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「データがすごい」 情報科学研究科・社会情報科学部 大島 裕明准教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

9月7日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、 情報科学研究科・社会情報科学部の大島 裕明(おおしま ひろあき)准教授です。

 

今回のテーマは、「データがすごい」

大島准教授の専門は、「情報検索、データマイニング、情報デザイン」です。

 

豊かに生活することを支える情報技術をつくる

大島准教授は、社会において人が情報を取得して意思決定を行い、豊かに生活することを支える技術を研究しています。あらゆる情報が交換されるWebにおいて、情報獲得を行う基盤技術である「情報検索」、大量のデータから科学的な分析手法により「知識」を見出す技術「データマイニング」、必要な情報が効果的に受け手に届くように情報を分かりやすく整理する手段「情報デザイン」といった研究分野を基盤としつつ、データベース、機械学習、自然言語処理といった情報学の様々な分野の知見を活用し、さらに、心理学や社会学、経営学なども視野に入れて、研究を行っています。「社会において、情報がどういうふうにあるべきか」を考え、それらの実現に向けて、プログラミングをしたり、AI(人工知能)をつくったりといった取組を進めています。

大島研究室におけるいくつかの研究

 

データが山ほど必要

現在、世間でも流行しているAIですが、AIは、データを山ほど集めて、それらをコンピュータに読ませることによってつくることができると、大島准教授はいいます。とても大きなコンピュータでないとつくれないのではとイメージされる方もいらっしゃるかも知れませんが、私たちが普段使っているようなパソコンでもAIをつくることができるそうです。「AIをつくるには、とにかくデータが大量に必要で、しかも、AIをつくるにあたって役に立つようなデータでないといけない」と、大島准教授はデータの重要性に言及しました。現在、一般的にAIと呼ばれているものの多くが、「何かある種の機能を、機械学習という技術で実現したもの」だそうです。

 

AIというと、将棋の世界で活躍している棋士の藤井聡太さんが、AIを使って将棋の研究をされていることでも知られています。将棋の場合、「こういう場面で、こういうふうに動かしたら、どうも勝つことが多いぞということが分かるデータを、AIに山ほど読み込ませます。全く同じではないけれども、とてもよく似ている局面がきたら、『この場合は、たぶん、ここをこうやって動かしたら良いんですよ』といったことを判断して、『こう動かしましょう』ということをしている。それが、今の機械学習という技術を使ったAIです」「身近な例では、この大学に入りたいなと思って、志望校の入試の過去問を山ほど解いて、予備校がしている模試を受けて、見たことあるぞというふうな問題が本番の入試で出れば、『勝ち』なわけです。でも、AIも全然知らない場面に出くわしたら、『これ、どうしましょう』となります」と、大島准教授の解説は続きます。「AIは、プログラムでなんとか答えを出すように言われているので、答えをひねり出してきます。将棋ソフトに、前例のない、ありえない盤面を見せると『どうしましょう』『とりあえず、これでどうですか』と、これまでに見たこともないような答えを出してくることがあります」人間がつくり出したAIから、未知の世界への広がりが生み出される可能性が感じられるようなエピソードです。

AI(機械学習)のプログラミングを行っている様子

 

AIは人間がつくり出したもの

番組の中で、「AIは、仮想の部分ながらも人間臭く感じられる」という話題が挙がりました。AIが人間臭く感じられることの理由に大島准教授は、「元々人間がつくったデータだからです。人間がAIにデータを読み込ませて『教える』ということが基本です」と答えました。AIは、基本的に人間が教えたこと、過去の模倣を基にして行動や答えを導き出して決めていますが、逆に、必ずしも人間が意図的にAIに悪いことを教えようと思っていなくても、与えられたデータに偶然差別的なものが含まれていたり、データを集めてくるところが偏っていたりすることによって、社会的に間違った判断をするAIができてしまうこともあるといいます。このことから、今、学術の世界では「フェアであること」が非常に重要視されるようになってきており、AIの機械学習のときに使うデータが、いかに社会的公平性が担保されているかどうかを考えないといけないと、大島准教授は語ります。

 

楽しい世の中をつくるデータ分析

アメリカのメジャーリーグで活躍しているエンゼルスの大谷翔平選手の例で、他球団が大谷選手をマークして、打撃に関するデータを集めて打球傾向を分析し、分析結果に基づいた「大谷シフト」と呼ばれる極端な守備体制をとったことが話題になりました。昔は、当時読売ジャイアンツの王貞治選手が打席に立った際に対戦チームが敷いた「王シフト」と呼ばれる守備体制がありました。「王シフトの時代は、最初は勘だったと思いますが、あるときデータ分析してみたら、ライト・右方向によく打っているというのが出てきた。それならば、守備を右側に固めた方が良いのではないかとなった。王選手としては、それをさらに超えてやるといった具合に頑張るという話です。今やデータ分析が当たり前になってきて、極端な守備シフトをとられることが、非常に多くなっています」「データに基づいて、守備側の対策を考えたら攻撃側もその対策を考え、攻撃側が対策を考えたら守備側も対策を考えるといった具合にデータでやりとりをしていますが、非常に人間臭い」と大島准教授は話します。データがいろいろなところに出てきて味気なくなるかというと、そうではなく、データを分析することによって、より楽しい世の中になってきているのではないかと、大島准教授はデータ分析に明るい未来を見据えています。スポーツの分野に限らず、経済学や経営学、化学、物理学など、ありとあらゆる学問分野において、データが非常に大きな役割を果たしています。

野球でもデータ分析が非常に重要

 

AIの役割

大島准教授は、今後の研究の展望として、クリエイティブな部分に焦点をあてた研究をしてみたいそうで、「絵を描くAIが出てきていますが、イラストレーターや画家が今後必要なくなるかというと、決してそんなことはないと思っています。AIを道具として、どのように使うかだと思います。AIの使い方というところで、非常にクリエイティブになれるところがあると思うので、今までの技術の発展と同様に、技術を使うことによって、より人間が面白くて、クリエイティブなものをつくることができるようになるようなことを、研究してみたいです」と語りました。

大島研究室の研究会の様子

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