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「高校と大学の垣根を越えて、データサイエンス系教育や人材育成の未来を考える」大阪成蹊大学×滋賀大学×兵庫県立大学 3大学データサイエンスシンポジウム2024開催

8月5日(月)、大阪成蹊大学駅前キャンパス(大阪市東淀川区)において、大阪成蹊大学・滋賀大学・本学の共催で「3大学データサイエンスシンポジウム2024」が開催され、当日は高校生とそのご家族をはじめ、大学・高校教員の方、企業・自治体の方など約120名の方が参加されました。

 

本シンポジウムは、昨年に引き続きデータサイエンス系学部を有する大阪成蹊大学と滋賀大学と本学の3大学が集い、データサイエンス系学部の教育・人材育成に関する情報交換や課題の把握と共有、課題解決に向けて検討する機会として開催されたものです。
2回目となる今回は、高校と大学の垣根を越え、データサイエンス系教育や人材育成の未来を考えることを目的に、3大学の学部長による学部紹介や、3大学の教員・学生による研究発表をはじめ、今年4月に文部科学省から「令和6年度高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」の採択校が発表されたことや、来年1月に実施される令和7年度大学入学共通テストから「情報」科目が新設され、各高校がデジタル等成長分野を支える人材育成の抜本的強化(カリキュラムや環境整備)を図っていることから、現職の高校教員によるパネルディスカッションが行われました。

 

はじめに、大阪成蹊大学の中村佳正学長による開会挨拶がありました。

大阪成蹊大学 中村佳正学長

 

データサイエンス系学部の紹介

次に3大学の学部長から、学部の概要や学びの特徴、特色のある取組など、自校のデータサイエンス系学部について紹介がありました。

 

本学からは、社会情報科学部の藤江哲也学部長が登壇し「兵庫県立大学社会情報科学部のご紹介」と題して講演しました。講演の中で藤江学部長は「本学部は『情報科学を軸に、高度化・複雑化する社会や組織が抱える課題の解決を目指す』というコンセプトのもと、データサイエンスを武器に『世の中を良くしたい、社会に貢献したい』という思いを持つ学生を育てたいと考えている」とし、「データサイエンスを社会の課題解決に応用する力を身につけるとともに、データサイエンスの限界も知ること。また、社会を見る目を養うために1年次からPBL演習を実施している」と紹介しました。
併せて、今後の展開について取り上げ、「1つは、本学部ではアルゴリズムなどの数理情報を専門とした教員が充実しており、データ分析と合わせて数理情報も柱とするような展開をしていきたいと考えている。その他、情報科学研究科との連携強化や数学・プログラミング・確率統計などの基礎科目の充実、産学連携や共同研究、高大連携を推進することにより、さらに本学部の特徴を出していき、兵庫県、ひいては我が国の先端IT人材の育成を目指している」と述べました。

兵庫県立大学社会情報科学部 藤江哲也学部長

 

滋賀大学データサイエンス学部 市川治学部長

 

大阪成蹊大学データサイエンス学部 吉川正俊学部長

 

学生による研究発表

続いて3大学の学生による研究発表が行われ、本学からは社会情報科学部の笹嶋宗彦教授の研究室に所属している社会情報科学部4年生の後藤快斗さんが登壇しました。「社会課題解決のためのデータ活用~地方自治体の検診データを用いた取り組み~」と題して、兵庫県加古郡播磨町で行われている乳幼児健診のデータ分析に基づいて保健政策に対して提案を行うという自身の研究内容を発表しました。発表の最後に後藤さんは会場内の高校生に向けて「社会課題を発見して解決するということは難しいが、とてもやりがいがある。データサイエンスに興味を持ってくれる高校生が1人でも増えれば良いなと思っている」とメッセージを送りました。

兵庫県立大学社会情報科学部4年 後藤快斗さん

発表後には、後藤さんの発表に対して滋賀大学データサイエンス学部の椎名洋教授からコメントがありました。椎名教授からは「楽しみながらお話を聞かせていただいた。後藤さんの発表から自身が一番感じたことは、データサイエンティストは、どういうところに行ってもチームの一員として働くことが多い。1人ですべての分野のことを背負うのは不可能で、そうしたときに何が一番大事かというと、分析やデータの扱いという知識的なことを学ぶことはもちろんであるが、『チームの中の一員として自分の分析結果をいかに表現していくか』というコミュニケーション能力が非常に求められていると思う。今日の話でとても素晴らしかったのは、『どういう課題があり、どういう手法を使い、どういう分析をしたか』を非常に分かりやすく解説していた点で、そういう意味ではプレゼンとしてお手本となる発表だったと思う」とのコメントをいただきました。

 

大阪成蹊大学データサイエンス学部2年 吉岡大宙さん「革新的な3Dスキャニング技術とその多様なアプリケーション」

 

大阪成蹊大学データサイエンス学部2年 大南弘樹さん「機械学習を用いたダイヤフラム設計の分析」

 

滋賀大学大学院データサイエンス研究科博士前期課程2年 戸簾隼人さん「戸惑いから挑戦へ:データサイエンスで見える新たな世界」

 

大阪成蹊大学の吉岡さんと大南さんの発表に対してコメントする本学の笹嶋教授

 

若手教員による研究発表

続いて行われた若手教員のよる研究発表には、本学からは社会情報科学部の照山順一准教授が登壇し、「ソーティングアルゴリズムをとことん考える」と題して、自身の研究内容について発表しました。照山准教授はアルゴリズムについて「何かをやろうとしていて、それをどう処理するのか。どういうふうにするのかという手順のこと」と説明し、「データサイエンスをする上で情報機器が、また、情報科学の上で数理情報が欠かせない。それらの基盤にあるものがアルゴリズムで、アルゴリズムをよく知り、使えるということがとても大切である」と説明しました。また、照山准教授が研究しているソーティングアルゴリズムについて、「ソーティングとは整列のことで、簡単に言えば『データの並び替え』のことである。データサイエンスには絶対に必要なもので、とても身近な問題である」と説明し、「良いソーティングアルゴリズムというのは、比較の回数が少ないものである」と紹介しました。

兵庫県立大学社会情報科学部 照山順一准教授

 

滋賀大学データサイエンス学部 奥村太一准教授「教育データサイエンスへの招待」

 

大阪成蹊大学データサイエンス学部 新庄雅斗講師「京丹後市海水浴場における水深データの可視化と類似度評価」

 

パネルディスカッション「高校情報教育の現在地」

最後に行われたパネルディスカッションでは笹嶋教授の司会のもと、滋賀県・大阪府・兵庫県に位置する高校で情報教育を担当されている教員の方々がパネリストとして登壇され、「高校情報教育の現在地」をテーマに討論が行われました。
パネリストによる各高校における情報教育の取組と課題に関する講演のあと、情報教育の重要性やリテラシー教育に関すること、高校と大学の連携などについてフリーディスカッションが行われ、来場者の方からも質問が寄せられるなど活発な議論が交わされました。

パネリストとして登壇した、本学の情報科学研究科の大学院生でもある雲雀丘学園中学校・高等学校情報科・数学科・探究科の林宏樹教諭は、勤務先の高校で担当しているデータサイエンス探究ゼミにおける自身の取組を取り上げ、個々の生徒の興味・関心に応じた題材を使って個別にデータサイエンスの指導をしていることや、学会等が主体となって行われているデータサイエンス関連のコンテストで生徒の作品が受賞するなどの成果を挙げていることなどを紹介しました。併せて、自身も大学教員の指導を仰ぎながら高校の生徒に指導していると述べ、「高校教員自身も自分たちだけでしようとするのではなく、どれだけ外部の方と一緒に活動できるかが鍵になってきていると感じている」と指摘しました。また情報Ⅰの授業ではデータ・分析・結論の部分に着目した授業に取り組んでいることや、今後に向けての課題として、林教諭自身も含め高校教員が情報Ⅱの学びを深めることのできる取組をしていることを紹介しました。

雲雀丘学園中学校・高等学校 林宏樹教諭

 

滋賀県立彦根東高等学校 馬場 義之信教諭

 

大阪府立摂津高等学校 長瀨 勇輝教諭

 

コーディネーターを務めた笹嶋教授は、フリーディスカッションの中で来場者の方から質問のあったデータの取り扱い方やデータの前処理について本学社会情報科学部での教育を例に挙げ、「データの前処理やデータリテラシーは、大事なプログラムであると考えており、本学部ではプログラミングⅢという科目でデータの前処理に重点を置いた教育をしている」と紹介し、「学生には、将来データサイエンティストとしてデータを活用していく際に『最初の段階から最終的にどう使われるのかを意識したデータのフレームを設計しないといけない』という意識を持ってもらうよう指導しているが、私たちがきちんと教育できているかというのは、学生たちが卒業して社会に出てから出てくるものであるので、企業の方々からはぜひ『こういうところができていない』などのご意見をお寄せいただき、またそうした課題に対して、われわれが対応させていただくというようなサイクルをつくっていければと思っている」と述べました。

コーディネーターを務めた兵庫県立大学社会情報科学部 笹嶋宗彦教授

 

最後に滋賀大学データサイエンス学部の椎名教授から閉会挨拶があり、盛会のうちに終了しました。

滋賀大学データサイエンス学部 椎名洋教授

 

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