は同級生に知り合いがいたので、入学時に友だちがいなくてどうしようとはなりませんでした。だけど授業に向き合う態度や趣味はやっぱりそれぞれのスタンスがあるから、悩んだ時期があります。だから、最初から友だちがいるから安心ということではないなと思っていて。というのも、人って変化していくものなので、親友と呼べる安定した友だちがいなきゃいけないというわけではないと思うんです。いればいいかもしれませんが、いなくても成立するかなぁって。
池田:うん、無理に友だちを作らなくても、一人があっているというタイプの人もいますよね。
編集部:少し話題に出ましたが、大学生になると授業の中でグループワークをすることがありますよね。チームの中に気の合わない人とか、協力的じゃない人がいる時はみなさんどうしていますか?
中田:私は絶対にその人の悪口を言わないようにしています。言葉にしちゃうと頭の中で反すうしちゃって、ますます嫌になっちゃうから。不満に思うことがあっても、笑って受け流すのがいいと思う。ちなみにこれは友だちが実践して成功した作戦です。
新田:あまり発言もしないし、タスクもやらない人も時にはいます。私はそういう人がいたら「もしかして役割が合っていないのかも?」と思うタイプで。それぞれに得意・不得意があるだけで、何かできることはあると思うので、他の役割を提案してみることがあります。
編集部:日常でいえば授業、大きなことでいえば就活など、「今はこれに集中したい!」と思っているところに、横から遮られる…みたいなことが起こった時はどうしているんですか?
池田:自分のやりたいことを優先すべきだと思います。これは絶対に譲れないというラインを決めておかないと、出会いや選択肢が多い分、流されてしまうから。
中田:私は逆によく流されてしまって(笑)。入学当初は図書館に入り浸って本を読むことを楽しみにしていたんですけど、そういうタイプじゃない友だちに流されてしまって、結局実現できないまま3年生になってしまいました。でも、流されて新たな自分を発見できる面もあるから、一概にどっちがいいとは言えないのかも。
水本:私はちゃんと授業を聞きたい派なので、信頼関係のできている相手であれば「今ちゃんと聞きたいから静かにして」って普通に言います。そんなこと言ったくらいで「友だちじゃない!」とはまずならないし、逆にそうなるような人なら友だちになってないと思うんですよね。
十都:僕も子どもの頃から、ルールを守るとか守らないとかで友だちとの考え方の違いを感じたことがありました。そんな時は無理に仲良くしなくても、自分なりのいい距離感で人と付き合っていけばいいのかなって思っています。
編集部:みなさんは友人関係において、ズバリどのようなことで悩んでいますか?
中川:関わる人たちみんなに好かれたいと思うせいか、人の顔色を伺ってしまい、思ったことを言えないところがあって。でも、ある時、そのことを友だちに打ち明けたら、「あるある!」って共感してもらえて。言ってみたことで、みんな同じようなことで悩んでいるんだなぁとわかり、気持ちが楽になったことがありました。
池田:僕は人と会うことには抵抗はないんですが、約束をするのが煩わしいというか…。遊ぼうと声をかけてもらえることはとても嬉しいんです。でも、本来なら自分が好きに使えたはずの時間を人に取られるような感覚があって。
中川:プライベートな時間が削られると思っていても、約束はするってこと?
池田:うん。予定がないのに断るのも申し訳ないし、行ってしまえばすっごい楽しいから。
中田:あんまり趣味が合わなさそうな友だちと3人で、うちで鍋をするという約束をしてしまって、アウェイ感があるしどうしよう…って緊張していたんだけど、いざ3人で話してみたらめちゃくちゃ気が合って! 私は沖縄育ちで、子どもの頃から高校までは友だちが一定だったけれど、大学生になるとどんなタイミングで出会いがあるのかわからないものだなぁって思ったことがあります。
編集部:価値観の合う人との出会いは、なかなか難しいものですよね。ちょっとドキドキしながらも一歩踏み出してみたことで、いい結果に繋がったということですね。
水本:私は人に流されてしまいやすいところがあって。数人のグループで遊びに行く話になった時に、大人数だと断りづらいとか、参加しなかったら置いてけぼりにされるんじゃないかって不安になることが多かったんです。でも最近はちょっと考えが変わってきて。大学って、いろんな出会いがある分、もちろん合わない人もいて。その集まりに参加してもしなくても、合わない時は合わないから、自分がそこにいてプラスな気持ちが生まれるならいいんですけど、行ってから「疲れた〜」と思う場合は、楽しくないってことなので、行かないようになりました。
中田:ほんとに仲良しなら、グループの集まりに定期的に参加しなくてもその後の関係に影響したりしないよね。
新田:価値観といえば、私は時間の感覚の合わない友だちとの関係で悩んだことがありましたね。私はちゃんと予定を立てておきたいタイプだけど、その友だちはアバウトなタイプで。こちらからすれば、アバウト過ぎて予定が立てられないので、悶々としたことがあって。でも結局、その友だちは忙しくて予定を立てづらかっただけなので、時間に余裕のある私が相手にあわせればすむ話なのか、という結論に落ち着きました。
編集部:感情的にはならなかったのですか?
新田:もちろん怒りました!(笑) でも、怒ると疲れるじゃないですか。疲れ切った後に、一瞬、冷静になる時間があって。そこがポイントで。怒るのも疲れた!ってなって、「怒らない方法」って脳内で検索をかけたら、「諦める」という結論が出ました。
中田:すごいなぁ〜。メモしておこう。
編集部:受け止め方も考え方も人それぞれだから、正解ってないものだろうけど、ヒントになりますね! 井上先生は、授業で「共感」することを大事にされているとお聞きしました。価値観が異なる人と出会った時の対応についてアドバイスはありますか?
井上:例えば、人と会話をしていて意外な答えが返ってきたときに、自分の価値観をフィルターにして、耳を塞いだり心を閉ざしてしまうとそれで関係は終わってしまいます。けれど、まずはじっくり話を聞いてみることが共感に繋がるのではないでしょうか。仮に相手が自分と真逆の価値観を持っていたとしても、相手の身になって冷静にその思いを感じとることができればもはやプロの領域ですね。でも、そこまでしなくても、お互いの違いに対して、「あぁAさんはそういう風に感じるんだなぁ」と、感情的にならずに、耳を傾けてみることから、人との関係を育むことができると思います。
編集部:なるほど。人に悩みを相談できれば気分的に楽になれることもあるかと思うのですが、本音を打ち明けるのが苦手だという人に、とっておきの方法はありますか?
井上:時間をかけて関係性を築いていくことで、話せるようになると思うので、無理に話そうとしなくていいと思います。私のゼミでは、互いの心の悩みを相談しあって、共感しながら人間の心を深く理解していくことを目指しています。環境人間学部は3年生の時にゼミに配属されますが、ゼミ生たちは、4月はお互いの顔色を伺っているような状態で、夏くらいになると少―しずつ自分の過去の話や今思っている本音を話せるようになってきて、クリスマスが近くなってようやく心から打ち解けるようになります。そうやって徐々にお互いの理解を深めていくものなので、関係性を育むにはどんな人であっても時間がかかるものなのではないでしょうか。
編集部:価値観が合うかどうかという話題がたくさん出てきましたが、気の合う人にはどうやって出会えるものでしょうか。?
新田:第一印象で仲良くなりたいと思った人は、だいたいイメージ通りで気の合うことが多いなって思います。それと、「類は友を呼ぶ」ということわざはほんとその通りで、気の合う友だちの友だちは、やっぱり気が合うことが多いです。
池田:きっかけは趣味とかゲームとかいろいろあるけど、友だちってなんらかの点で気の合う人だから、その友だちは気の合う可能性が高いかも。そういうふうに繋がった友だちは、より関係性が深まっているなって、僕も感じますね。
中田:私は、ひとまず全員と話してみたらいいと思っています。だいたい5分くらい話してみたらなんとなく特徴が見えてきませんか?目を合わさずに話す人だなとか、すごく褒めてくれる人だなとか。人はそれぞれ価値観が違って、その持ち味が素晴らしいものだと思うんです。でも、自分と合う・合わないということは重要なポイントなので、いろんな人と出会いながら、その人に対してどう感じるのか、じっくりと自分の気持ちと向き合いながら付き合っていけばいいんじゃないかなって思っています。
池田:でも、まったく価値観が合わない人ってあまりいなくない?僕の場合は、ほとんどの人に「ここは気が合うなぁ」って思うところが出てくるかなぁ。
水本:私は自分が絶対譲りたくない部分が合わない人とは一緒にはいれないタイプ。でも、確かに、それ以外のどこかは共有できる価値観があるのかも。
池田:その中で、気が合えば合うほど深い友だちになるだろうし、共感できる接点の少ない人とは浅い付き合いになりがちというか。
中田:ほんとはみんなと仲良くしたいけど、それは難しいよね。あんまり人に期待しすぎるとしんどいし。価値観や興味は日々変化していくものだから、友だちと違うものが好きになる時期も当然あって。その時に「友だちだと思っていたのに!」ってショックを受けていたら自分が疲弊してしまう。だから、「今はあの人とは価値観がちょっと違うけど、またいつか仲良くなれるかもね〜」くらいの感じの関係を築けたらいいですよね。
編集部:最後に、大学での人付き合いについて不安に思っている人たちへメッセージをお願いします。
池田:大学って高校時代よりも出会う人の数が多いし、仮に1年生の時に見つからなくても、そのうち気の合う人がきっと見つかるだろうから焦らなくても大丈夫だと思います!
井上:まずは、自分のことを知り、軸を築いていくことがはじめの一歩ですね。
中川:たしかに、自分に軸がないのに交友関係を広げようとすると、自分より周りの言動を優先して物事を考えるようになってしまうものかもしれません。それだと友だち付き合いがしんどくなってしまうから、自分が好きなことをしていきいきとしていたら自然と交流の幅も広がるんじゃないかな。
中田:私は自分の軸がないと思っていたけれど友だちができたし、むしろ友だちが自分の軸となる何かを作ってくれたような気がします。自分らしさとかよくわかっていなくても、周りの人が気づかせてくれることだってあるから、安心して人と付き合っていけばいいと思います。
井上:いろんなかたちがありますね。まずは相手が好きなことや夢中になれること、情熱を注いでいることに耳を傾けてみること。それはつまり、自分自身のことをわかっていないと友だち作りはできないということでもあります。中田さんのように人と付き合うことで自分を見つめていくケースもあれば、学問や学内外での対人関係やそこで得た経験を通して築かれることもあると思います。どんなかたちであれ、友だちとの関係を築くためには、まずは自分を見つめ、発見することが必須なのではないでしょうか。
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