記事検索

  • 学部・組織・所属

  • 記事のテーマ

  • 記事のタイプ

「今、知っておきたいエネルギー問題」 兵庫県立大学新長田ブランチオープニングイベント 関西電力×兵庫県立大学タイアップセミナーを開催しました

1月31日(金)、兵庫県立大学新長田ブランチにおいて、兵庫県立大学主催、関西電力株式会社共催、電気事業連合会の協力で「今、知っておきたいエネルギー問題 関西電力×兵庫県立大学タイアップセミナー」を開催しました。

本セミナーは、2025年4月から、本学において産学連携や地域創造に取り組む社会価値創造機構の神戸拠点として、企業との共同研究や起業人材の育成、社会人向けのDX人材育成などリカレント教育・リスキリングを推進する「兵庫県立大学新長田ブランチ」が本格稼働するのに先立ち、オープニングイベントとして開催されたものです。「今、知っておきたいエネルギー問題~地球温暖化と気候変動、カーボンニュートラルに向けて~」をテーマに、主に本学の学生が電力エネルギー業界の現状と将来の課題について学び、エネルギー問題を自分事として考える機会とすることを目的に行われました。当日は、本学の学生・教職員をはじめ、関係者の方など約80名の方が参加されました。

 

はじめに、社会価値創造機構の柴野伸之教授から開会の挨拶があり、2025年1月にプレオープンした兵庫県立大学新長田ブランチの概要や今後の利用等について紹介がありました。

柴野伸之教授

 

第1部・第2部講演とトークセッション後の質疑応答で進行を務めた国際商経学部の落合夏海講師

 

第1部講演「気象予報士から見た地球温暖化」

第1部講演には、NHK「おはよう関西」等のテレビ番組で気象キャスターとして活躍されている気象予報士、防災士、健康気象アドバイザーの塩見泰子氏にご登壇いただき、「これからどうなる?気象予報士から見た地球温暖化」と題して、気象予報士としての観点から地球温暖化についてお話しいただきました。
講演の前半では、「身近な地球温暖化」についてお話しいただき、その中で、地球温暖化と気象予報士の関係として、2024年6月に44名の気象予報士及び気象キャスターが『気象危機に関する気象予報士・気象キャスター共同声明』を発表したことを取り上げられました。このことについて塩見氏は、「温暖化や発電、クリーンエネルギーの専門家と一般の方との橋渡しができるのは、やはり、日々気温に向き合っている気象予報士なのではないかということで声明を出した。これからは、日々の天気のことを伝えながら地球温暖化のこともみなさんにしっかり伝え、皆で地球温暖化のことを考えていこうという思いがベースにある」と説明されました。
また、大阪の年間の平均気温がこの100年間で約2.0℃上昇しており、日本国内だけでなく、世界的にも温暖化が進んでいる都市の1つであることや、温暖化が進むことでゲリラ豪雨の増加や、桜が咲かなくなる未来が来る可能性があることなどを紹介されました。

講演の後半では、「地球温暖化が進む中でこれからどうするか」という観点からお話しいただきました。塩見氏は、温暖化について考える際には、気候変動に合わせてまず自分の命を守り、そこに合わせて快適に過ごしやすくできるように策を練る「適応」と、策を講じた上で温暖化の原因となっている温室効果ガス排出の削減を減らす取組をする「緩和」の2つに分けて考えることを勧められました。加えて、夏季の猛暑に伴うイベント開催可否の判断に迷う際には熱中症警戒アラートの発令の有無を確認することや、大雨から身を守る方法として、土砂災害のリスクを調べることのできる気象庁の公式サイト内にある「キキクル(危険度分布)」のページを自身で使いこなせるようにしておくことや、節電の他にも環境に配慮して製造された製品を選ぶことも自分で取り組める温暖化対策の1つであると話されました。最後に塩見氏は「声をあげることも重要で、聞いたことを周りに伝えることでその輪が広がる。温暖化に対する危機感が高まるだけでも大きな力になる」と述べられ、講演を締めくくられました。

 

第2部講演・トークセッション「エネルギーと気候変動、カーボンニュートラルに向けて」

第2部講演には、政府や中央省庁等で各種委員会委員も務められているエネルギーの専門家である、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループ グループリーダーで東京科学大学総合研究院特任教授の秋元圭吾氏にご登壇いただき、「エネルギーと気候変動のかかわり」と題してお話しいただきました。
秋元氏はCO₂排出量について、「われわれの経済活動が落ち、所得が落ちた世界経済危機やコロナ禍の際にCO₂排出量が下がったことがあった。しかし、経済が好調なときは、これだけ世界各地で温暖化対策に取り組んでいても排出量は上昇し続けている実態がある。エネルギーとCO₂は密の関係であり、エネルギーを減らすということには、われわれの経済活動を減らし、所得を減らすという実態があるので、『所得を伸ばしながらもどのようにしてCO₂排出を減らすのか』という課題に立ち向かっていかないといけない」と指摘されました。さらに秋元氏は、「われわれが経済を発展させるときには、必ず電力の消費が伴っている。経済成長も所得の増加も電力のおかげであり、GDP(国内総生産)と電力消費量には強い相関関係がある。何をするにも電気が使われているという状況の中で、どのようにして脱炭素化をしていくのか。電力をつくり出す過程で発生するCO₂を減らすという課題に取り組まないといけない」と説明されました。

また、カーボンニュートラルの実現に向けては、「われわれはエネルギーを使って経済を発展させ、社会を幸福にしていかないといけないので、エネルギーをゼロにすることはできない。そのため、カーボンニュートラルにするには大きく分けて『原子力を使う』『再生可能エネルギーを使う』『出てきたCO₂を回収して地下に埋めるCCUSという技術を使う』という3つの方法しかない」とする一方で、これらには多くの課題もあるとし、「コスト面を考慮しながら様々な方法を組み合わせてカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいくことが重要である」と話されました。

 

秋元氏の講演後に行われた塩見氏と秋元氏によるトークセッションでは、柴野教授による進行で、「どうする?どうなる?2050年のカーボンニュートラル」をテーマに、日本のエネルギー事情や、日本におけるカーボンニュートラルに向けた取組、原子力発電の活用などについて秋元氏にご説明いただきながら、塩見氏からコメントをいただく形で進められました。柴野教授は「会場内にいる学生のみなさんは、これから先、われわれよりも長く生きていかれることになる。いろいろな情報を入手して、メリット・デメリットの両方を知り、いろいろ勘案した上で自分の意見を持つことが大事で、それは本セミナーの開催目的の1つでもあるので、このセミナーをきっかけにエネルギー問題について考えていただければと思う」と述べました。

 

トークセッション後には、質疑応答の時間が設けられ、学生をはじめ、教職員からも質問が寄せられるなど、活発な意見交換の場となりました。

 

COPYRIGHT © UNIVERSITY OF HYOGO. ALL RIGHTS RESERVED.