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公開発表会「兵庫県立大学環境人間学部生が提案する地域企業のSDGsへのアプローチ ~複眼的視点から~」が開催されました

1月19日(金)、じばさんびる(兵庫県姫路市)において、兵庫県立大学環境人間学部SDGsワーキンググループ・龍野商工会議所・西兵庫信用金庫の主催で「兵庫県立大学環境人間学部生が提案する地域企業のSDGsへのアプローチ~複眼的視点から~」と題した公開発表会が開催されました。

 

西播磨地域のSDGsに関する機運を高め、地域経済の発展へ

本発表会は、西播磨地域のたつの市・宍粟市の企業計6社を対象に、環境人間学部の3つのゼミに所属する学生がSDGsに関する取組、商品、サービス等について学生目線から提案することを目的に開催されました。

本発表会にかかる一連のプロジェクトは、本学と産学連携協定を締結している西兵庫信用金庫(本社:兵庫県宍粟市)と龍野商工会議所(兵庫県たつの市)から本学の産学連携・研究推進機構にお声がけいただいたことをきっかけに、環境人間学部でのSDGs研究の蓄積を基盤として昨年3月末から開始しました。

本プロジェクトの主な活動としては、5月から8月にかけて、製造業の企業については工場を見学させていただき、製造業でない企業については事務所で企業概要をお聞きする形で学生による調査が行われました。さらに、10月から12月にかけて、現地見学等の結果を踏まえた詳細なヒアリング調査がオンラインにより行われました。その後、調査結果をもとに研究・分析を行い、各企業への提案内容を導き出し、このたびの公開発表会に至りました。なお、調査させていただいた6社の企業は、従業員数50名から400名程度と様々な規模であり、業種も様々な業種を網羅する形で、西兵庫信用金庫と龍野商工会議所に選定いただきました。

西兵庫信用金庫前で

 

開会にあたり、西兵庫信用金庫 理事長の桑垣喜一氏から開会の挨拶がありました。桑垣氏は「今日は、各事業所がSDGsに関する事業で取り組んでおられることを兵庫県立大学の学生のみなさんが調査・研究され、その発表をしていただけるということで非常に楽しみにしていた。西播磨地域には人口減少の問題があり、また、西播磨地域の企業においては、経済に関する課題を多く抱えており、それらの課題を解決することの1つにSDGsも当てはまるのではないかと思っている」とし、「今回のような発表が、西播磨地域のSDGsに関する機運をより一層高めることにつながり、地域経済の発展につながれば良いなと思う」と挨拶されました。

 

次に、環境人間学部の増原直樹准教授から本プロジェクトに関する概要説明がありました。その中で増原准教授は「本プロジェクトは、ゼミ活動の一環として行われたものであるので、『調査の過程で学生にどのような学びをして欲しいか』について意識したことがある」と言及しました。その内容については「企業と学生の接点が就職活動だけではもったいない。今回のプロジェクトは、テーマを設定して学生の方から企業に対してフラットに意見を言わせていただくという貴重な機会になったのではないか」「WEBサイト上で分かることを現地に行って調べたり、オンラインでお聞きする必要はない。それらを超えたところで、現地に行かないと分からない工場の雰囲気や、どのようなオフィスで、どのような雰囲気で働いているのだろうかというものを目で見て耳で聞き、場合によっては肌で感じるなど『体感する』というリアルな経験を重視した」ことなどを挙げました。

また、増原准教授は今回の調査を踏まえ、「西播磨型企業理念の創出へ」と題し、西播磨地域の企業の方々に共通する良い点及び今後さらに伸ばしていただきたいこととして私案を述べ、「全国的に『近江商人』といえば『三方よし』と言われるが、通常の企業であれば、顧客だけを見ていれば良いとされる。しかし、今回関わらせていただいた6社は、一連の調査を通じて『面倒をみる範囲が広い』と感じた。それが西播磨地域の企業の優位性・特性であるならば、そこをSDGs達成に向けて伸ばしていく。つまり、狭い利害関係者から広い利害関係者に向けて事業・ビジネスを展開できる。そのような企業を伸ばし、増やしていくことができれば良いのではないか」と話しました。

 

学生グループによる発表

第一グループ 中嶌ゼミ

まず、2005年に本学と産学連携協定を締結している1948年創業の西兵庫信用金庫と、リフォームや古民家再生等を行っている総合建築請負業の株式会社山弘(本社:兵庫県宍粟市)の調査を行った中嶌一憲教授のゼミに所属する3年生の4名が2社への提案を発表しました。主には「TCFDの賛同及び周知」「コンポストの作成・仲介」「空き家改修と金融教育」の3点を提案し、これらを通じて、経営基盤の拡大や地元の一次産業の繁栄につながるなどとして、4番「質の高い教育をみんなに」や8番「働きがいも経済成長も」、11番「住み続けられるまちづくり」など6つのSDGs目標を達成できると発表しました。

※TCFD…気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略。企業が気候変動関連の取組等に関する財務情報を開示する枠組みのこと。

※コンポスト…家庭から出る生ごみや落ち葉などの有機物を微生物の働きにより発酵・分解させ堆肥をつくる容器のこと。

 

第二グループ 増原ゼミ

続いて、1925年創業でエネルギー関連機器や環境整備関連機器などの金属製品を製造している井河原産業株式会社(本社:兵庫県たつの市)と、畳施工・壁紙施工の省力化機器や厨房機器等を製造販売しているKLASS株式会社(旧:極東産機株式会社、本社:兵庫県たつの市)の調査を行った増原准教授のゼミに所属する3年生の4名が発表しました。KLASS株式会社に向けては、「人材面:雇用の増加・働きやすい環境づくり」「エネルギー面:エネルギーを有効的に利用する」「災害面:有事に安心を」の3点を挙げ、3番「全ての人に健康と福祉を」や7番「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」など5つのSDGs目標を達成できるとし、地域に機械やエネルギーを供給する地産地消や、他社(製造業)との連携などを提案しました。井河原産業株式会社に向けては、脱炭素エネルギーへの貢献を前面に出したブランド化や事務所の統合、女性が快適に働くことのできる環境づくりなどを提案し、5番「ジェンダー平等を実現しよう」や9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」など5つのSDGs目標を達成できると説明しました。

 

第三グループ 高橋ゼミ

最後に、1953年に創業し、小麦でん粉や小麦たん白などの食品素材を提供している長田産業株式会社(本社:兵庫県宍粟市)と、1580年創業で主に醤油製造販売を行っているヒガシマル醤油株式会社の2社を調査した高橋綾子教授のゼミに所属する3年生の2名が発表しました。グループのメンバーは、2社へのヒアリング調査結果をワークライフバランス、地域社会貢献、商品開発、リサイクルの4つの観点から分析し、そこから提案内容を導き出しました。長田産業株式会社に向けては、NPO法人や大学など他組織と連携しての食育イベントの実施や、企業イメージが伝わりやすい発信の実施などを提案しました。ヒガシマル醤油株式会社に向けては、食育イベントの実施をはじめ、ご当地スープの開発や日本の伝統食の継承と倫理的責任を果たされている企業であるという観点から、京都営業所による京都の町とエシカル消費のイメージづくりに向けた情報を発信することなどを提案しました。

※エシカル消費(倫理的消費)…消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。

 

各グループの発表後には、企業の方々からコメントをいただきました。企業の方々からは、提案に対する質問をいただいたり、提案のあった取組について「すぐに実施したい」「面白い提案をいただいた」「われわれが気づいていないことをズバリ言われた」「これからもアドバイスいただきたい」などのコメントをいただきました。

 

発表後、コメンテーターの方々から3グループの提案に対して、良かった点や改善点に関するコメントをいただきました。

まず、兵庫県産業労働部地域経済課の早川英梨氏から「ひょうご産業SDGs認証事業の概要と認証企業取組例」と題して、兵庫県産業労働部におけるSDGsに関する取組について紹介いただいた後、3グループに向けてコメントをいただきました。

良かった点については、エビデンスに基づいた提案であったことや先行事例が提示されていたこと、ヒアリング調査から既に企業においてどのような取組がなされているかを分析していたことなどを挙げられました。改善点については、発表構成の流れについてや、「なぜこの提案をしたのか」という動機付け、SDGsのゴール設定をどのような基準で行ったかの提示があれば良かったことなどを挙げられました。

 

環境省近畿地方環境事務所の阪本悠佑氏からは、良かった点については、TCFDの宣言をされている企業を分析して定量的に評価していたことや、「地域の中で循環させ、その地域で新しく経済を活性化させる」という発想があったこと、消費者としての具体的なコメントが提案の中に盛り込まれていたことなどを挙げられました。改善点については、もう少しピンポイントで深堀した方が良かったことや、提案内容に具体性がある方が良かったことなどを挙げられました。

 

最後に、龍野商工会議所 会頭でKLASS株式会社 代表取締役社長の頃安雅樹氏から閉会の挨拶がありました。頃安氏は「龍野商工会議所は昨年2月、退官直前の太田前学長に講演いただいたことをきっかけに、昨年5月に兵庫県立大学と産学連携協力協定を締結した。従って、本件が連携協定に基づく初の連携事業となった。テーマであるSDGsは、今や企業において最も最重要の課題の1つである。私の私見を申し上げるならば、すべての企業の経営理念において、SDGsの趣旨にそぐわないものはないと思っている。つまり、経営理念の数だけ企業のSDGsへの貢献の在り方があると考えている。たつの市・宍粟市の企業6社が、学生のみなさんから本日のような様々な提案をいただいたことは、学生のみなさんとつながる大変貴重な機会となった。このつながりを活かすためにも、学生のみなさんの就職活動の際には、たつの市・宍粟市の企業にもぜひ目を向けて欲しい」と話されました。

 

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