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「ポストコロナの今、あらためて健康を考える」 食未来エクステンション講座ベーシックコースを開催しました

9月25日(月)と9月29日(金)の2日間、姫路環境人間キャンパスにおいて、令和5年度兵庫県立大学「食未来エクステンション講座」ベーシックコースを開催しました。

ベーシックコース冒頭挨拶の様子

 

食と栄養の未来を考える-食未来エクステンション講座とは

環境人間学部 食環境栄養課程では、食と栄養の専門家が最新知識と実践経験から社会における諸問題を解析して、最新トピックスを分かりやすく解説するとともに、食と栄養の未来を受講者の方々と一緒に考えていく「食未来エクステンション講座」を開催しています。本講座は、環境人間学部内に設置されている先端食科学研究センターの活動の一環として実施しているもので、ベーシックコースとエキスパートコースがあります。今回開催されたベーシックコースは、姫路市の「姫路市オープンカレッジ」との同時開催となっており、「ポストコロナの今、あらためて健康を考える」をテーマに、食環境栄養課程の教員4名により講演が行われました。例年、募集人数を大幅に上回る申し込みがあり、今年度も抽選で受講者を決定しました。また、本講座は生涯学習と地域貢献活動としても位置付けており、受講者には受講回数に応じて昇級・昇段する「食未来マイスター」の名称を付与しています。

 

9月25日(月)

第1回「心身の健康の秘訣は適度なストレス~野菜の研究からわかったこと~」村上明教授

第2回「食品添加物を考える」有満秀幸教授

 

9月29日(金) 

第3回「“いつ”食べるかで変わる体内時計」半澤史聡助教

第4回「知っていますか、ミネラルと健康」伊藤美紀子教授

 

第1回「心身の健康の秘訣は適度なストレス ~野菜の研究からわかったこと~」

第1回には、フィトケミカルによるホルミシス効果や、フィトケミカルによる様々なストレス応答を詳細に解析することで「異物であるフィトケミカルがなぜ健康効果を示すのか」の解明に向けて研究している村上教授が登壇しました。私たちの日常生活において、猛暑や新型コロナウイルスなど多種多様な環境要因がストレス源になっており、一般的に「ストレスは悪いものである」と考えられています。しかし、生物は環境に応じて性質を変化させる基本的な適応機構を持っており、また、ストレスの強度が適応範囲内であれば、繰り返しストレスに晒されることで、むしろストレス耐性が強化されるといわれています。一方、野菜に含まれるフィトケミカルの一種であるポリフェノールは、脂肪を燃やす効果などで注目されている物質群ですが、食品添加物や薬品などと同様に、ポリフェノールはヒトにとって異物であることや、最近の研究では、ポリフェノールに対する適応機構が脂肪燃焼などの機能性に関与することが明らかにされつつあることなど、村上教授は、こうした野菜成分の新しい作用機構について解説しました。

※フィトケミカル(phytochemical)…体脂肪を減らす、あるいは動脈硬化を予防する効果などがあるとされている物質群

※ホルミシス効果…適度なストレスは身体に良いという概念

 

第2回「食品添加物を考える」

第2回には、食品における危害因子の1つである微生物学(細菌学)を専門としている有満教授が登壇しました。有満教授は「多くの食品で目にする食品添加物は『体によくない化学物質』というイメージが強いが、本当にそうなのか?無添加であれば安心なのか?」という視点に立ち、いろいろな食品添加物がどのような目的で使われているのか。また、その安全性はどのように評価され、実際の使用量はどのように決めているのか。そして、それらの調査をどのように行っているのかについて説明しました。併せて、食品添加物がない場合、食生活がどのように変わる可能性があるのかについても専門の微生物学や食品ロス問題の観点から取り上げ、受講者の方々に食品添加物について考えていただく機会としました。

 

第3回「“いつ”食べるかで変わる体内時計」

第3回には、時間栄養学を専門とし、体内時計を整え、健康を保つためには「いつ食べれば良いのか」について研究している半澤史聡助教が登壇しました。生物には約24時間周期の体内時計が備わっており、光と食事のタイミングによって調節され、適切なリズムを保つことが健康にとって非常に重要であることが知られています。しかし、現代のような24時間社会では、食事のタイミングが不規則になりがちであり、これによって引き起こされる体内時計の乱れは、様々な健康問題の原因となっています。そのため本講演では、半澤助教から、食事のタイミングが健康にとっていかに重要であるかについて、最新の時間栄養学の研究を紹介しました。また、最近世の中で広がりつつある「16時間断食」という減量法に科学的根拠があるのかどうかについてや、ライフステージ毎の時間栄養学の課題について解説しました。

 

第4回「知っていますか、ミネラルと健康」

第4回には、臨床栄養を専門とし、管理栄養士の立場から、栄養が大きく関わる病気の生体内での調節を明らかにし、予防や改善につながる栄養療法について研究している伊藤教授が登壇し、ミネラルと健康に関する身近な話題と最新の話題を紹介しました。ミネラルは、体の構成成分や健康の維持に重要な栄養素で、体では合成できないため、食物から摂取する必要のある必須ミネラルが16種類あります。代表的なものとしては、カルシウム、鉄、亜鉛、ナトリウムなどがあります。講演の中で伊藤教授は、「『ミネラル』というと、みなさんは何を思い浮かべますか」と受講生に向けて問いかけ、「ミネラルはエネルギー源となるか」「熱中症予防に必要なミネラルは何か」「水のミネラル分(硬度)は料理に影響するかどうか」「日本人に不足しているミネラルは何か」「日本人にとって摂り過ぎに注意したいミネラルは何か」「血圧を上げるのは『塩』なのか」「ミネラルは、できるだけたくさん摂取するのが良いのか」について紹介しました。

 

本講座を企画・運営する環境人間学部の伊藤教授と金子一郎准教授は、「受講者の方々は、両日ともに大変熱心に受講され、多くの質問が教員に寄せられたことからも関心度の高さがうかがえました。10月から開講している食未来エクステンション講座エキスパートコース、また、12月7日(木)に姫路環境人間キャンパスで環境人間学部創設25周年記念事業の一環としても開催する25周年記念事業シンポジウム『令和5年度食未来エクステンション講座』とあわせて、今後も食・栄養分野から地域貢献の取組を行っていきたいと思います」と話しています。受講いただいた皆様、ありがとうございました。

 

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