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「研究活動を通して得たコミュニティの味わい」地域ケア開発研究所 林 知里教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

11月2日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、地域ケア開発研究所の林 知里(はやし ちさと)教授です。

 

今回のテーマは、「研究活動を通して得たコミュニティの味わい」

林教授の専門は、「地域看護」です。

 

地域をケアし、見守る

林教授は、学生時代から双子に関する研究をしています。最近は、高齢者の方を対象に、淡路島にある洲本市の「いきいき百歳体操」の参加者のデータを分析したり、地域や企業の方々と協同して転倒予防や骨折予防に関する研究もしています。また、明石市にあるコミュニティセンターでフレイル予防に関する講演や骨密度測定を行うなど、高齢者の方に自身の健康に関心を持ってもらい、地域の中で、自分たちでできる予防の取組を後押しするという研究を進めています。

林教授が所属している地域ケア開発研究所は、わが国で初めて看護学に関する実践的な研究を推進するための研究所として平成16年に開所し、明石看護キャンパスの敷地内にあります。人をケアするという視点を大切にしており、災害看護と国際看護、地域看護を中心に、世界規模での健康課題に関する研究や、社会のニーズに応え、地域で暮らす方々の健康課題に対して「まちの保健室」などの実践的活動を通した研究を行っています。

タクシードライバーのみなさんを対象とした研究を始めました。

 

地域の力になる-保健師の仕事

林教授は、保健師の資格を持っています。保健師として現在の研究を始めたきっかけについて、「元々は、看護師になりたいなと思って大学に入学しました。4年生のゼミで、病気を持っているお子さんの親の会に参加して、そのことをテーマに卒業論文を書いたのですが、あるお母さんが、『ずっと十字架を背負ったような気持ちで、私はこのまま一生笑うことはないだろうと思っていたけれど、親の会のグループに入ってから人生が変わりました』と話してくださいました。そして、グループで生き生きと活動され、新しくグループに入ってきた人たちに『私も以前はそうだったのよ。でも、今はこんなふうに笑って過ごせているよ』と伝えている姿を見て、『グループには、こんなに力があるんだ』と実感したことが、私が集団というものに興味を持った、はじめの第一歩でした」と、林教授は語ります。

大学4年生のときの小児看護実習の一コマです。みんなとても仲が良かったです。

 

林教授が仕事をする際に大切にしていることは、「見守る」ことだといいます。「地域や集団、個人の方と関わる際に、こちらからあれこれと手を出すのではなく、個人や集団、グループが自分たちで成長していけるように見守って、ちょっと壁にぶつかったり、『もう少しこうしたらもっと良くなるな』というところがあった際に、『黒子としてサポートする』『黒子としてケアする』『できるだけ自分が前に出ないようにする』ということを意識して関わっています」と、林教授は話します。

保健師は、林教授が学生時代に参加した親の会のようなグループをつくったり、「組織化すること」を大切にしている職種で、昨今のコロナ禍の影響で「保健師」という名称が、世間でも少しずつ知られるようになってきました。また、乳児から高齢者といった保健師が関わる対象者のみならず、活動する場も、コミュニティの大小関係なく、様々な場が対象になるなど、保健師の仕事は、対象となるものの幅が広い分野といえます。

保健師時代に住民の方々に呼んでいただいて、「メタボリックシンドローム」について講義をしたときの写真です。

 

双子の研究者が双子の母に

グループの1つとして「双子の親」を捉えた際、「一度に、2人の同じ発達段階の子どもを育てる」という面において、ある意味特殊な子育てで、孤立しやすく、単胎児と比較して虐待のリスクも高いといいます。林教授は、学生時代に双子の親の会に参加して、双子の言語の発達について研究していました。その中で、双子の親の特徴の1つに、双子の言語の発達が単胎児と比較して平均3~4ヵ月程度遅れるというものがあるといい、また、双子の約半数が、2人だけにしか通じない独自の言葉をつくってコミュニケーションをしていることを知りました。

双子の研究をしている林教授ですが、実は自身も双子のお子さんがいます。偶然にも双子を授かり、自身のお子さんもじっくりと観察されたそうです。双子の言語の発達に関する専門家でもある林教授は、自身のお子さんの母語(生まれて初めて覚える言語)を発達させようと、「かなり頑張って話しかけた」結果、「母語も十分発達したけれども、双子独自の言葉も話した」という、言語の発達の遅れとは異なる発達がみられたことに喜びを感じられたそうです。双子独自の言葉に留まらず、情報共有の仕方にも言語を超えるものがあるではないかと思われるほど親よりもお互いのことをよく知っていて、理解し合い、通じ合えているところがあるそうです。

双子の研究で博士号を取得したときの写真です。先輩、後輩、恩師に恵まれ、かけがえのない大学院時代を過ごしました。(前列左:林教授)

 

コミュニティが持つ特性を活かす

2人きりで過ごす時間が長い双子が、2人だけにしか通じない独自の言葉を話すようになる状況を生み出す環境のように、各コミュニティには、それぞれの特性があるといい、「言葉にしても方言であったり、食べ物にしても味の特徴や特性があるなど、コミュニティには、何らかの共通点があります。健康や生活に影響する環境の特性に注目し、それらを活かしながら病気を予防したり、今話題になっているフレイルを予防するための方法を開発することなどが、私たちの研究です」と、林教授は話します。

 

コミュニティから活力をもらっている

林教授が研究を進めている洲本市のいきいき百歳体操は、高齢者ができる限り要介護状態にならずに健康でいきいきと生活を送れるよう、住民が主体となって行う介護予防として始まりました。高齢者が最低でも3人集まると、自分たちで調節可能な重りを使用した体操を自主的に行うグループとして、行政の支援を受けることができます。いきいき百歳体操に参加されている方は、フレイル予防への意識や自身の健康づくりに関心があり、自ら活躍されているケースが多いそうです。そのような中で、林教授は、地域やグループ、コミュニティの方々から自身が活力をもらったり、つながりを実感することで、自分自身が生きやすさを感じるようになったといいます。番組の最後に林教授は、「それぞれのグループの良さというものがあるので、そういったところをこれからも感じていけたら幸せなことだなというふうに思っています」と、笑顔で語りました。

まちの保健室での健康相談の様子

 

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