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感染拡大防止を考慮した看護演習・実習の実施

看護学部では、新型コロナウイルス感染拡大防止対策としていちはやく授業のオンライン(Web)対応を進めていますが、やはりオンラインでは難しいカリキュラムもたくさんあります。中でも、技術習得や体験学習を含む演習、実習はオンライン講義だけでは十分学ぶことができません。感染拡大防止と学びの質の担保を両立するため様々な工夫が行われています。

例えば、2回生の治療看護演習では、例年約100名の学生を 6 グループ(14~5人程度)に分けて、教員の所作を近くで見ながら学生が学ぶスタイルをとっていました。次の写真は、2年前(2018年)の講義の様子です。

 

これでは隣同士の距離がどうしても近くなるため、本年度は次の写真のように、学生同士が対面とならず、対面になる教員と学生の距離が確保できるようレイアウトを工夫しました。

ここまでにはいろいろなアイデアや苦労がありました。そこで、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じたうえでの演習や実習について、実際に演習・実習の在り方の検討に携わった看護学部の脇口 優希助教、清原 花助教がインタビュー形式で、看護学部の取り組みについてご紹介します。

 

Q:演習はいつ頃からどんな風に計画を始めましたか?

清原: 新型コロナ対策として、Web講義の話が持ち上がった当初の4月頃からです。その時は、どのぐらい対面/Webになるか見通しがまったく立たなかったので、すべて対面で行うパターンからすべてWebで行うパターンまであらゆる可能性を考えました。

脇口: 演習では、Web でできる(自宅学習可能な)もの、Web ではできない(大学でしかできない)ものの切り分けから始めました。例えば、技術演習で用いる注射針や割れる可能性のある器具などは避け、滅菌手袋やシリンジ、浣腸、導尿セットなど、学生が1人で安全に練習ができるものは自宅学習できるよう整えました。さらに今まで撮りためた演習時の録画データを使って看護技術演習動画を作成して学生用のサイトに掲載し、事前に自宅学習を十分に行ってもらえる環境も用意しました。

一方、演習に使うシミュレータは大学にあります。注射針などけがをする可能性がある操作も教員がそばにいることが望ましいです。そこで、感染防止対策を講じて学内演習を行うことを決断しました。学生の安全確保を最優先として、効率的かつ十分学習できるよう何度も何度も話し合いました。密にならないよう、例年は約100名で行う学内演習を35名程度に減らし3日間にわけて実施しました。演習中はマスクやフェイスシールドの着用、手指消毒の徹底に加え、人や物のレイアウト、共用物品の消毒、定期的な換気等にも苦心しました。

 

Q:統合実習は全てオンラインで行うことになりました。どのように進めましたか?

清原: 4 回生の統合看護実習は例年 1 か月かけて病棟だけではなく地域連携室、外来化学療法室へも出向き、患者さんを受け持ちます。今年は医療機関への立ち入りが難しい状況が長く続きました。そこでWebで学生と教員をつなぎ、模擬患者での実習を行いました。例えば、病院の電子カルテを模したExcelフォーマットで架空の患者カルテを作ったり、患者役の教員と学生がオンラインでコミュニケーションを取りました。臨床で活躍している看護師の方にもご協力をいただき、直接学生にアドバイスをもらう時間も設けました。

 

脇口: 教員が患者役となり学生からの質問に答えました。表情など工夫して演じましたが、リアリティに欠けてしまうことがありましたね。本来、看護師がベッドサイドで患者さんと関わるとき、その表情や言葉だけではなく所作や日頃の何気ない行動、体に触れた時の感覚、ベッド周辺の状況など様々な情報を統合して患者さんを理解し、ケアを行います。しかし、画面を通したやり取りになると上半身しか映りませんし、学生達は患者さんの体に触れることもできません。患者さんの状態をイメージしてもらうのが難しく、病棟に行けないことへの限界も感じました。

一方で、表情を読み取ったりお話をしたりと、コミュニケーションに集中できるので、一言一言のやり取りの重みや、患者さんの発言についてより深く理解することができました。

また、病棟で実際の患者さんを目の前にすると緊張から上の空になってしまう学生がいますが、今回のような画面を通したコミュニケーションでは余計な緊張がなく、落ち着いて患者さんとやり取りができたようです。夏以降、少しずつ病院実習も再開していますが、学生の学びを支援する取り組みとして1つ選択肢ができたように思います。

Q:オンラインと対面、実際にやってみてどう感じられましたか?

清原: 今まで対面でやっていたことをすべてオンラインでできるかというと限界はあります。もちろん対面でしかできないこともありますが、オンラインの方が向いている内容もあったと実感しています。また、大学に来てもらうのを貴重な機会とせざるを得なかったことが、逆にその大事な時間に向けて学生も例年以上にしっかり予習をしてきたり、授業中集中力が増したりと思わぬ効果もありました。

脇口: 物理的、時間的制約の中で演習や実習を組み立てることは、個々の内容について、どうあるべきか、そしてそれをどう運ぶべきか、改めてじっくり考える機会となりました。当初は「これまでのやり方をいかにオンラインで再現するか」を考えていましたが、振り返ってみるとオンラインだからこそ実現した内容もありました。まだまだ改善すべき点はありますが、状況が変わったことで、見えてきたことを今後の教育に活かしていきたいと思っています。

 

(兵庫県立大学看護学部治療看護学講座)

 

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