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兵庫県立大学政策科学研究所主催 2022年度第2回シンポジウム「脱炭素社会の『未来』を拓く『アンモニア』の可能性」を開催しました

11月22日(火)、兵庫県民会館で、兵庫県立大学政策科学研究所主催、関西学院大学産業研究所及び兵庫県立大学水素エネルギー共同研究センター共催の2022年度第2回シンポジウム「脱炭素社会の『未来』を拓く『アンモニア』の可能性」が開催され、会場とオンラインあわせて約150名の方が参加されました。

 

本シンポジウムは、「脱炭素社会の『未来』を拓く『アンモニア』の可能性」をテーマに行われました。電力の世界では、脱炭素社会の構築のために石炭火力発電所での補完的燃料として水素由来のアンモニアとの混焼により化石燃料の使用を維持していく必要があるとの見方が強まっています。その他にも、脱炭素社会に向けて様々なことを考える必要があります。本シンポジウムでは、特に発電事業にまつわる中長期的課題に焦点を当て、各界の専門家や実務家の方々に登壇いただき、討論が行われました。

 

はじめに、太田勲学長から開会の挨拶がありました。挨拶の中で太田学長は、「本学では『水素エネルギー』ということで研究等を進めているが、広くは『環境エネルギー』であり、そういう意味で、本日の『アンモニアの可能性』というものは、非常に興味があるテーマである。アンモニアは、燃焼してもCO₂を出さないという面では良いわけではあるが、取扱の問題や燃焼の難しさなど、いろいろな課題があると思う。本シンポジウムでは、そのあたりのことに関するお話をお聞きできるということで楽しみにしている」と述べました。

次に、司会・進行の政策科学研究所長の草薙真一教授から、シンポジウムの趣旨説明と登壇者の紹介がありました。

 

第1部 講演

第1部の基調講演では、東京ガス株式会社アドバイザーで、一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会会長の村木茂氏に「カーボンニュートラルに向けたアンモニアと水素の役割」と題してご講演いただきました。村木氏から、水素基本戦略シナリオや2030年度の電力需要・電源構成、水素エネルギーキャリア、アンモニアに係る利用技術、クリーン燃料アンモニアの実装プランなど、現在のアンモニアの状況についてお話いただきました。

 

続いて、5名のパネリストの方々に講演いただきました。

一般財団法人日本エネルギー経済研究所化石エネルギー・国際協力ユニット石炭グループ研究主幹の井川太氏に登壇いただき、「脱炭素社会に向けて-石炭の現状-」と題してご講演いただきました。井川氏からは、世界の石炭消費動向や、世界の石炭火力発電の動向、ヨーロッパでは脱炭素ではなく脱石炭火力の廃止を進めていること、ロシアのウクライナ侵攻により、今は火力発電から離れられないことについて、お話いただきました。

 

J-POWER(電源開発株式会社)経営企画部部長(IR・ESG担当)の栗原照氏からは、「J-POWERグループのカーボンニュートラルと水素社会実現に向けた取り組み」と題してご講演いただきました。講演の中で、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップについてや、火力発電のCO₂削減の選択肢、石炭・バイオマス等固形燃料のガス化をコア技術とした水素利用ビジョンの構想、水素社会実現に向けたブルー水素の必要性、CO₂フリー水素のサプライチェーン、実証試験の取組など、石炭を利用したCO₂フリー水素活用についてお話いただきました。

 

関西電力株式会社エネルギー・環境企画室長の齊藤公治氏からは、「ゼロカーボン社会実現に向けた関西電力グループの取組み」と題してご講演いただき、昨今の電力事情、電気の基本的特性、需給ひっ迫に至る理由、気候変動問題とカーボンニュートラルに向けた課題、関西電力グループの事業・取組みについてお話いただきました。

 

株式会社パソナグループ顧問で、本学の政策科学研究所の中村稔特任教授からは、「脱炭素社会に向けた視点」と題した講演がありました。中村特任教授は、脱炭素社会の構築に向けた課題として、S+3E(Safety(安全性)+Energy Security(自給率)、Economic Efficiency(経済効率性)、Environment(環境適合))、地政学的視点、国際政治情勢と国内経済社会へのインパクトの3点を挙げました。また、脱炭素社会構築を通じて求められるものとして、本質を見極める姿勢と多面的な視野を持つことと、リテラシーの向上の2点を挙げ、「本シンポジウムで講師の方々にお話しいただいたようなことを一人でも多くの人が理解し、この民主社会の中で何が大事なのか、何ができ、何が最適な選択なのかということを、自然科学、社会科学を含め、科学的に正しい対応をしているのかといったことを考えて行動していかなければならない」と講演を結びました。

 

同じく本学の工学研究科・水素エネルギー共同研究センター長の嶺重温教授からは、「アンモニアの化学的性質と本格的利活用に向けた課題」と題した講演があり、水素のキャリアとしてのアンモニアの活用や、化学物質としてのアンモニア、人体とアンモニア、アンモニア大規模利活用時の安全対策、液体アンモニアタンクの安全対策、アンモニアの生産体制、サプライチェーン構築、アンモニアパイプラインについて紹介がありました。嶺重教授は、「アンモニアは、室温でも容易に液体化可能であるので、次世代エネルギーである水素の輸送媒体のキャリアとして有効である一方、課題として、安全性、生産・サプライチェーン整備と、将来を見据えた高耐久化(防食技術)、保安の体制や、それに伴う人材育成も必要という部分も加味して、コストの試算をする必要がある」と話しました。

 

第2部 パネルディスカッション

第2部では、はじめに関西学院大学経済学部の野村宗訓教授から第1部での5名の登壇者の方からの報告を受けてのコメントがありました。その後、野村氏からそれぞれの登壇者に対して質問がなされました。

 

最後に、草薙教授から閉会の挨拶がありました。挨拶の中で草薙教授は、「SDGsの関係で問題意識を持ち、そして、文理融合を大切にしていきたい。また、この機会を糧として、2023年3月4日(土)午後1時から、電力の価格の高騰をいかに抑えるかということをメインのテーマにした第3回シンポジウムを、再度、関西学院大学産業研究所との共催で開催したいと考えている」とし、「水素と二酸化炭素を合成して、メタンガスを人工的につくるメタネーションなどは、よく知られるようになってきた。ガソリンや燃料なども合成燃料で人工的につくるという研究が盛んになってきた。これらが実現すると、消費者は、これまでの生活態様を維持しながら脱炭素を達成することができるようになる。楽しみな未来の1つと言えるのではないかと思う。そのような研究を本研究所は進めていきたいと考えているので、ぜひ、ご期待いただきたい」と述べました。

 

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