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「データサイエンス系学部の現状と展望、生成AIとの共存社会を考える」大阪成蹊大学×滋賀大学×兵庫県立大学 3大学データサイエンスシンポジウム開催

8月2日(水)、大阪成蹊大学駅前キャンパス(大阪市東淀川区)において、大阪成蹊大学主催、本学と滋賀大学の共催で「3大学データサイエンスシンポジウム-データサイエンス系学部の現状と展望」が開催され、近畿2府4県の高校の情報科教員や大学教員をはじめ、データサイエンス系学部への進学を考える高校生とそのご家族、参加大学の学部生、連携企業・自治体の方々など約320名の方が参加されました。

 

本シンポジウムは、2023年4月にデータサイエンス学部を開設した大阪成蹊大学と、2017年4月に全国で初めてデータサイエンス学部を開設した滋賀大学、2019年4月に全国で3番目にデータサイエンス系学部である社会情報科学部を開設した本学が協力して開催されたもので、高校との連携や学部卒業後の進路を含むデータサイエンス系学部(学科)の教育・人材育成についての情報交換、課題の把握と共有、課題解決に向けて検討する機会として行われました。また、データサイエンス系学部を有する関西の3大学が一堂に会するのは、今回が初めてです。

当日は、近年新設が相次ぐデータサイエンス系学部(学科)を概観しつつ現状の課題を分析し、教育・研究の可能性を探り、また、昨今世間でも話題になっている「ChatGPT(チャットGPT)」を代表とした生成AIとどのように向き合うべきかを考える場として、3大学の教員によるパネル討論が行われました。

 

はじめに、大阪成蹊大学の中村佳正学長から挨拶がありました。中村学長は、データサイエンス学部開設にあたり、府内の高校を訪問された際に多くの高校生や教員からデータサイエンス学部と情報系学部との違いについて質問されたことや、そもそも大阪ではデータサイエンスについてあまり知られていない等の問題があることから、これらの根源的な問題に取り組むべく、3大学で本シンポジウムの企画をしたことを紹介されました。中村学長は「このシンポジウムでは、なぜ今データサイエンスなのかという元々の問題点とともに、生成AIをいかに利活用していくかという課題について、ご議論いただきたいと思っている。時間にしては3時間という短い時間かも知れないが、関西におけるデータサイエンスの大きな一歩となるような会にしたいと思う」と挨拶されました。

大阪成蹊大学 中村佳正学長

 

第1部 データサイエンス系学部の紹介

続いて、3大学の学部長等から、概要や理念、カリキュラムの特徴、卒業生の進路、特色のある取組など、自校のデータサイエンス系学部に関する紹介がありました。

 

まず、滋賀大学データサイエンス学部の椎名洋学部長が登壇され、「滋賀大学DS学部・研究科の現況」と題して、滋賀大学のデータサイエンス学部・研究科が今どのような形で教育を行っているかについて講演されました。椎名学部長は、滋賀大学では体系的に学ぶべき知識として、統計学と情報学、ドメイン知識(データが生まれる仕組み)の3つを学びの柱とし、最終的にはデータから「社会の役に立つ」「人を幸せにする」などの何らかの価値を生み出す「価値創造」に重点を置かれていることや、社会人のリスキニングに力を入れられていることなどを紹介されました。

※リスキニング…経済産業省では「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義している。

滋賀大学データサイエンス学部 椎名洋学部長

 

次に、本学の社会情報科学部の笹嶋宗彦副学部長が登壇し、「兵庫県立大学社会情報科学部のご紹介 実践に軸足を置くデータサイエンス教育」と題して講演しました。笹嶋副学部長は「私たちは、入学してくる学生には『データの単なる分析をする人』ではなく、『どのデータを分析すれば、課題を解決することができるのかが分かっているデータサイエンティスト』になって卒業していってもらいたいと思っている」として、本学の社会情報科学部では実践に軸足を置いていることや、実社会の中で課題を発見するところから始まる「課題解決力」、そこからデータを収集して上手く適用する「IT系スキル」、データをきちんと解釈し読み取る力「分析系スキル」、最終的に分析の結果をもう一度社会に戻して見つけてきた課題を解決する「ビジネス系スキル」の4つの力が大事であると考え、1、2年生の頃から演習科目を多く入れていることを紹介しました。また、本学の前身である神戸商科大学は歴史があり、実業界における様々なところで卒業生が活躍しており、協力を仰ぎやすい環境であることから、実践的な科目においては、データや現場を貸していただくなどのご協力をいただきながらカリキュラムを組んでいることについても触れました。講演の最後に笹嶋副学部長は、「学生には、『世の中を分析する人』ではなく、『世の中を良くしていく人』になって欲しい。そういう心構えで卒業していって欲しいという教育を行っている。データサイエンスやAIといったものは、カリキュラムの中で教えてはいるが、あくまで万能ではなく道具であると理解していること。データについても、ないことの方が多いので、なければ自分で集め、分析道具がなければ自分でプログラミングするというたくましさを持った上で、実社会とコミュニケーションをして、全員が納得する解決方法を考えて実施できる『社会実装力』を持った人になって欲しいと願っている」と述べました。

社会情報科学部 笹嶋宗彦副学部長

 

最後に、大阪成蹊大学データサイエンス学部の吉川正俊学部長が登壇され、「データサイエンス学部についてのご説明」と題して講演されました。吉川学部長は、「データサイエンスというのは、様々な無数の応用分野を支える『下支え』であると言えるのではないか。下支えが非常に分厚く盤石なものであれば頼もしいが、薄ければ支えにならない。教育で言えば、しっかりとしたデータサイエンス教育をしなければ社会に通用しないということになる」と言及され、「専門の教員による体系的なカリキュラムに基づく密度の濃い教育をしなければ、しっかりとしたデータサイエンス教育にはならない」と強調されました。その上で、大阪成蹊大学では、一般社団法人情報処理学会が2021年4月11日に公開したデータサイエンス・カリキュラム標準(専門教育レベル)を参考にしてカリキュラムを組まれるなど、質の高い教育を行っていこうとされていることを紹介されました。

大阪成蹊大学データサイエンス学部 吉川正俊学部長

 

第2部 基調講演

基調講演では、滋賀大学の竹村彰通学長が登壇され、「日本におけるデータサイエンス系学部・大学院の現状と展望」と題して、相次ぐデータサイエンス系学部の創設や、データサイエンス系学部・大学院を取り巻く近年の国の動きなどについてお話しされました。講演では高等学校の情報教育の影響についても触れられ、竹村学長は「情報Ⅰが大学共通テストで課されることになるので影響は大きいのかなということと、大学としては、今後そうした学生が入ってくるので、カリキュラムを変えていかないといけないかなというふうに思っている」と話されました。

滋賀大学 竹村彰通学長

 

第3部 パネル討論

第3部では、大阪成蹊大学データサイエンス学部の小山田耕二学科長の司会で「生成AI」をテーマに、パネル討論が行われました。パネリストとして、本学からは社会情報科学部の山本岳洋准教授が、滋賀大学データサイエンス学部の南條浩輝教授、大阪成蹊大学芸術学部の糸曽賢志学部長とともに登壇しました。各パネリストからの話題提供後、生成AIの教育への利活用について活発な議論が行われ、質疑応答では会場の来場者からも質問がなされました。

山本准教授は、「検索から生成へ:『調べもの』ツールとしての付き合い方」と題して、「今の大学生はどの程度ChatGPTを使っているのか」「『調べもの』ツールとしてChatGPTを利用する際にどのようなことに気を付けるべきか」について話題提供しました。山本准教授は、「ChatGPTを検索ツールとして使うときには、当たり前ではあるが『それは本当か。他に方法はないのか』という態度で使うことが非常に重要ではないかと思う。教育というところで考えると、学生にそのような力をどのように身につけさせるか。研究としても、そういうところをサポートすることが重要ではないかと思っている」と話しました。

社会情報科学部 山本岳洋准教授

 

大阪成蹊大学データサイエンス学部 小山田耕二学科長

 

滋賀大学データサイエンス学部 南條浩輝教授

 

大阪成蹊大学芸術学部 糸曽賢志学部長

 

 

最後に笹嶋副学部長から、閉会に際して本シンポジウムのまとめとしての挨拶がありました。挨拶の中で笹嶋副学部長は、「データサイエンス系学部にとっては、これからの数年間が勝負の年だと思っている。データサイエンスという概念自体がまだはっきりしていない、高校生にデータサイエンスのことがまだまだ知られていない、データサイエンティストがどんな職業かも知られていない状況の中で、データサイエンス系学部から卒業生が世の中に出て行って、社会で活躍をし始めている。彼らが活躍できるかどうかということが、今後、データサイエンティストあるいは育成している学部、大学への評価につながってくると思っているので、われわれは大変な危機感を持って大学の運営にあたっている。今日お越しいただいたみなさまにお願いしたいことは、データサイエンスに興味を持ったら、多くの大学からオープンキャンパスの機会や教育の体験プログラムなど、様々な形で大学の教育を体験できる機会が提供されているので、ぜひご参加いただきたいと思う。併せて、実学に軸足を置いて、社会で活躍できる人材を育成していきたいというところが、3大学の共通点であったというふうに私は捉えている。そういったところで、実学の教育は、大学だけではできず、企業や自治体、地域のみなさまのご協力を得て、ようやく学生に対して実践的な教育ができるというのが、データサイエンス系学部の置かれた実情である。ぜひ、そういったことに対して関心を持っていただき、ご協力いただければと思う。高校生のみなさんは、これからの夏休みに向けて、いろいろな大学でオープンキャンパスが開催されるなどの情報公開が行われるので、ぜひ見に行っていただいて、自分が関心を持つ教育や研究をしている大学はどこかなと、自分の足で探して回っていただいて、学んでいただきたいと思う」と述べました。シンポジウム終了後は、情報交換会も行われ、盛会のうちに終了しました。

 

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