本学と兵庫医科大学は、ともに兵庫県内で教育研究を行う高等教育機関として、それぞれ地域の課題解決に貢献するため、人材育成や学術研究に精力的に取り組んできました。このたび、これまでの医工学分野での連携をさらに発展させるとともに包括的な連携協力を推進するため協定を締結することとなり、10月23日（木）、本学神戸商科キャンパスにおいて連携協定締結式を行いました。

（左）兵庫医科大学 鈴木敬一郎学長 （右）兵庫県立大学 髙坂誠学長

兵庫医科大学は、1972年に医科単科大学として開学し、2007年に「チーム医療」をコンセプトに掲げ、薬学部・看護学部・リハビリテーション学部を要する兵庫医療大学を設立されました。同一法人2大学の体制で互いに連携しながら発展を遂げられ、開学50年の節目となる2022年に統合され、医学部・薬学部・看護学部・リハビリテーション学部の4学部を擁する医系総合大学として新たな歩みを進められています。さらに、2026年には新病院棟を開院されることとなっており、学生がより実践的に臨床を学ぶための機能を強化し、質の高い医療人材の育成を通じて、今後の医療のさらなる発展に貢献していくこととされています。
本学の附置研究所である兵庫県立大学先端医療工学研究所は、2022年4月に医療工学の研究開発や医産学連携を行う拠点として兵庫県立はりま姫路総合医療センター内に設置した研究所で、渡り廊下1つで医療機関と直結した環境であることの利点を活かし、臨床現場と連動した研究に力を入れています。また、本学が有する自然・人文・社会科学の知の蓄積を活用して、デジタルヘルスケアなどの画期的な医療ヘルスケア機器、プレシジョン栄養学、看護介護工学の各分野における臨床現場の実情に即した課題の解決に向けて、多様な取組を展開しています。
※プレシジョン栄養学…遺伝子や生活習慣、腸内環境など各個人のそのときどきの状態に応じて、最適な栄養を提案するもの

工学研究科教授・先端医療工学研究所 小橋昌司所長

両大学は、これまでにも兵庫医科大学の臨床現場における医療・研究ニーズを起点に、本学が強みとする画像解析やAI分析技術を活用して、入院患者のケアや効果的なリハビリ活動のための研究等を行うなど、かねてから交流を重ねてきました。このたび、連携協定を締結することにより、両大学の連携をさらに強化し、医療・産業・アカデミア、そして地域社会を結ぶ「医療工学エコシステム」の構築を目指し、兵庫県民のみなさまの健康と安心の向上に寄与する新たな価値創出に取り組むこととしています。

締結式では、はじめに本学の髙坂誠学長が挨拶し、「兵庫医科大学のみなさまとより一層連携を深め、互いに協力しながら取組を進めていけることをうれしく思う」と述べました。また、兵庫医科大学の鈴木敬一郎学長は「兵庫県という地に根を下ろし、地域貢献をしながら世界に発信するようなアウトプットを出していきたい。そういう意味で、ぜひ兵庫県立大学の幅広い知識、お持ちのバックグラウンドを共有いただいて、新しいものを創造していけたらと思っている」と挨拶されました。

協定書への署名後には意見交換が行われ、それに先んじて小橋所長が「両大学の歩みと共創に向けて」と題して話題提供を行い、約20年間における両大学の連携の歩み、先端医療工学研究所の取組、両大学の共創による新たな展開について述べました。その中で小橋所長は、本研究所では医工連携を進めるにあたり、医療側からニーズが来るのを待つのではなく、研究者側が臨床現場の中に入ってニーズを見つけることにより、別の視点での研究が可能になると考えていることや、研究所の強みとして、研究を進めるために必要なセンサーや測定機器を研究所で開発し、それらを用いてデータを取り、解析を行うことが可能であること、また、研究所には工学をはじめ、理学、看護学、環境人間学、情報科学、社会科学などのさまざまな分野の研究者が所属していることから、各プロジェクトに合わせて最適なチームをつくることが可能であることなどを紹介しました。その上で、「医産学連携をどのように推進していくのかについては、個人で研究を行うとどうしても規模が小さくなり、『研究で終わってしまう』ことが多い。いかに産業と結びついて社会実装を実現するには、さまざまな人が関わり、チームで研究を行うことが大切であるとの考えから、『医療工学コンソーシアム』を組織するなど、体制づくりを行っている」などと述べました。

今後、両大学は、教育研究活動全般の交流及び相互連携の推進、相互の教育研究の一層の進展と地域社会への貢献、国際社会の発展に資する取組を積極的に進め、より質の高い教育の提供や学術研究のさらなる充実、地域及び国内外の課題解決に向けた社会貢献に取り組むこととしています。

・先端医療工学研究所