兵庫県立大学シミュレーション学研究科の土居秀幸准教授は、生態学で用いられる生物種の数を推定する数理モデルとそれによるシミュレーションを駆使することで、国立研究開発法人海洋研究開発機構、高知大学、ブレーメン大学、米国ロードアイランド大学と共同で研究を行い、海底下の堆積物中の微生物多様性は海洋や土壌に匹敵することを明らかにしました。
調査した全40の掘削サイト(赤色)
本研究では、過去18年合計14回の科学調査航海により集められた世界各地の海底堆積物を用いて、海底下の微生物多様性に関するグローバルスケールの調査を実施しました。
海底表層から678 mまでの深さから採取された堆積物の凍結サンプルを用いて、その環境に生息する微生物群集のDNAを抽出しました。
凍結コアサンプル。船上で抽出したコアサンプルを微生物分析用に-80℃で冷凍保存し、ここからDNA分析用のサンプルを採取した。
それらのDNAに含まれる約5千万の16S rRNA遺伝子配列を分析した結果、エネルギー供給に乏しい海底下の堆積物環境に、土壌や海水といった地球の表層環境に匹敵する、驚くほど多様な微生物種が存在していることが明らかになりました。この結果は、土壌、海洋、そして海底下環境を合わせた全地球に存在する微生物群集において、バクテリア(真正細菌)がアーキア(古細菌)よりも圧倒的に多様であることも示しました。
本研究成果は、地球全体における微生物種の多様性と空間分布、生存戦略や進化プロセスの理解、そして微生物生態系と地球環境との関わり等を理解する上で、極めて重要な科学的知見です。
本成果は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)(電子版)に10月20日付け(日本時間)で掲載されました。
今後、ゲノム配列の解読などさらに詳細な解析を進めていくことで、海底下の微生物が持つ特殊な機能や生存戦略を明らかにしていく予定です。
我々が生きている陸上とは全く異なる世界である海底下生命圏を探究することで、地球と生命に関する我々の認識を新たにする知見が得られることが期待されます。
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