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マイクロカプセル化ワサビ成分によるヒアリ燻蒸の研究成果について

2017年5月、兵庫県の港に陸揚げされた中国のコンテナからヒアリが発見されました。ヒアリは特定外来生物に指定されており、日本への侵入が確認されたのは初めてであったため、日本中で大きな騒ぎを起こすこととなりました。

本学の橋本佳明(兵庫県立大学自然・環境科学研究所准教授 兼 兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)らが所属する研究グループは、健康被害や環境汚染などが懸念される従来の化学的な薬剤を使用せず、簡便で安全にヒアリを燻蒸する方法について研究を行いました。その結果、天然由来の安全な防虫、殺菌成分である「ワサビ成分(AITC:アリルイソチオシアネート)」がヒアリの燻蒸剤として有効であることが明らかになり、2020年4月24日には国際科学誌「Applied Entomology and Zoology」のOnline firstとして、Springer.comに掲載されました。

マイクロカプセル化ワサビ成分を含ませたシートをシャーレに入れ、ヒアリの行動を観察している様子

出典:橋本佳明,坂本洋典,五箇公一,浅井ひろみ,八十島将充,Hui-Min Lin(2020)マイクロカプセル化ワサビ成分のヒアリ燻蒸効果

 

本研究では、マイクロカプセル化ワサビ成分を含有したペレットとガスバリアー性プラスチック袋を用いた簡便な燻蒸方法により、ダンボール箱内のヒアリ働きアリの殺虫効果を検証しました。マイクロカプセル化ワサビペレットを使用して24時間燻蒸した場合、ダンボール箱内のヒアリを完全に殺虫できることが分かりました。また、ヒアリの燻蒸殺虫に有効なワサビ成分ガスが、およそ2週間に渡って保持できることも示されました。

マイクロカプセル化ワサビペレットを設置した場合と無い場合での、ガスバリアー性プラスチック袋を用いたヒアリ燻蒸結果(左)と、マイクロカプセル化ワサビペレット50gをガスバリアー性プラスチック袋内に設置して、ペレットから放出されるAITC成分ガス量を測定した結果(右)

出典:橋本佳明,坂本洋典,五箇公一,浅井ひろみ,八十島将充,Hui-Min Lin(2020)マイクロカプセル化ワサビ成分のヒアリ燻蒸効果

 

ワサビ成分AITCは食品保存剤などにも使われる成分であるため、特殊な機材や防護マスクが不要であり、貨物が汚染されることもありません。今後は誰がどのような場所であっても安全にヒアリを燻蒸できるようになることが期待されます。

 

 

外来アリについて

上記ではヒアリを取り上げましたが、2019年には東京湾にて同じく特定外来生物であるアカカミアリが確認されるなど、日本では外来アリへの対策が大きな問題となっています。外来アリについて正しく学び、そして正しく対処するため、下記の書籍では外来アリの生態や防除方法について詳しく記載されています。ぜひご覧下さい。

橋本佳明編『外来アリのはなし』朝倉書店(2020)

 

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