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「地震に強い建物を模型とシミュレーションで体験しよう!」減災復興政策研究科 ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHIを開催しました

8月8日(火)、神戸防災キャンパスにおいて、「令和5年度ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI『地震に強い建物を模型とシミュレーションで体験しよう!』」を開催しました。

 

研究者から科学の興味深さや面白さを発信

「ひらめき☆ときめきサイエンス」は、独立行政法人日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)の一環として、全国の国公私立大学や大学共同利用機関、高等専門学校等の研究機関が小中学生・高校生を対象に開催しているものです。研究者が科研費により行っている独創的・先駆的な研究の中に含まれる科学の興味深さや面白さを、講義や実験等を通じて参加者に向けて分かりやすく語りかけ、また、参加者が研究者自身の歩みや人柄に直に触れることにより、学問の素晴らしさや楽しさを体感することができるプログラムが用意されています。

 

このたび、減災復興政策研究科で開催された本プログラムは、中学生・高校生(保護者の方の同伴可)を対象に、「地震に強い建物を模型とシミュレーションで体験しよう!」をテーマとして、地震国である日本における建物の耐震設計の重要性や、設計者がどのように考え、地震に強い建物を設計しているのかについて、講義で学び、模型を作成するなどの実習を通して体感することで、科学の楽しさを知ってもらうことを目的に行われました。また、本プログラムは、環境人間学部と神戸大学大学院工学研究科建築学専攻の協力を得て実施されました。

 

開講式・講義「地震に耐える建築」

はじめに、本プログラムの実施代表者である減災復興政策研究科・研究科長の永野康行教授が開講にあたっての挨拶とオリエンテーション、科研費に関する説明をしました。オリエンテーションの中で永野教授は、メモを取ることの重要性について言及し、「今日みなさんが感じたことや疑問に思ったこと、面白かったことなど、いろいろ自由に書いてください。人間は、覚えておきたいことも忘れていく生き物です。でも、覚えておきたい。メモをしていれば、それを見て芋づる式に思い出すことができます。ですので今日、私が説明したことや、みなさんが作業をする中で大事だと思ったことは、ぜひ書いてみてください」と、配布した冊子内の白紙スペースにメモをとることを勧めました。

 

講義「地震に耐える建築」では、永野教授により「地震に耐える建築」「中小地震に対する設計方針」「大地震に対する設計方針」「地震に耐える構造要素」「建築士の種類」に関する講義が行われました。講義の中で永野教授は、地震に耐える建物には「強度型」と呼ばれる低層建築物と、「靭性(じんせい)型」と呼ばれる高層建築物の2種類があることを紹介しました。参加者は、これらの建物が地震力を受けた際の耐え方を体感することのできる「地震の耐震建物体操」を2人1組になって体験しました。

 

体験型講義「建物の揺れを観察しよう」

続いて行われた体験型講義には、神戸大学大学院工学研究科建築学専攻の向井洋一教授が登壇されました。この講義では、地震により建物に生じる揺れの特徴を理解することを目的に、参加者は配布された「振動模型を使って固有周期・共振現象を体験するための学習キット」を各自で組み立てて振動模型をつくり、模型の揺れ方を観察しました。

 

参加者は、教員や学生のサポートを受けながら振動模型を組み立てていきました。

 

模型の動きを観察

模型の梁(はり)を水平方向に軽く押し、模型が左右に周期的に振動する様子を観察

 

模型を横置きし、模型の「剛性(建物に水平に働く力に対する変形のしにくさ)」を計測

 

再び模型を水平に置き、錘(おもり)を取り付けて模型の「固有周期(建物の特性で定まる固有の速さで振動する周期)」を計測

 

その後、模型などに地震と同じ地面の揺れを与える実験装置「震動台」を用いて、固有周期が異なる複数の振動模型に対して、地面の揺れの周期を変化させながら振動を与えたとき、それぞれの振動模型がどのように揺れるのかを観察しました。

 

講義では、計算により振動模型の固有周期を求める場面もありました。その中で向井教授は、数学や物理を学ぶことの大切さについて触れ、「今、固有周期を求めるために使った数式は、実験ができない建物の周期を評価するときに使うことができます。しかも、正しい答えをわれわれに与えてくれます。今、みなさんは数学や物理を『こんなの、何のために使うんやろう』と思いながら勉強しているかも知れませんが、実際に建物を建てたり、安全性を守るというときに数学や物理という学問が役に立ちます。今は『つまらないな』と思っても、将来使えるようになると理解してしっかり勉強してください」と参加者にメッセージを送りました。講義の最後に向井教授は、「振動模型を使った揺れの観察を行ってきましたが、このキットを使えば、自分でいろいろと条件を変えた実験ができるようになっていますので、ぜひ実際の建物をイメージしながら、周期が変わったり、地面の揺れが変わったらどのようなことが起こるかという実験をして、より深く理解して、経験を積んでいただければと思います」と話されました。

 

実習➀模型作成「強い骨組みを模型で作ってみよう」

実習➀には、神戸大学大学院工学研究科建築学専攻の水島靖典准教授が登壇されました。この実習では、どのような骨組みが強いのかを理解することを目的に、参加者は4つのグループに分かれてパスタで骨組み模型(パスタブリッジ)を作成し、骨組みの強さを体感する実験を行いました。

グループに分かれて作業を行う前に、水島准教授から建物を構成する部材(パスタ)の動きや、これから作る模型の骨組み「トラス構造」に関する解説がありました。

※トラス構造…梁等の部材を三角形の組合せでつくられた骨組みのこと。

 

グループに分かれて骨組み模型を作成

 

完成した4種類の骨組み模型に荷重をかけて耐力実験を実施し、各模型の強さを確認しました。

 

実習➁「地震後の建物被害調査」

実習➁には、再び永野教授が登壇し、木造家屋を対象とした「建物被害認定調査 第1次調査」について解説し、その後、参加者は手計算によって調査の手順の流れを体験しました。

 

参加者は、配布された三角定規を使って壁の面積等の計算に取り組みました。

 

手計算による算出後、参加者には第1次調査の一連の計算を自動的にすることができる計算式が設定されたMicrosoft社のExcelのファイルが配られました。その上で永野教授は、「このファイルは、数字を入れれば答えが出る仕組みになっています。でも、ぜひ今後いろいろなことをするときには、一度は自分で『こうやっているのか』と手順をきちんと追いかけながら実践してみることを強くお勧めします。その上で、このような便利なツールやソフトウエアを使ってみてはいかがでしょうか」と自動的に計算することのできるソフトにだけ頼るのではなく、自身の手で計算することの大切さについて述べました。

 

クッキータイム・ディスカッション、修了式

クッキータイム・ディスカッションでは、クッキーを食べながら、この日1日の学びについて参加者同士で、あるいは、教員や学生を交えて振り返りを行いました。講座の最後に修了式が行われ、永野教授から参加者1人ひとりに修了証書「未来博士号」が手渡されました。永野教授は「今日の講座を受講していただいたことは、みなさんの経験になったと思うので、大切にしていただきたいと思います。今日の講座を通して科学の面白さを感じていただいて、また、みなさんの興味を膨らませていただく一助となれば、今日のプログラムを主催させていただいた者としては非常に嬉しいなと思っています」と挨拶し、講座を締めくくりました。

 

参考 本プログラムのテーマと関係する科研費

【 協創的構造設計法による新しい設計支援システム 】

研究期間:2012年度~2014年度

研究種目:挑戦的萌芽研究

研究概要:実際の建物性能との関わりを最重視した構造設計という「人間の行為」における論理化を大きな目的としている。ここには、設計者の判断という従来では説明されてこなかった部分も含まれている。本研究は、構造設計の様々な場面(フェーズ)における構造設計者の意思決定を真の意味で支援し、構造設計される架構のいっそうの高性能化をはかるための「協創的構造設計法」を構築することを目的としている。ここでの「協創」とは、構造設計者(人)と設計支援システム(計算機)が「協力して創生する」ことを意味している。

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656326/

 

【 建築物の構造解析と避難解析との双方向評価によるキーエレメントデザイン 】

研究期間:2016年度~2018年度

研究種目:基盤研究(B)

研究概要:大地震の発生時に建築物の中から全ての利用者(滞在者)が負傷せずに安全に退避できるように、正確なシミュレーションに基づく避難計画が重要である。一方、人的被害や避難障害は、直接的には建物に付属する什器や内外装材(非構造材)等の損傷に起因している。ところが、非構造材の挙動はバラつきが大きく、数値モデル化した損傷シミュレーションを行っても現象を正確に予測できない問題がある。そこで、本研究では、非構造材の損傷リスクを構造解析と避難解析による双方向視点から相補的に評価し、人的被害回避のための非構造材のキーエレメントデザインを提案する。

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03124/

 

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