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火薬の燃焼エネルギーにより高速で吐出される液体のふるまいを解明

 

高速で液体を吐出するウォータージェット(液体ジェット)技術は、産業分野で幅広く使用されています。例えば、金属板の切断・加工、近年では野菜のカットや外科手術における内臓の切除など、様々な分野・シチュエーションにおいて使用されています。

 

ジェットの吐出速度は非常に高速で、そのふるまいは不明でした。そこで、兵庫県立大学大学院工学研究科及び先端医工学研究センターの本田逸郎教授・高垣直尚助教らの研究グループは、株式会社ダイセルとの共同研究を通して、火薬の燃焼エネルギーにより高速で吐出される液体のふるまいを明らかにしました。

 

共同研究においては、株式会社ダイセルが独自に開発した、火薬の燃焼エネルギーを推進力として使用する次世代型の液体ジェット吐出装置の試作機を使用した室内実験とANSYS/FLUENTソフトウェアを使用した流体の数値計算を行いました。

吐出器内部における液体の圧力および流速の様子

 

液体は、図面左側からピストンにより押されることにより圧力が上昇し(上記左図の赤い部分)、図面右側の細管内部において速度が増加し(上記右図の赤い部分)、図面右端の細管出口より吐出される様子が分かります。

 

上記実験や流体の数値計算により、特に、吐出速度の変化は吐出器内部の液体のわずかな密度変化に強く影響されることを明らかにし、高速液体吐出に関する簡便な流体物理モデルを確立しました。

これにより、吐出速度の直接測定もしくは詳細な数値計算を行うことなく、液体の吐出速度を推定できる可能性を示しました。

本モデルにより、液体ジェットの微細な制御を用いた新たな医療応用技術の開発を可能にすることが期待されます。

実際に、当該基礎研究は、株式会社ダイセルにて開発された火薬の燃焼エネルギーで駆動するジェットインジェクター「アクトランザラボ」(動物実験用デバイス)の医療応用性を拡大させることが期待されています。燃焼エネルギーによって生じる高速ジェット流は、瞬時に皮膚に穴を開け、皮内組織へ分散し、細胞内へ物質を導入することで、ターゲットに薬液を注入することが可能となります。

アクトランザラボ

 

皮内の広範囲に薬液が分散される様子

 

上記データの出典:株式会社ダイセル

 

 

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