2月18日(日)、神戸商科キャンパスにおいて、本学及びJDSSP(Japan Data Science in Schools Project)高等学校データサイエンス教育研究会主催「一般社団法人人工知能学会・一般社団法人日本統計学会公式 全国中高生AI・DS探究コンペティション2023」の最終審査会及び表彰式が開催されました。
中高生を対象としたAI・DSに関する課題研究・探究活動の発表会
昨今、日本における数理・データサイエンス・AIに関する教育が盛んになってきており、AI時代に対応した人材育成や女性活躍推進が求められています。また、中学校・高等学校においては探究活動や課題研究が活発化していますが、研究成果を発表する場が限られているという現状があることや、一般社団法人人工知能学会においても「学会として中高生の育成に力を入れていきたい」との思いをお持ちであり、コンペティションの開催にご協力いただけることになったことから、このたび高校教員同士でデータサイエンスの指導方法について研究等を行っているJDSSPと本学との共催で、AI・数理・データサイエンスに関する課題研究・探究活動の発表会を開催することになりました。
コンペティションの概要
コンペティションに係る作品の募集は昨年10月から開始され、AIの学問分野では、データサイエンス、数理科学、確率・統計、生物学、哲学、画像・音声・言語メディア処理、ロボット、機械学習など様々な分野の作品や、AIフロンティアを推し進める基礎研究や周辺分野で開発されたAI技術を活用した探究活動の成果の作品などを幅広く募集したところ、全国各地の中高生から18件の応募がありました。
募集締切後に学識経験者による書類審査と動画審査からなる一次審査が行われ、最終審査に進出する参加者が決定されました。
最終審査会では、5組の参加者が本学の神戸商科キャンパスを会場とした対面もしくはオンラインでプレゼンテーションを行い、学識経験者や関係者による厳正な審査が行われました。なお、コンペティションにおいて、社会情報科学部・情報科学研究科の笹嶋宗彦教授が実行委員長及び審査委員長を務めました。
最終審査に進出した5組のポスター作品
最終審査会
最終審査会当日は、最終審査に進出した5組のうち、3組の高校生が神戸商科キャンパス内の会場を訪れ、2組の高校生がオンラインで参加されました。
はじめに、雲雀丘学園中学校・高等学校 数学科・情報科教諭でコンペティションの運営を担当した林宏樹氏から大会の概要について紹介がありました。
続いて、一般社団法人人工知能学会からの挨拶として名古屋大学の東中竜一郎教授が、また、一般社団法人日本統計学会からの挨拶として実践女子大学の竹内光悦教授が挨拶されました。
東中教授は「私も一次審査をさせていただいたが、非常に素晴らしいアイデアが多かった。AIは今後社会との接点がより多くなり、アイデアを出すとともに、実践というものも重要になってくる。このコンペティションは、そういった内容が多く含まれたコンペティションだと感じたので、人工知能学会としても、今後も応援していきたいと考えている」とし、「今日のみなさんの発表を大変楽しみにしているので頑張って欲しい」と挨拶されました。
竹内教授は「一次審査では、いろいろなアイデアや工夫を見てきたので、今日の最終審査では『それらを伝える』というところを見ていきたいと思っている。発表を楽しみにしているので、今日は頑張って欲しいと思う」と挨拶されました。
最終審査は、制限時間10分以内のプレゼンテーションと質疑応答により審査が行われました。質疑応答では、審査員から発表者に向けて、意見や質問が活発になされ、活気のあるディスカッションが繰り広げられました。
5組のプレゼンテーション後には参加者同士の交流の機会が設けられ、情報科学研究棟のラーニングコモンズにおいて、最終審査に残った5組の参加者が作成したポスター作品が展示されました。参加者は、他の参加者のポスターに見入ったり、また、そのポスターを作成した参加者に質問をしたり、感想を述べあうなどしていました。
表彰式
最終審査後、審査員による審査が行われ、各賞の受賞者が決定しました。表彰式では各賞の授与の後、受賞者によるコメントと各賞のプレゼンターを務めた審査員から受賞者に向けての講評及びコメントがありました。
受賞者からは、「今回のコンペティションで審査員の先生方から質問やコメント、いろいろな指摘もいただいたので、今後さらに発展させ、研究を進めていきたいと思う」「探究を学外で発表する機会があまりなく、学内で発表してもそこから先につながることがなかったが、AIとデータサイエンスの専門家である先生方から次につながる質問やコメントをいただけて、大変嬉しく思っている。今日いただいた質問やコメントに基づいて、これからも探究を進めていきたい」といったコメントが聞かれました。
また、小・中学校における教育に着眼点を置いて、読字障害のある方にとって読みやすいとされるフォント「UDデジタル教科書体」が本当に読みやすいのかについて検証する研究を行い、AI・DS最優秀賞を受賞した愛媛県立松山南高等学校のみなさんは、「今回、エクセルやパワーポイントを使うのは3人とも初めてで不安な部分もあったが、自分たちで挑戦できたことをとても嬉しく思う。今回のテーマは学習面を取り上げている。学習面では、障害の有無に関係なく個人差があるので、とても難しいテーマではあったが、今回審査員の方から質問をいただいたように、多くの教科書で教科書筆記体が使われている教育現場において、どうすればUDデジタル教科書体の使用がより進められるようになるのかを、さらに考えていけたら良いなと思う」と話しました。
※読字障害(ディスレクシア)…学習障害の一種。文字を読むことが困難な障害で、書くことが困難な書字障害も呈していることが多いとされる。
AI・DS最優秀賞を受賞した愛媛県立松山南高等学校のみなさん
審査員から各受賞者に向けては、「社会的な問題を研究テーマにし、そこに切り込んできたところに高く評価した」「堂々とした発表で、とても落ち着いて分かりやすく説明しているように感じた。いろいろな先行研究がある中で、高校生の視点で『理解でき、かつ分かりやすく新しい信頼性を測る指標』を自分なりに考えたというところや、発表の中で、当初は生成AIにコードを作成させたが適切なものができなかったので、自分で勉強してコードを作成したという話があったが、生成AIが作成してできたものをそのまま信用するのではないという点でもとても評価した」と評価した部分に関するコメントや、「言葉というものは、どのように使うか、どのように相手に伝えるのかというところがとても大事であるので、言葉の意味や定義を辞書などで自分なりに調べ、ニュアンスの違いなども知った上で使うようにした方が良いのではないか。これから研究を進めていく上でもこの過程を大事にして欲しい」「プレゼンテーションにおいて、難しい内容の話は相手に伝えるのも難しくなってくるので、そういうときにはゆっくり時間を置いて、どうすれば相手に伝わるのかということを意識すると、今後非常に良くなってくるのではないか」といったアドバイスが送られました。
ぜひ発表しに来ていただきたい
最後に、本コンペティションの実行委員長及び審査委員長を務めた笹嶋教授が閉会の挨拶をしました。笹嶋教授は「まず、最終選考に残られたすべてのチームのみなさんに『本当におめでとうございます』と言いたい。今回18件の応募があり、全体的にレベルが高かった。その中でわれわれは各自で評価を行った。審査員のバックグラウンドは異なっており、統計やAI、AIの分野の中でも言語の処理であったり、インターフェースであったりと、多方面の専門家の意見を総合して選ばれた5件であるので、受賞者のみなさんの作品は選ばれた作品中の作品であり、誇りに思っていただきたいと思う」とし、「今後お願いしたいこととして、中高生のみなさんの探究活動や課題活動の成果を発表する場が少ないということで、われわれとしては、今後も中高生のみなさんに発表の機会や学会に参画する機会の提供などをしていきたいと考えているので、ぜひみなさんの研究成果や探究の成果を発表しに来て欲しい。私たちは大変歓迎する。今日受賞されたみなさんも、今後もブラッシュアップしていくということがあれば、またチャレンジしていただきたいなと思う」と挨拶しました。
結果
AI・DS最優秀賞
「多様化する社会に対応するために」
西原 志歩・萩野 紗弥・山内 帆夏(愛媛県立松山南高等学校2年生)
AI・DS優秀賞
「そのWikipedia記事,信頼できそうですか?」
橋本 昂賢(長野県松本県ケ丘高等学校2年生)
AI・DS優秀賞
「ボカロ曲の数値化による好む曲の選別モデル構築と評価」
吉田 杏栞(雲雀丘学園高等学校2年生)
人工知能学会特別賞
「ChatGPTを活用した悪意のあるコメント抽出AI開発の可能性」
平山 結愛(雲雀丘学園高等学校2年生)
日本統計学会特別賞
「関西弁を全国へ」
平松 佑理・後藤 菜々子・山本 佳奈・渡辺 陽花(兵庫県立姫路西高等学校2年生)
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