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「X線分析とものづくり」高度産業科学技術研究所 山川 進二助教

本学ではラジオ関西との共同企画で、毎月1回本学の教員がラジオ関西番組に出演して、先進的・特徴的な活動をパーソナリティと対談形式で紹介しています。

 

9月15日(日)放送の「谷五郎の笑って暮らそう こちら兵庫県立大学です」に登場するのは、高度産業科学技術研究所の山川 進二(やまかわ しんじ)助教です。

 

今回のテーマは、「X線分析とものづくり」
山川助教の専門は、「有機化学」です。

 

国内の大学が有する放射光施設では最大級-ニュースバル放射光施設

山川助教は、兵庫県赤穂郡上郡町光都に位置する播磨科学公園都市内にあるニュースバル(NewSUBARU)放射光施設(以下ニュースバル)で教育・研究活動をしています。ニュースバルは、理化学研究所が運営する世界最高性能の大型放射光施設「SPring-8」の技術的支援と協力関係のもとに同敷地内に建設されたもので、本学の附置研究所である高度産業科学技術研究所(LASTI:Laboratory of Advanced Science and Technology for Industry)が運営しています。国内の大学が有する放射光施設としては最大規模で、工学部機械・材料工学科材料工学コースの学生は、3年次にニュースバルで学生実験を実施し、放射光科学の基礎知識を身につけて卒業することができます。また、大学院では工学研究科材料・放射光工学専攻に属し、先端放射光技術を基とした創造的開発・研究能力を有する人材を育成しています。

ニュースバル放射光施設の外観

ニュースバル放射光施設の内観

 

それぞれの得意分野を活かす

SPring-8が硬X線の超高輝度放射光を発生させることを特徴とするのに対し、ニュースバルは極端紫外線から軟X線領域の放射光を発生させます。SPring-8とニュースバルの違いについて山川助教は、「SPring-8もニュースバルもX線を発生させるのですが、X線というとレントゲンがありますよね。どちらもレントゲンのように物の中を見ることができるので、『材料などの中身を見て分析する』という研究が行われています。ただ、『何でも見える』わけではありません。SPring-8は、石や鉄など、硬くて、ナノレベルの物質の内部を透過して構造を見ることが得意で、生命科学や環境科学、地球科学、考古学、物質科学など幅広い分野の研究が行われています。一方のニュースバルは、プラスチックの材料となる炭素や酸素をはじめとした軽元素を含む物質の構造を見ることが得意で、材料分析をはじめ、二次元材料開発や半導体微細加工技術開発、ガンマ線応用など、産業界との共同研究開発や軟X線領域の放射光を用いた基礎研究を行っています」と紹介しました。
※軽元素…原子量が小さい元素のこと。

ニュースバルで行っている研究内容(パンフレットより)

 

プラスチックを「つくる側」から「分析する側」へ

山川助教は現在、ニュースバルで物質の構造の分析に関する研究や物理的な分析装置の開発を主に行っています。特に、半導体チップの回路形成用の感光性プラスチック材料の開発に力を入れています。「スマートフォンやパソコンの頭脳にあたる半導体チップには、無数の回路が形成されています。この回路パターンを作るために、特殊な光をあてると化学変化する感光性のプラスチックが使われています。このプラスチックの性能が良くなると、スマートフォンやパソコンの性能が良くなるだけでなく、値段を安くすることもできるので、より良い材料を世に出そうと、新しい感光性プラスチックを開発しては、分析装置で構造等を分析して評価するという研究をしています」と話す山川助教ですが、以前は「プラスチックをつくる」研究をしていたといいます。「プラスチックというと、例えば今でしたら、ペットボトルをリサイクル加工して化学繊維に再生されたものが服の生地として使われるなど、いろいろなものがあります。しかし、つくってみたものの『今のものだと使いづらい』『もっと透明なものが良い』『もっと軽いものが良い』など、様々な要望もあるので、『こういう材料をつくったら、こういうところに使えますよ』というような、プラスチックの合成に関する研究をしていました」と説明しました。
山川助教が現在の研究に取り組み始めたのは、本研究所に着任して間もない頃からです。「元々兵庫県立大学に来る前に所属していたところでは『物をつくる』研究をしていましたが、高度産業科学技術研究所の教員公募の際に『分析もしつつ、分析の装置もつくる』というようなことが書類に書かれていて、分析の装置をつくることについては『素人にはそこまでやらせないだろう』と思っていましたが、着任早々に『じゃあ、装置の図面を描こうか』と言われて驚きました」と振り返ります。

実験装置構築のクレーン作業

 

半導体分野の研究には化学と物理の両方が必要

また山川助教は、「以前していた研究と現在している研究には、正直そこまでつながりがあるとは思っていませんでした」と話します。「高度産業科学技術研究所は、研究所の名称に『産業』という言葉が入っているとおり、産業支援という形で、企業と共同研究することが多い研究所です。企業の方々の、『これをこうしたいけれど、どうしたら良いのか』『これの何々が分からないから、ちょっと見てもらえないか』というような困りごとを研究することが多く、特に私が所属している本研究所 極端紫外線リソグラフィー研究開発センターでは、世間で話題になっている半導体関連の研究が多いです。取り組むべき研究や課題が多い分野である一方で、研究者が少ないという課題があります」と山川助教は指摘します。

実験操作中

 

「結構難しいことですが、半導体分野の研究者を増やそうとしています。半導体の研究分野では、化学と物理の両方の知識が必要です。私もそうでしたが、『最初に化学を学び、研究していた側』からすると、物理の話は正直分かりません。物質の構造の分析に関する研究については化学的な知識も必要ですが、装置をつくることに関しては物理の話になってきます。教員として、学生に向けて指導している『化学』『物理』というものは別物の科目になりますが、研究者として研究を進めていくには『化学だけではなく、物理のことも分かっていないと研究できない』という側面がある一方で、『化学は化学』『物理は物理』と線引きをされている部分があります。でも、半導体の研究分野では、両方がないと全然太刀打ちできないので、両方を理解できている人材を育成しないといけないという話になっています」と山川助教は言葉に力を込めて話します。

 

『今の自分』だから、理解できる

『化学を学び、研究していた側』だった山川助教ですが、現在は自身で物理を学ぶなど、日々研究に必要な知識を習得しながら研究開発に取り組んでいます。山川助教は「私も正直、高校時代は物理が苦手だったので化学を選択しました。ですので今、すごく大変ですが、頑張るしかありません。でも、当時の高校生のときだったら全然分からなかったことも、今の自分だと、実物を見て『これが、ここにこういうふうに関わっていたんだ』と理解することができていますし、『高校時代の授業でも、そういうことを話して欲しかったな』と思いながら物理に向き合っています。本研究所では、幅広く、様々なやりがいのある仕事をさせていただいています」と生き生きと語りました。

関連リンク

教員出演 ラジオ音源 ← 放送内容はこちらからお聴きいただけます
兵庫県立大学高度産業科学技術研究所 EUVリソグラフィー研究開発センター

 

山川助教と同じ高度産業科学技術研究所極端紫外線リソグラフィー研究開発センターに所属している渡邊健夫特任教授(番組出演当時は教授)が2024年3月にラジオ関西番組に出演し、半導体微細加工技術について取り上げた際の記事を、下記のリンク先からご覧になれます。
ケンダイツウシン「半導体微細加工技術が切り拓く世界」高度産業科学技術研究所 渡邊 健夫教授

 

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