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「人工知能や機械学習におけるモデル化技術」 情報科学研究科・社会情報科学部 川嶋 宏彰教授

本学ではラジオ関西との共同企画で、教員が取り組む先進的・特徴的な活動を広くPRするために、毎月1回本学の教員が、ラジオ関西番組「水曜ききもん」にてパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

2月7日(水曜日)放送の「水曜ききもん こちら兵庫県立大学です!」に登場するのは、情報科学研究科・社会情報科学部の川嶋 宏彰(かわしま ひろあき)教授です。

 

今回のテーマは、「人工知能や機械学習におけるモデル化技術」

川嶋教授の専門は、「機械学習、行動分析、対話・時系列モデリング」です。

 

データ科学と計算科学で社会課題の解決や新たな価値を創造

川嶋教授が教育・研究活動を行っている情報科学研究科は、神戸市中央区のポートアイランドにある理化学研究所スーパーコンピューター「富岳」に隣接する神戸情報キャンパスと、社会情報科学部がある神戸商科キャンパスの2か所にまたがっており、社会情報科学部に接続する大学院として位置づけられています。情報科学研究科では、データ科学と計算科学(シミュレーション)を基盤とした広い視点から、自然科学・社会科学も含め、情報セキュリティや健康医療科学など幅広い応用分野における諸課題に取り組むことのできる知識・技術を学ぶ機会を提供しています。

その中で川嶋教授は、画像や映像の認識、機械学習をはじめ、様々なセンサデータを扱い、これらの基礎技術を応用して、人の生活や学習を支援する「人と機械のインタラクション(相互作用)」や、魚の群れなどの「生物のインタラクション」、また、群ロボットに関する研究を行っており、様々なインタラクションの計測・分析・モデル化を通じて「知能とは何か」について探究しています。

社会情報科学部(学園都市の神戸商科キャンパス)での機械学習講義の様子

 

電気と機械が好きだった子ども時代

川嶋教授の子ども時代、自宅には様々な本があったといい、とりわけ学研まんがの電気関連の本がとても好きだったといいます。「工学関係の研究者の子どもの頃の電気にまつわるエピソードといえば、『結構コンピューターを触っていました』『電子工作をしていました』という方が多いですが、私はそういうことは全然していなくて、ただ、機械的なものが面白いなと思っていました。パソコンにきちんと触ったのも大学に入ってからでした。子どもの頃、家に学研まんがシリーズの電気関連の本があったのですが、『これを手で回すだけで光がつくのか』といったことや、発電の仕組みなど、すごく面白いなと思いながら読んでいました。おそらくそれは、今につながっている大きなきっかけかも知れません。豆電球をつけるといったこともとても面白かったですし、レゴのライトブロックを『すごい!』と思いながら光らせていました」と川嶋教授は当時を振り返ります。大学は京都大学工学部電気電子工学科に進学、研究者になろうと決めたのは、大学院に進学してからだったと話します。

 

われわれ人間も普段していること-モデル化とは

川嶋教授は、AIに関する研究の中で山ほど出てくるという、今回のテーマにもある「モデル化」について取り上げ、「モデルとはどのようなものかというと、実はわれわれ人間も普段していて、生まれてこの方しているはずのことです。例えば、物を手から離すと落ちますよね?生まれたばかりの子どもは『落ちる』という事象を知らないと思いますが、パッと落ちたら『あ、落ちた。壊れた』といった具合に、やっているうちに『こうなるのか』というものが頭の中にできてくると思います。最初は誰しも『こうしたら何が起こるのか』といったものは持っていないはずです。ところが、少しずつ『こういうふうにボールを投げたら上手くいく』とか、テニスボールを打つときに『このタイミングでラケットをグッと握ったら上手く跳ね返る』といったことが、実際にしたり見たりしているうちに分かる。そして、頭の中で予測できるようになる。これが一種のモデルというものです。そうすると、われわれはモデルというものを普段経験からいろいろ獲得していますが、『そのモデルを機械も獲得できないか』というものが機械学習で、『コンピューターが学習する』という分野になります」と説明しました。

人は観測や経験を通じて内部にモデルを獲得している

 

また、機械学習については、「人間がどうやって学習しているかについては、様々な研究が行われているものの、『よく分からないけれどモデル化できている』と言われています。機械でそれを実現する場合、『学習の仕方をモデル化するためのモデル』のようなものがあれば、それで機械が学習できるはずだと。機械学習は『何かをモデル化するための、ある種のモデル』で、人間の学習の仕方とは異なるかも知れないけれど、それで機械に学習させると、できることが増えてくるということです。人間は、機械に『どうやって覚えるのか』『どうやって学習するのか』という『学習の仕方』だけを教えてあげます。学習の仕方だけを教えてあげることのできるプログラムを書いてあげたら、あとはデータをたくさん見せてあげると勝手に学習してくれます。そして、その大量のデータを用意するのも大変なので、機械が『自分で動き回って経験してデータを獲得する』という方法もあり得るので、現在は、そういうやり方も組み合わせながら機械学習が行われています」と川嶋教授は紹介しました。

機械学習とモデル化:機械学習はモデル獲得の仕組みをモデルしている

 

生物はロボットのようにはいかない

川嶋教授は現在取り組んでいる研究の一つに、群れに関する研究を取り上げ、「研究対象の群れには、動物の群れとロボットの群れがあり、動物の群れの方は、生物の研究をされている先生と組んで研究しています。例えば、魚の群れの研究では、魚の動きや、リーダーがいない中でどうやって上手く集まって群れで泳いでいるのかなどの仕組みを、それこそ『モデル化する数式』をどう表せるのかを含めて考えるときに、機械学習や人工知能の技術も使って魚の動きを画像で撮っておきます。最近は、水槽に入れた数匹~十数匹程度でしたら、撮っておいた画像からそれぞれの魚の位置などを全部自動で追跡できます。そこから『個々の魚は互いに周囲の魚をどのように見て動いているのか』というようなある種のルールを上手く自動で見つけられないかなという研究をしています」と紹介しました。最終的には、生物と一緒に泳いでくれるAIの群れの発明や生態を解明したりするなどのニーズにつなげたいとする一方で課題もあるといい、「ロボットの研究では、こちらがプログラムしたとおりに大体動いてくれて、思ったとおりの結果がよく出ますが、生物には気分があり、その日ごとに気分が違うので全く反応してくれないときは全然見向きもしてくれません」と語り、感情を理解するために心理学を取り入れるなど、研究に関連する周辺分野の学問も学ぶ必要があることについて言及しました。以前していた研究の中には、漫才や落語から人間の対話における間の取り方を分析するというものがあったことも紹介し、「研究によって、直観でしていた部分が少し説明できるようになるというのはあるのかなと思います」と話しました。

生物と相互作用(インタラクション)する人工知能の研究

 

正しいか否かの判断は人間がする

人工知能やAIといった情報関連の言葉は、最近では日常的に聞かれるようになり、また、2022年4月からは「情報Ⅰ」が高校の必履修科目になるなど、少しずつポピュラーになりつつある中で、今の学生は情報の扱いに慣れていると川嶋教授はいいます。「私が子どもの頃は、『情報』といえばせいぜいゲームでしたが、今の学生は調べるのが上手で、すぐにきちっと検索して出てきた結果をどんどん自分に取り込んで応用に使っていけるのはすごいなと思います」と話す一方、課題もあると指摘します。「例えば、文章を書かせたり英語を訳してもらう、あるいは、英語に訳してもらうなどで生成AIを日常的に私も使っていますが、特に日本語から英語に訳したときに、意訳どころか全く真逆の意味のものになっているときがありますし、同じ文章が2回繰り返されているときもあります。それを学生が『こう訳されたので』と言ってそのまま提出してきますが、気をつけないといけないなと思っています。英語から日本語は良いのですが、日本語から英語になったときに出てきた英文が合っているのかは読んでみないと分からない。AIが出してきた英語が正しいか否かの判断は人間がしないといけないと思いますし、そこの判断ができる英語力はこれからも重要だと思います。生成AIは、パートナーというか、いろいろ助けてくれますが、『全てを信じたらいけない』ということは大事だと思いますし、学生にも伝えておかないといけないのかなというところです」と話しました。

川嶋研究室での研究会の様子

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