このたび、情報科学研究科情報セキュリティ科学コースの五十部孝典教授が、文部科学省の「令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞」を受賞しました。
「科学技術分野の文部科学大臣表彰」は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者にその功績を称えて授与されるもので、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術の水準の向上に寄与することを目的に、科学技術賞、若手科学賞、創意工夫功労者賞、研究支援賞が設けられています。
五十部教授は、「新世代暗号技術の開発に関する先駆的な研究」による業績が認められ、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手科学者に贈られる若手科学者賞を受賞しました。
五十部教授は、情報セキュリティ、暗号を専門とし、暗号の設計や安全性評価、ソフトウェア保護技術の開発、実際のシステムに対する安全性評価に関する研究活動を行っています。これまでの研究成果には、2011年に五十部教授が新しい暗号解析手法を考案し、ロシア標準暗号GOSTの解読に世界で初めて成功し、GOSTが標準暗号から外れることになったことや、2017年にメッセージアプリケーションLINE®のエンドツーエンド暗号化「Letter Sealing」(End-to-End Encryption,E2EE)の問題点を発見、問題点に対する対策案とともにLINE株式会社に報告し、現在は、より高い安全性を有する暗号化方式が開発され、改善に至っていることなどが挙げられます。最近では、ZoomやWebexのエンドツーエンド暗号化の安全性解析や、IoT向け超軽量暗号やBeyond 5G向けの新しい暗号技術の開発を企業や海外の大学とともに進めています。
今回の受賞を受けて五十部教授は、「このたびは、令和5年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞させていただき、大変光栄に思います。本賞にご推薦いただいた加藤先生、田中先生には心よりお礼申し上げます。これまでの研究活動の成果が認められたことに大きな喜びを感じるとともに、このような名誉ある賞を受けられたのも、大学での日々の研究活動を支えてくださるすべての皆様のおかげと深く感じております。特に、これまで一緒に研究を進めてきた研究室のメンバーや共同研究者の皆様の協力なしでは、このような研究成果をあげることはできませんでした。改めて感謝申し上げます」とコメントしました。
また、今後の抱負については、「『新世代暗号技術の開発に関する先駆的な研究』という研究題目で受賞させていただきましたが、暗号技術は、今後のBeyond5Gの世界において、情報セキュリティやプライバシー保護の基盤技術としてますます重要となる学術領域です。まだまだ解くべき未解決問題が数多くありますので、この機会を一つの出発点と捉え、今後もより一層力を入れて研究活動を推進し、安心安全な社会の実現に貢献したいと思います」と話しています。
・兵庫県立大学大学院情報科学研究科 暗号・情報セキュリティ研究チーム
五十部教授に関連する記事を下記のリンク先からご覧になれます。
2021年9月に超高速大容量通信を実現するBeyond5G/6G通信に対応できる処理速度をもった暗号アルゴリズム「Rocca」を開発したことを発表した際の記事
・ケンダイツウシン「解読に20兆年以上!? の暗号アルゴリズム開発」
2021年6月にラジオ関西番組「PUSH! こちら兵庫県立大学です!」に「あなたの情報を守る暗号技術と暗号解読」をテーマに出演した際の記事
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