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ラジオ関西に出演! 地域資源マネジメント研究科 大迫義人 教授

 

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「PUSH!」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

3月1日(火曜日)放送の「PUSH!」「こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、地域資源マネジメント研究科 大迫 義人(おおさこ よしと)教授です。

 

今回のテーマは「野生動物と人との共生」

大迫教授の専門は、「鳥類生態学、行動生態学」です。

大迫教授は、本学大学院の地域資源マネジメント研究科の教員と「兵庫県立コウノトリの郷公園」の研究員を兼務しています。

地域資源マネジメント研究科では

豊岡にある地域資源マネジメント研究科は、コウノトリを含む動物・植物の生態学(エコ領域)、それらの生息・生育の基盤となる地形・地質の地球科学(ジオ領域)、それらと共生する人間の人文社会学(ソシオ領域)なども学べる総合的な独立大学院です。

大迫教授は、この研究科で「野生復帰概論」の教鞭を取る側で、コウノトリを飼育下で増やし、馴化訓練した上で野生に戻すプロジェクトを行っています。日本で繁殖していたコウノトリは、1971年に野生絶滅しています。

最後に生息していたのは、兵庫県の但馬地方と福井県の若狭地方といわれています。

そこで、この最後の生息地からコウノトリを復活させるプロジェクトが始まりました。

 

但馬地方豊岡市にある兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科

但馬地方豊岡市にある兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科

 

コウノトリと人の共生

大迫教授も住んでいる但馬地域の豊岡市。

但馬地方では、コウノトリを、田んぼを荒らす害鳥とみる反面、鶴と見立てて愛でる「鶴見茶屋」という社交場もあり、悪い面も良い面も受け入れてコウノトリと共生してきた文化がありました。「人と共生」して生きるコウノトリにはとても良い環境のはずでした。

 

なぜ、コウノトリの数が減っていったのかー

いくつか要因があると大迫教授は語ります。

一つは、生息環境の悪化があります。当時、使っていた農薬の毒性が強かったため、田園や河川の生き物が減り餌をとれる場所が少なくなっていきました。と同時に、餌に含まれる有毒物質が濃縮して死んでゆきました。

さらに、個体数が減ったことにより、近親交配がおこり、繁殖に障害が出て個体数が減っていったと考えられています。

気づいた時には十数羽しか生息していなかったそうです。

それに気づいた行政と住民たちは、何とかしようとしましたが、
時すでに遅かったようです

 

かつて、人とコウノトリは共生していた(1960年の豊岡市内での風景 提供:富士光芸社)。

田園の生物多様性

現在は、田園で使用する農薬も毒性が弱くなり、生き物への影響が小さくなってきました。

そして、但馬地方では 「コウノトリを育む農法」と呼ばれる、安心安全な農産物と多様な生きものを育み、コウノトリも住める豊かな文化、地域、環境づくりを目指すための農法を行っています。

コウノトリは餌とりが上手ではなく、餌動物が逃げにくい水深の浅い田んぼで専らカエル類、魚類、昆虫類を捕っています。

「コウノトリによって稲を踏み荒らす問題がでてくるのではないか」という声があり、同研究科の院生と調査をしたところ、

コウノトリが踏みつけた稲のうち、8割程度は復活しました。

さらに、踏み荒らしてだめになった2割は、日光の当たりが良くなったおかげで収穫量が上がるという先行研究も見つけました。

「研究者は、そういう科学的データを根拠に地元と話し合い、農家さんの理解を得て信頼関係を築いていくことが大事だ」と大迫教授は言います。

田んぼの生き物 古来、田んぼには、多様な生き物があふれていた。

ひょうご豊岡モデル

但馬地方の地元住民は、ずっとコウノトリと自然に共生していました。それを基盤にしてコウノトリと共生する地域づくりを進めるコウノトリの野生復帰の取り組みは、後に「ひょうご豊岡モデル」と呼ばれるようになりました。

この「ひょうご豊岡モデル」は、トポフィリア(地元への愛着)とバイオフィリア(生物への愛着)という二つの共感の連鎖により、野生動物と人の共生が促進された例だと評価されました。

 

コウノトリの数も伸びていき

リュウキュウマツに止まる兵庫県豊岡市2013年生れのコウノトリ(沖縄県宮古島)

コウノトリの野生復帰が開始された初期と比べて、最近はコウノトリの個体数もだんだんと増えてきて、北海道から沖縄まで、全国に飛んでゆくようになりました。

兵庫県内でも、但馬地方だけではなく、淡路、加西などでも繁殖しようとするコウノトリが出現しています。

一方で、新たな問題も生じています。

コウノトリは見かけても見守ることが大切

最近は、田園だけでなく集落などでもコウノトリを見かけるようになりました。

「珍しい、綺麗だな」といって、近づいて写真を撮ったり、観察したりする人もいますが、

大迫教授は

「コウノトリは野生動物ですので、ある程度の距離を保って欲しい」と話しました。

だいたい150mは離れて、なるべく人の姿を隠しながら、

コウノトリが驚かないように、静かにそっと見守って欲しいとのことです。

現代に蘇った野外コウノトリの集団

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